潜入任務
世界が眠る時――
沈黙の者たちが動き出す。
だが、気配を消して歩む者すべてが…
隣を歩く者を信じているとは限らない。
空気は古びた金属と湿気の匂い。
地面は枯れ枝でかすかに鳴る。
カイレンは鼻で呼吸しながら、神経を静めていた。
目の前には――帝国のキャラバン。
五台の荷車。
六人の哨戒兵。
二人の魔導師。
「今度こそ、失敗は許されない。」
彼らは森の縁を、間隔を空けて前進していく。
リナはすでにカラスを放った。
カイエンは前方で哨戒兵の一人を静かに排除。
メイカは――まだ一言も発していない。
張られた糸は揺れない。完璧。
メイカは茂みに偽装した分身体を隠しながら、本物の「彼女」が帝国兵のように歩かせていた。
「問題なし。違和感なし。だけど…」
彼女は、横目でカイレンをちらりと見る。
彼の動きは他の者たちのような無音ではない。
その足音には、まだ不安があった。
「ハルトは彼を信じている。でも、なぜ?
魔力も才能もない人間が…なぜここに?」
言葉はなく、
彼女は次の糸を最後尾の荷車へ投げる。
「私は自分の役目を果たすだけ。干渉はしない。」
カイレンが手で合図を送る。
指定された地点――三番目の荷車近くの茂みへと進む。
だが――
パキッ!
枯れ枝を踏む音。
哨戒兵:
「誰だっ!?」
――緊急事態。
メイカは即座に指を鳴らす。
一頭のシカの幻影が、反対側の茂みから飛び出して駆けていく。
兵士たちはそちらを見て笑い出す。
哨戒兵②:
「クソ…あの鹿め。毎回ビビらせやがって。」
カイレン(心の声):
「彼女が…助けた?」
彼は指定位置へ到達し、
荷車のシートを外す。
メイカは新たな幻で、彼の姿をさらに隠す。
言葉はなかった。
だが、確かに連携が生まれた。
“糸”と“意志”。
荷車の中にあったのは:
– ゴーレムの核の欠片
– 禁呪の刻まれた機械の設計図
– そして、破れた手紙に記された――帝国レビウムの都市名
カイレン(小声で):
「これは…ただの密輸じゃない。
全面戦争の準備だ。」
その時、後方で小さな爆発音。
ヴェルク“灰”の仕掛けた罠が作動した。
今が、撤退の時。
だが、帝国の魔導師が感知魔法を発動。
魔導師:
「侵入者! 三番荷車にいるぞ!!」
カイレンとメイカが目を合わせる。
もう、幻術に頼る時間はない。
メイカ:
「逃げて!」
カイレン(歯を食いしばり):
「君が先だ!」
メイカ:
「ヒーロー気取りはやめて!」
だがカイレンは、ヴェルクの煙爆を放り投げ――
文書を手に、森の中へ飛び込んだ。
メイカもすぐに後を追う。
その姿は、風のように…
だが確かに、誰かを守ろうとする意志が走っていた。
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