名前の代償
闇を歩む者が、すべて被害者とは限らない。
光から来た者もいる──
自分だけの輝きを、見つけるために。
モモチは、残った志願者たちを呼び集めた。
モモチ:
──これが第三の試練だ。
速さも、静けさも意味を持たぬ。
今日は、それぞれが「象徴」を差し出す日。
かつての自分を表す何かを。
そしてそれを通して、
新たな自分になる覚悟を示せ。
過去に縛られる者に──
“消える”資格はない。
カイレン・ダル、16歳。
農民の息子。魔力なし。訓練歴もなし。
だが、その顔には決意があり、手には無数の傷があった。
カイレン(周囲の好奇の視線を受けながら):
──俺は城から来たわけじゃない。
帝国から逃げてきたわけでもない。
戦い方は知らない…でも、学び方なら知ってる。
俺が持ってるのは──これだけだ。
差し出したのは、錆びついた半分に折れた鍬だった。
カイレン:
──7歳の時から、これで働いてた。
手を切って、指を折った。
でもそれが、俺を強くしてくれた。憎しみでじゃない。
“渇望”で。
俺は…もっと先へ行きたいんだ。
リリアンは視線を伏せ、
ロシャは拳を握りしめ、
イリスは後方で目を細める。
イリス(小さく):
──彼は償いを求めてるわけでも、
復讐を望んでるわけでもない。
ただ──成長したいだけ。
モモチ(鍬を丁寧に手に取る):
──かつての世界を象徴する、唯一のものを手放したな。
忘れるためではなく、
新たに築くために。
──認可する。
✦ カイレン・ダル──“暁の眼”の一員として、正式に認められる。
その夜、他の者たちが眠る中、カイレンはひとりで隠密の練習をしていた。
イリスは腕を組み、窓から彼の姿を見下ろしている。
イリス:
──魔力もない。技術もない。
なのに、なぜそこまで必死なの?
カイレン(動きを止めずに):
──ハルトのような偉大な男が世界を変えられるなら…
せめて俺は、その影の中を歩くに値する人間になりたいんだ。
面白かったら、ブックマークと評価 の応援をお願いします!




