八つの影 — 選ばれし者たちの静かな盤上戦
時として、敵は攻撃など必要としない。
ただ──
「お前がまだ知らないこと」を、
そっと“明かす”だけでいい。
《循環の選定者たち》──その中枢拠点。
アヤネとケンタは、二人の新たな仲間と向き合っていた。
タクティシャン:高村レイジ
幻術士:黒沢サヤカ
アヤネ(真剣な声):
「確定したわ。帝国が抱えているのは三つだけじゃない……
“八つ”の隠された植民地がある。」
ケンタ:
「ハルトは既に三つを暴いた。
でも残り五つまで知られたら──」
レイジ(目を細めて):
「……帝国の構造が崩れる。
そして、大陸は彼の足元にひれ伏すだろう。」
サヤカ(皮肉気に笑いながら):
「それって、最初に“私たち”が願った世界じゃなかった?
“より良い世界”ってやつ。」
沈黙が落ちる。
アヤネ(冷たい声で):
「問題は、誰が“その世界”を築くか。
ハルトが“彼なり”に築くなら……
他の誰にも、居場所は残らない。」
その頃──
スピラ王国。
アルビオル帝国の密約同盟国である彼らは、帝国へ緊急の伝令を送っていた。
スピラ王:
「《アマネシアの暁》は、もはや魔法だけの脅威ではない。
──“物語の脅威”だ。
民の心を奪っている。
止めねば……我らの兵すら離反する。」
貴族評議会:
「《忠誠王国連合》の設立を支持する。
そして──
《ハルト・アイザワ》の追跡と拘束を、正式に提案する。」
だがその一方で──
ハルトの元には、ある“新しい情報”が届いていた。
届けたのは、貴族を裏切った亡命者。
封印された巻物を託され、クララの手によって開かれる。
クララ(読みながら):
「……軍が動いてる。残り五つの地点へ。
私たちに発見される前に──
住民を避難させようとしてる。」
カオリ:
「……あるいは、“証拠隠滅”のために消すつもり。」
ハルト(静かに、だが確かに):
「命を……消させはしない。」
ハルトは即座に軍を五つに分ける。
配属先:
クララ + アイリス + フロスト
→ 火山遺跡に眠る山岳コロニー。
カオリ + エリーズ
→ 漁業奴隷制の下にある海上コロニー。
マグノリア + モモチ
→ 地下に潜む鉱山型コロニー。
アルセア + エルフィラ
→ 魔力採取の中心地──“水晶平原”のコロニー。
オーレリア + ハルト + デイヴィッド
→ 廃墟となった都市に隠された最後のコロニー。
そこに残されたのは……
“日本式召喚魔術”の痕跡。
カオリ:
「これって……?」
オーレリア(警戒した声で):
「……君の“世界”の魔法、でしょ?」
ハルト(眉をひそめて):
「……クラスメイトだ。」
施設の最深部で、ハルトは一つの古びた刻印を見つける。
石壁に刻まれた、たった数行の言葉。
「支配よりも、
隠れる方が正しかったのかもしれない。
──許してくれ、ハルト。
– H」
一文字のイニシャル。
かつての旧友。
裏切り者か、それとも──
“囚われている”者か。
その瞬間、ハルトの瞳に映ったのは
かつて隣にいた誰かの影。
今は別の“盤面”で、彼と向き合う準備をしている──そんな確信だった。
《スピラ王国評議会》および《アルビオル帝国》──
共同公式声明を発表:
「ハルト・アイザワは、大陸均衡の敵として指名する。
彼に協力するいかなる王国・国家も、世界的反乱の共犯と見なされる。」
その声明の末尾──
一枚の魔導鏡が光を帯び、
映し出されたのは、かつての仲間──アヤネ。
アヤネ(冷たい声で):
「これは“警告”よ。
今やめなさい、ハルト……
でなければ──
あなたの“理想”が、
“仲間たちの墓標”になるわ。」
沈黙。
ハルトは魔法地図を閉じる。
その手に、ためらいはない。
瞳は、決意に満ちていた。
ハルト:
「……ならば──」
「“嘘”ごと、
埋めてやるさ。」
真実を選んだ男と、均衡を守る者たちの対立は、
もう──引き返せない場所に達していた。




