対峙 ― アヤネとハルト、輪廻の分岐点
剣を交える前に――
視線だけで交わされる戦いがある。
そして、かつて仲間だったふたりの間に残されたのは、たったひとつの“選択”。
*
灰色の空の下、
王国の境界にある朽ちた古寺。
そこに、ハルトが現れた。
沈黙の護衛として同行したのは、カオリとオーレリア。
そしてその先に――
すでに待っていたのはアヤネ・サトウ。
乾いた泉の縁に腰掛け、
制服を軍服風に改造した姿は、少女であり、同時に司令官のようでもあった。
アヤネ:
「遅かったわね。引き返すかと思った」
ハルト(落ち着いた声で):
「来る価値があるか、考えてただけだ」
アヤネ(笑みを浮かべて):
「変わらないわね。冷たくて、礼儀正しくて――
神々にも、味方にも恐れられる存在」
アヤネ:
「ねえハルト、私たちがこの世界にいる“本当の理由”って、何だと思う?」
ハルト:
「生き延びるためだ」
アヤネ(首を横に振る):
「違うわ。壊すためよ。
この世界は腐ってる。偽りの神々、堕ちた王国…
あなたはただ、壊れたシステムを“置き換えよう”としているだけ。破壊していない」
ハルト:
「なら君たちは? 混沌を秩序の代わりに?
破壊を正義の代わりに?」
アヤネ:
「私たちが望むのは“完全な自由”よ。
王も、英雄もいらない。
あなたも――いらない」
アヤネが立ち上がり、ゆっくりと彼に歩み寄る。
その後ろで、カオリは剣の柄を握り、オーレリアは鋭く目を細める。
アヤネ:
「降伏して、ハルト。
“暁王国”を解散しなさい。
力を民に返して…私たちに委ねて」
ハルト(動かずに):
「その見返りに、何をくれる? 平和か?」
アヤネ:
「違うわ。
でも――“すぐには”滅ぼさないことは約束する」
ハルト(静かに):
「ならば…戦を選ぶ」
アヤネは笑った。
けれど、その笑みには苦さが滲んでいた。
アヤネ:
「私たちはいつだって正反対だった。
クラスでも、信念でも」
ハルト:
「皮肉だな。それで?」
アヤネ:
「皮肉なのは――
私たちどちらも、“何か”を築いたことよ。
あなたは希望の王国を。
私は炎の軍を」
彼女は足を止め、指を突きつけた。
アヤネ:
「私は二つの道を示すわ、ハルト」
第一の道:
「“輪廻”に加わって。
中から変えなさい。
再び、私たちの一員になって」
第二の道:
「そのまま進めば――今度こそ、本当の敵になる。
もう後戻りはできない」
ハルトは、すぐには答えなかった。
その時、カオリが彼のそばでささやく。
カオリ(小声で):
「これはただの戦争じゃない。
“選択”そのものが、世界へのメッセージになる。慎重に」
そして今、ハルトの決断が――
この世界の未来を分かつ。
ハルトは、曇った空をじっと見上げた。
ハルト(静かに):
「選ぶ必要なんてない。
俺はもう――
誰にも膝をつかないと決めた日から、ずっと選んでいる」
アヤネは、悲しげな目で彼を見つめる。
アヤネ:
「ならば…覚悟して。
すべてを失う未来を」
彼女の姿は、闇に溶けるように消えていった。
カオリがそっと寄り添い、
オーレリアは何も言わず、静かに見守る。
ハルトは目を閉じて、息をひとつ吐いた。
ハルト:
「これではっきりした。
奴らが狙うのは王冠じゃない。
――“象徴としての俺”だ」
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