竪琴の少年と、痛みを奏でる歌
すべての戦士が剣を持つわけではない。
音の弦を武器とする者もいる。
デイヴィッドは――兵士ではなかった。
だがその日。
折れた枝と、戦の叫びがこだまする森の中で――
彼は、戦士になった。
⋯⋯⋯⋯
地面が軋む。
敵兵のブーツが、森の土を踏みしめる音。
アルビオールの斥候たちが、木々の影をすり抜けて進む。
デイヴィッドは、倒木の裏に身を潜めていた。
息は乱れ、指は震え、目に浮かぶのは恐怖。
彼の手には、まだ未完成の魔法ハープ。
訓練は――終わっていなかった。
だが、感じ取っていた。
今、奏でなければ……誰かが、死ぬ。
デイヴィッド(低く)
「……父さん。もし聞こえてるなら……
少しだけ、勇気を貸して」
そして――
彼は弾いた。
最初の弦に触れた瞬間、空気が揺れた。
その旋律は優しく、美しく……しかし――
魔術が発動する。
《スキル発動:燃ゆる霧・レベルII》
敵士気を低下させ、音響混乱を引き起こし、味方の回避力を上昇。
敵兵たちが怯え始める。
「仲間が……見えない!」
「耳鳴りが……くそっ、これは幻覚か?!」
「音の罠だ!魔法音波だ!」
一方、黎明の兵士たちには、穏やかな力が戻ってくる。
「音楽が……落ち着かせてくれる……」
「また……動ける……!」
震える指で、デイヴィッドは演奏を続ける。
その音は、見えぬ銃弾のように戦場を貫いた。
だが――
彼の位置を特定した「エコー・ハンター」部隊が動く。
「竪琴の少年を発見。
速やかに無力化せよ」
5人の精鋭が、魔法のネットを発動。
――だがその瞬間、塔から放たれたバリアが彼を包む。
クララ(通信越しに)
「デイヴィッド、逃げて!
そのままじゃ……耐えきれない!」
しかし、彼は動かなかった。
デイヴィッド(涙を浮かべながら)
「ここで止めたら……
僕を信じてくれた皆の心が……壊れる」
旋律が変わる。
青い光。
ゆっくりと、静かに、悲しく――
だが圧倒的に、力強く。
森の中のすべてが、静まった。
敵も味方も。
木々すら――耳を傾けているかのように。
「これは……なんだ……?」
「どうして……心が痛む……?」
その歌は、肉体を傷つけない。
だが――魂を貫いた。
敵兵たちは、家族の記憶を思い出す。
失った友、
犯した罪、
言えなかった“ありがとう”。
そして、次々と――膝をついた。
クララ(塔から、震える声で)
「やったわ……
“追悼の旋律”を……発動させた……」
だが、その代償は大きかった。
この歌は――代償魔法。
《禁術:クリスタルの賛歌》
感情的犠牲を要し、実行者の寿命を削る。
デイヴィッド(囁く)
「……これで、いいんだ」
最後の一音。
そして、森は――
完全な静寂に包まれた。
エコー・ハンターは無力化。
敵前線は崩壊。
黎明軍、戦術的勝利。
⋯⋯⋯⋯
音は消えた。
だが――
その旋律は、戦場の誰の心にも
深く、静かに、刻まれていた。
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希望の旋律? それとも――倒すべきものへの鎮魂歌?




