第二の炎は、決して待たない
ハルトは思索していた。
だが――その間に、セレスティーヌはすでに動いていた。
彼が地図を見つめる間に、
彼女は盤面そのものを動かしていたのだ。
誇りを待つ戦争などない。
そして「勝利の女神」もまた、誰も待たない。
⋯⋯⋯⋯
太陽のない朝だった。
雲が空を覆い、
風が運んでくるのはただ一つ――
説明できぬ恐怖。
最初に気づいたのは、イリスだった。
イリス
「鳥の声がしない。
反響もない……静かすぎる」
クララ(報告書を読みながら)
「北部の監視センサーが無力化されました!」
「敵の数も、進行方向も不明です!」
リース(机を叩き)
「セレスティーヌが動いた!」
「しかも――ハルトが策を練り終える前に!」
⋯⋯⋯⋯
初戦の敗北で軍の再編成を進めていたハルト。
その胸に、再び圧がかかる。
ハルト(心の声)
「……彼女は、俺の“間”を読んでいた。
迷うことも、立ち止まることも……すでに予測していた。
そして、その“隙”を使って前進したんだ」
そして彼は気づいた。
「セレスティーヌは黎明を止めに来たんじゃない。
再び昇る前に……その光を完全に消しに来たんだ」
⋯⋯⋯⋯
攻撃は、嵐のように始まった。
魔導妨害部隊が補給線を破壊。
精神遮蔽魔法を纏ったアルビオールの特殊部隊が、
聖域の境界を突破。
最悪だったのは――
セレスティーヌがハルトの軍を「二つ」に分断したこと。
オーレリアは北へ飛ばされた。
カオリとマグノリアは南部前線に閉じ込められた。
クララとイリスは、封印された魔法塔で孤立。
そしてハルトは……中央に、ひとり残された。
彼が指令所へ駆け込むと、
空中に浮かぶ、氷のインクで刻まれた一文が現れる。
「破壊することではなく、
――無力化することこそ、勝利なのだ。
――セレスティーヌ」
その瞬間、ハルトは理解する。
「彼女の狙いは、兵を殺すことじゃない。
“黎明”の心臓を――ばらばらにして砕くことだ……」
⋯⋯⋯⋯
まだ完全な力を取り戻していない中、
ハルトは決断する。
「プロトコル・ソル・ベータ」――
分散型指揮戦術を発動。
全召喚者に、完全な作戦指揮権を委譲。
そして、ただ一つの命令を全軍に送った。
「合流はするな。
それぞれの場所で勝て。
各々が、“個の太陽”として輝け。
黎明は――ひとつではない。
――我らは、数多の光だ。」
雪に覆われた山の頂から、セレスティーヌは最初の反撃を見下ろしていた。
アルビオールの副官
「マスター……彼らを甘く見ているのでは?」
セレスティーヌ(わずかに微笑み)
「いいえ。
これは“進化”を教えているの」
「ハルトが学ばなければ……それは、彼の敗北。
でも――もし学ぶなら…」
その瞳が静かに輝いた。
セレスティーヌ
「その時こそ、ようやく私に相応しい“敵”になるかもしれないわ」




