誰も沈黙を選ばなかった日
帝国が滅びるとき、
それは剣によってではなく——
民が、
恐れずに立ち上がったときだ。
その日、
火は神殿では燃えていなかった。
燃えていたのは、
すべての老人の瞳に、すべての子どもの胸に、
すべての女の足元に宿る決意だった。
支配者たちはそれを見て、
炎を消そうとした。
何千人もの人々が、聖域の中央広場に集まった。
手には松明。
手書きの旗。
そして、ただ一つの叫び:
「太陽はもう私たちを焼かない! 今は——皆を照らしている!」
リーラ、癒し手は歌っていた。
クララはバルコニーから「黎明の旗」を掲げていた。
セルカは影の中で、静かに側面を守っていた。
そして——
丘の上に立つのは、アルビオルの将軍。
冷たい目と、完璧に整った軍服。
ヴォルティガン将軍は、すべてを見下ろし、
唇の端を歪めてつぶやく。
ヴォルティガン
「自由を求めるか……なら、火で返そう」
合図もなく、
帝国の兵たちが突撃した。
剣を掲げ、
魔法の詠唱を準備しながら。
民が叫ぶ。
その瞬間——
黄金の光が爆発した。
空から光のバリアが降り、
広場を包み込むように輝くドームが形成された。
その内側にいる者すべてが——守られていた。
そして、中心に姿を現したのは彼だった。
藍沢ハルト。
マントも王冠もなかった。
ただ、意志と鋼の眼差しだけがあった。
ハルト(雷のような声で)
「立ち上がった民に、剣を向けるだと?」
「それは戦略の誤りだ。そして……道徳の破綻だ」
その時、屋根の上から閃光のような影が跳ぶ。
マグノリア・アルバレス——黒衣のチャーラ。
彼女は回転しながら、魔法銃を轟かせた。
鎖は敵を縛り、武装を剥ぎ、時に骨を砕いた。
マグノリア(笑いながら)
「民を撃つ? この私の目の前で?
……バカ言ってんじゃないよ、クソども!」
黄金の火花が、彼女の周囲を染める。
帝国軍は混乱に陥った。
ハルトはヴォルティガン将軍へと歩を進める。
将軍はまだ護衛に囲まれていた。
だが、バリアは彼と共に動く。
生きた盾のように。
ヴォルティガン(怒声で)
「これは違法だ! 貴様は他国への不当介入を――!」
ハルト(鋼のように冷たく)
「お前は歌を刃で黙らせる。
ならば、俺は“法”で応える」
ハルトが将軍の前に立つと、
バリアはわずかに開いた。
彼は将軍の襟元を掴み、
ゆっくりと持ち上げる。
ハルト
「武装していない民への攻撃、
この地の人々への犯罪。
――“黎明の新たな法”のもとに、お前を拘束する」
そして、黄金の閃光と共に、
二人の姿は消えた。
残された兵たちは、武器を捨てた。
民は、叫び、泣き、そして——歌った。
鐘の音が鳴った。
何十年も沈黙していた音が、
広場に響いた。
そして、癒し手リーラが高らかに言った。
リーラ
「彼は剣で私たちを救ったのではない。
“盾”で救った。
そしてその火は、私たちを焼かなかった。
――温めてくれたのだ」
◇
その夜。
ハルトは神殿の一室で一人、頭を垂れて座っていた。
カオリが静かに入ってくる。
カオリ
「……震えてる」
ハルト
「もし……あのバリアが失敗してたら、
死者が出ていた」
カオリは背後から、彼を優しく抱きしめた。
カオリ
「でも、失敗しなかった。
そして今、皆があなたを信じてる。
——私がずっと信じてたように」
ハルトは彼女の肩に頭を預けた。
ほんの一瞬だけ。
そして、低く、絞るように呟いた。
ハルト
「……時々、強くありたくない」
「ただ、“十分”でありたいだけだ」
神殿の壁に、誰かがこう刻んだ——
「ここから始まった。
破壊ではなく、
守るための“炎”の物語が。」
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