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仲間に裏切られたガチャ中毒の俺、異世界で無限召喚スキルを手に入れ、最強の軍勢で世界を征服する  作者: ジャクロの精霊


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闇に集う者たち

***

風が再び塔の間を駆け抜けた。再建された北方の城壁に、氷青の地に金の太陽が描かれた新たな旗が揺れていた。その隣には西方で征服された王国の象徴、血赤の花「紅蓮の花」の紋章が掲げられ、今や両王国は一つの声のもとに統一されていた。


大広間――

地図が大きく展開され、その縁を囲むのは、ハルト・アイザワとその盟友たち。

カオリの軽妙な笑み、オーレリアの鋭い視線、マグノリアの静かな微笑み、エイルリスの落ち着いた立ち姿、そしてセルフィラ・フロストヴェイルの静謐な存在。


「北と西は制圧した」

セルフィラが魔法陣を操り、領土のプロジェクションを映し出した。

「民は誓約を交わした。 恐怖ゆえに、あるいは希望ゆえに」

ハルトは腕を組み、冷静な声で言った。

「理由など問わん。重要なのは――今、彼らに未来があるということだ」


カオリが柱に寄りかかり、ふと呟いた。

「そして、無視できない“指導者”もね」


エイルリスが静かに口を開いた。

「報告が入った。東の山岳地帯――再び動きがある」

マグノリアが眉をひそめて応える。

「また反乱?それとも……」

ハルトが声を落とす。

「違う。あれは――“彼ら”だ」


その言葉には、久々に感情が宿っていた。

「かつての同志たちだ」


――――

遠く、黒き山脈の頂き。雪と古代神殿の廃墟の中。

その場に立つは、ユウト・ホシナリ。ハルトの旧友にして戦略家。

その横に、カガモ・レツ。 彼の忠義深き副官にして今や「抵抗騎士団」の司令官。


ユウトは冷たく言った。

「ハルトはすでに二国を束ねた――このままでは大陸を征する」

カガモは兵旗を見つめながら答える。

「私たちの兵は、貴君を信じてる。 だが本当に戦えるのか?」

ユウトは歯を食いしばる。

「選択肢はない」


その背後では、魔術師・錬金術師たちが儀式を終えていた。岩の円環の中で、濁ったマナと古の魔物の残骸が渦を巻く。

「プロジェクト・キメラ…完了」

人型の魔獣が咆哮し、光を帯びた刻印を纏って立つ。


ユウトの冷声。

「ハルトがガチャ召喚を使うなら、我らは――人工兵を創る」

カガモは躊躇し声を潜める。

「制御できなければ…?」

ユウトの瞳は暗く光る。

「その時は我らの命で封じる」


山風が吹き抜ける。

カガモが呟いた。

「それでも…私たちがやろうとしていることが、彼と変わらない気がする」

ユウトは即答した。

「ハルトが先に越えたラインを、我らが追うだけだ」


――――

城の中――戦略室。

メッセンジャーが息を切らせて飛び込む。

セルフィラが眉を寄せて言った。

「報告によると、旧友たちが兵器を作っている」

エイルリスが付け加える。

「禁忌のマナを使っている。もし放置すれば――彼ら自身にも制御できぬ力を解き放つだろう」


ハルトは拳を机に置いた。

「王たちと同じ過ちを犯している。自分たちを救うつもりが、世界を破壊する」

カオリが鋭く問いかけた。

「マスター、あなたはどうする?」

ハルトが立ち上がり、黄金の外套を風に揺らす。

「まだ殺さない」

マグノリアが眉を上げる。

「まだ、ですか?」

ハルトは静かに頷いた。

「まず――彼ら自身に、自分が何になったかを見せたい」


異様な静けさが戦略室に満ちる。

オーレリアが燃えるような微笑みを浮かべる。

「では、出撃の準備を」

ハルトは微笑んだ。

「そうだ…世界間の戦争が、今始まろうとしている」

城の最上階、冷たい風が二つの太陽の光と交わる場所で、ハルトはかつての世界をもう一度見下ろしていた。


彼の後ろで、セルフィラが静かに、それでも揺るぎない声で問いかけた。

――炎は清めることも、滅ぼすこともできるわ。あなたは、どちらを選ぶの?


ハルトはしばらく黙って手を見つめた。

かつて不正に震えていたその手は、今や王や神さえも恐れるものとなっていた。


「憎しみで壊すつもりはない」と、ようやく口を開いた。

「だが、この世界が生まれ変わるために壊れる必要があるなら――俺がその引き金になる」


遥か遠く、ユウトとカガモの影が、怨念の灯火のように山頂で揺れていた。

大陸の両端で、かつての絆が裂けようとしていた。


ドアの横で、カオリが腕を組んで言った。

――それでも、あいつらは今もお前を“悪”だと思ってるかもしれないぞ?


ハルトはすぐには答えず、ただ目を閉じた。

風が強く吹き、まるで大地そのものが彼の決意を待っているかのようだった。


「なら、憎めばいい」

「俺のことを、暴君でも、偽りの英雄でも、魔王でも呼べばいい」


そして静かに、確かに言い放った。


「――だが今度こそ、この世界が同じ過ちを繰り返さないように、俺が立ちはだかる」


その瞬間、城下の帝国軍は一斉に咆哮を上げた。

氷の上に、炎の中に、そして失われた記憶の上に、黄金の太陽の旗がはためいた。


裏切られし者たち、赦された者たち、そして決着を望む者たち。

すべてが交差する戦いが、今――始まろうとしていた。


――つづく。

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