07.幼馴染に自分の性的な部分を見られるのはダメージがある
ズボンのポケットに両手を突っ込み、自身の突き出たものを抑えながら前かがみで歩く。
早くおさまってくれ。ただそう願って。
七瀬の性格なら馬鹿にすることやドン引きすることなどないとわかってはいた。
なんなら理解を示すのではとも思うくらいだ。
しかし幼馴染に自身の性的な部分を見られることにはとてつもなく恥ずかしいので絶対に隠しきりたい。
そんなことを考えながら七瀬の背中を追っていき、興奮も覚めぬままに階段を上って人気のない最上階にたどり着く。
この階には屋上、そしてその屋上に続く出入口前の小さなスペースしかなかった。
出入り口にはかぎが掛かっており、屋上には入れないのでこのスペースに人が来ることはない。
そんな空間に二人きり。
俺は先ほどの光景を見て起こった興奮とはまた違った高ぶりに襲われていた。
七瀬が振り返り俺と目が合う。しかしすぐに視線を外されてしまう。
俺は今だポケットに手を入れ突起を抑える。
その後七瀬は口をもごもごと動かした。
「ご、ごめん。
なんて?」
俺が恐る恐る聞き返すと七瀬は赤くなった顔をさらに染め上げる。
そしてすぐに勢いよく叫んだ。
「わ、私は別にえっちなことに興味ないから!!」
発言と行動がちぐはぐな見え透いた嘘。
しかし本人は表情を硬くしてでこちらを眺めてくるのでその真剣さとのギャップについ俺は笑ってしまう。
「ふ、わ、わかってるって」
「信じてないでしょ!」
さきほどと同様に大きな声を出す七瀬。
俺は少し可笑しな気持ちになりながらどう反応して良いか分からずに適当に返事をする。
「ダイジョブダイジョブ。
わかってるって」
「もお!!」
七瀬は適当な反応に不満をもったのか、いきない俺の両腕を掴む。
そして急に俺の体ごと揺らし始めた。
「ちょ、やめろって」
「信じてくれるまでやめないから!」
頬を膨らませて七瀬は主張する。
俺は少し、いやかなり冷や汗をかいた。
なぜならこの揺らされている腕の先、突起を隠している手がポケットから出たら一大事だからだ。
ま、まずい・・・!
やめさせなければ!
頭を必死に働かせ言葉を選ぶが、この混乱した状況では適切な判断をすることは難しい。
俺は最悪な発言をしてしまい、火に油を注ぐ結果となる。
「そんなこと言っても・・・お前よく俺のお尻見てるじゃん!」
「なっ!!
見てないよ!!」
七瀬の目が大きく見開く。
そして腕を揺らす勢いが増した次の瞬間には。
俺の手は勢いに負けポケットからずるりと手が出てしまう。出たしまった。
そして膨れ上がる俺の下半身。
一気に心拍数が上がる。
早く手をポケットに戻そうとする。
しかし揺らされてできない。
「ほんとに信じてるって!」
俺はつい大きな声を出す。
こちらに注目させ、七瀬の視線が下にいかないように。
しかし、そんなに都合よく物事が運ぶはずがなく。
「ほら! もう信じるまでやめな―――え!!??」
七瀬の顔が下に向く。
そして数秒間固まったまま視線を動かさない。
気づかれてしまった。
少しの希望も抱かせない確信の視線。
俺はもちろん恥ずかしさを感じていたが、諦めきれてどこかスッとした感覚が強かった。
いったい七瀬は何て言うのか。
こんな状況で俺が興奮している理由としてどんなことを思いつくのだろうか。
まあさっきの女子同士の腰ふりを見て興奮したと知られるよりはましだ。
そんなことを考え、七瀬の言葉を待ち俺も黙る。
すると彼女は視線を上げ、再度俺の体を揺らし始めた。
「ほ、ほらー。
信じてくれるまで辞めないぞー!」
棒読み。されど彼女なりの精いっぱいが伝わる装いであった。
そう、見て見ぬふりをしてくれていたのだ。
そんな彼女の優しさによって熱くなる瞼に力を入れる。
そして俺は優しい口調で話す。
「ありがとう七瀬。
おれ、俺信じるよ」
「えぇ!?
・・・うん、大丈夫・・・」
七瀬の困惑したような表情を見ているとキーンコーンカーンコーンと授業の予冷が鳴る。
「もう行こうか」
そう伝え、俺は穏やかな気持ちで階段を降りて行った。