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04.お尻への決意と約束

 寝る準備を済ませ、俺は一人、自室のベッドの上で悶々としていた。


 つくらなかっただけで恋人はずっと欲しいと思っていた。

 うん、つく'れ'なかったんじゃありません、つく'ら'なかっただけです。

 興味がなかっただけです。


 しかし! 俺ももう中学生。

 甘酸っぱい恋愛をしたい!

 そんなチャンスが来たと思ったんだが・・・。


 もったいないという気持ちと、これでよかったんだという気持ちのはざまで揺れていた。


 お尻を差し出し、付き合うか。

 それとも意志とお尻のガードを固くして断るか。


 甘い誘惑に負けそうになる。

 だって女の子と付き合えるんだよ?


 頭を抱えていると突然、ドアが開く音がした。

 俺は首を思いっきりその方向に曲げ、顔を動かすと、予想した通りの人物の姿。

 思わず俺は声を荒げる。


「ノックしろ、姉ちゃん!!」

「はいはい」


 許可もなしに部屋へとずかずか入ってくるこの女、猫屋敷鈴は俺の姉である。


 2歳年上であり、今は同じ中学に通う3年生。

 生徒会長を務めていることもあり、うちの中学では美人で有名だ。

 あんなお姉ちゃんがいたらなあと同級生には言われるが・・・。


「おい! なにしてんだよ!」

「この漫画借りてくよー」


 蓋を開ければこのありさま。

 傍若無人、邪知暴虐、横行闊歩、そんな言葉が似あう人間だ。


 姉は俺の漫画を片腕いっぱいに抱え、部屋を出ていこうとする。

 そんな進行を防ぐように俺は起き上がり、前に立ちはだかった。


「いいっていってないだろ! 置いてけよくそデブ!」

「は? うっさいなー、このエロガキが」

「はぁ!?」


 な、エロガキだと・・・!?


 突然訳の分からないことを言う姉。

 今まで下ネタなどの類の話は家族間で出たことがない。


 俺はそんな姉の唐突な言動に、苛立ちはもちろんだがそれに加えて強い疑念、警戒心をもった。


 そんな俺の表情を読み取ってだろうか。


 姉は目を細くし、薄ら笑みを浮かべながらゆっくりと話し出す。


「すんごいことになってたわねあんたのパソコンの・・・り・れ・き」

「―――!!」


 寒気が全身を襲う。


 ま、まさか!?

 数日前のペニスバンドの履歴が・・・残ってた!?



 なにぃ!?



 いつもならそういう履歴はすべて消すのだが・・・あの日はあまりの衝撃で忘れていたのか??

 確かに消した記憶が―――今はそんなこと重要じゃない!


 そう思い、意識を現実に引き戻して視線を上げる。

 するとそこには、俺の反応を見てにやついた顔をさらにゆがめる姉の姿があった。


「お母さんにいってもいいんだけどぉ? どうするぅ??」


 スマホのカメラを指指さして、証拠は押さえたことと、自分の優位さをアピールするような顔をする姉。

 俺はなにも言えず、ただその場で立ち尽くすことしかできなかった。


「私ってぇ、感情的になるとついポロッと言葉が出てくるタイプだからさあ。

 これからは素直に私の言うこと聞いてくれるよね?


 下僕くん?


 はははははは!」


 笑いながら、バタンとドアが閉められた。


 先ほどとは打って変わって部屋に無音が満ちる。


 ・・・。


 最悪だ。まさかこんなことになるとは。

 弱みを握られてはいけない一番の相手である姉に・・・。

 数日前の自分を恨むばかりだ。


 数分間、俺は頭を抱えてその場に崩れていた。


 やめだ! やめだ!

 もう後悔してもどうしようもないし、気分が落ち込むだけだ。

 頭を切り替えよう。


 そう思い、俺は姉が来る前は何を考えていたかを思い出そうとする。


 なにか恋愛の話を―――そうだった、お尻を差し出し、付き合うか。

 それとも意志とお尻のガードを固くして断るかという話だ。


 ・・・ん?



 お尻を差し出す????



 俺はそのとき、先ほどの姉の行動を思い出した。

 そして芋づる式に思い出される今までの家での日々。



 暴虐な姉に支配されていた恐怖を・・・鳥籠の中に囚われていた屈辱を・・・!



 大事なことを忘れるところだった・・・!!



 俺は拳に力を入れ、決意する。


 この世界では珍しい、もしかしたら異常かもしれない。


 でも!

 でも・・・!



 自分の尊厳を捨てて、女の子と付き合うくらいなら―――死んだ方がましだ!!



 欲望でくらんでいた目を覚ます。


 お尻を狙わない・・・そんな女子とお付き合いを!


 俺は自分のお尻をそっと触る。



 大丈夫だ。

 安心しろ・・・安心しろよ、俺の尻。


 俺は熱烈な灯を心にいだいた。


 すでに日は沈んでいる。

 しかし部屋は暑い。

 そんな夏に近づいてきた夜を過ごして。




 俺のお尻が熱くなるまで―――






 あと100日。


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