03.初体験!? 獲物になってしまうね
「・・・好き。うちと付き合って」
世界の貞操が逆転してから数日。
俺は今、告白されていた。
相手の名前は神崎静香。
同級生の女子の中ではよく話す方だ。
ロングヘアーに眼鏡をかけており、普段は静香という名を表すように静かな女子だ。
だが、自分の好きなことになるとちょっと、いや、かなりテンションがあがる、いわゆるオタクタイプである。
だからよく漫画やアニメ、ゲームの話をする間柄であった。
ただそんな関係は元の世界での話であって、この世界でもそうとは限らない。
よってその差異を明らかにするために今日は一緒に帰ろうと誘い、二人で帰路に着いていたところだ。
そこで俺は以前にした会話の内容を確認するように話し始めた。
過去のことを思い出話のように話す俺たち。
一通り話し終え、会話に間が生まれた後、突然告白されたのである。
正直うれしすぎる・・・!
だって今まで生きてきて、告白されたことなんて一度もない。
それどころか恋愛のれの字もない人生だった。
赤みを帯びた表情でこちらをじっと見る神崎の目に、吸い込まれるように視線を合わせる。
・・・。
なんか俺も好きになってきたかも。
俺の体が熱をもつのを感じる。
たぶん俺、神崎のこと好きだわ。
うん、付き合おう。俺、この人好き!
間違いない!
言え!
言うんだ!
俺も好きだと!
「お―――」
口を開いた瞬間、走馬灯のように思い出す。
『初めての女子必見! 間違わないペニスバンドの選び方!!』
という文言とそれに付随する数々の画像を。
だ・・・だめだ。聞いちゃだめだ聞いちゃだめだ。
こんなのもうセクハラだ。
でも―――
―――聞かずにはいられない!
俺はゆっくりと距離を詰める。
誰にも聞かれないように○○の耳元でささやいた。
「俺の・・・穴に突っ込みたい?」
「ふぁーーーーー!!!!」
突然叫び、腰を落としながらその場に倒れる神崎。
なんだ急に!?
俺は驚きながら彼女の表情をのぞくと、恍惚とした表情をしてこちらを見つめている。
そして、恥ずかしそうに口を開いた。
「・・・うん・・・!
つっこみたい!!」
神崎の瞳がかっぴらいていた。
こ・・・これはヤバい。
俺の体は引きあがり、思わずあとずさりをする。
その距離を縮めるようにじりじりとこちらに詰め寄る神崎。
大きく開かれた目は、すでに獲物を狩る鋭い目つきに変わっていた。
俺は思わずあとずさりをし、大きな声を出す。
「ご、ごめん! もう帰らないと・・・ごめん!」
「まって!!!!
先っちょだけだから!!
すぐ終わるから!!」
俺は言葉を置いて、逃げるように走って帰った。
走れ! 走れかなで!
頭の中でただそう唱える。
「先っちょだけだからー!」と後方から聞こえる声をかき消すように。