――幕間――
古代遺跡イグラーシャに凶悪な魔種あり。
この報告を受け、魔狩協会は沙国のイグラーシャ遺跡に調査団を編成・派遣。同時に討伐隊を結成し迅速な対応を見せた。
結果、調査団含め討伐隊は全滅。
当初、中位相当と思われていた魔獣は二度の交戦の末、上位相当と認められ、特殊個体としてダイオウルフと名付けられた。
協会は近隣の国々に協力を要請し、遺跡一帯を封鎖。ランクAの魔狩を筆頭に大規模な旅団を組み、歴史に残るであろう大規模討伐作戦を実行。
併せて沙国の騎士団は現場近くに待機、周辺の冒険者なども集合していた。
多少の犠牲をはらいながらも、この大規模討伐作戦は順調に収束した――ように思われた。しかし、最悪の事態は満を持したように訪れた。
魔獣ダイオウルフ討伐直後、現場にて古代遺物〈魔導門〉が起動・展開。〔おそらく、ダイオウルフの死体に残っていた多量の魔導元素が起因と思われる。〕ダイオウルフの死体は霧散し、代わって現れたのは数百もの中型魔種の群れであった。
現場は大混乱に見舞われ、前線は瓦解。上位魔狩の奮闘と、待機していた騎士団・冒険者らの臨機応変な対応により、辛うじて戦線を立て直し、現れたすべての魔種は討伐された。
近隣の国々への被害は免れたものの、勝利とは言い難い、実に苦い結果となった。
死傷者は数ある討伐作戦の中で、過去最大。
また、行方不明者の中には、ランクS、幻の魔狩〈黒影〉や、ランクB〈迅雷〉の名も記されている。
かつてないほど悲惨な末路を迎えた大討伐は、関わった全ての者に大きな傷を残し、歴史書に強烈な事実として刻まれた。
特集『見せかけの魔獣 虚幻のダイオウルフ』より