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彩愛の話④ 高校受験に向けて

 12月。中学2年生の冬、高校受験を意識するようになってきた。

 私は最寄り駅から3駅ほどの高校が、陽奈子は隣駅から徒歩で行ける高校が志望校だった。


「そろそろ受験勉強はじめないとだよね」

『そうだね……。あーあ、思いっきり遊べるのは今年の冬休みが最後かなぁ』

「と言っても、冬休みも塾があるから遊ぶだけってわけにはいかないのが辛い……」

『もー! 受験やだよ~』

「陽奈子はレベル高いところ目指すからなおさら大変だよね」

『うぅ……受験勉強嫌だけど、あの学校行けないのも嫌だぁ……』


 クラスの雰囲気も、少しずつ高校受験を意識した緊張感のあるものに変わりつつあった。

 いつの間にか定番になった陽奈子との夜の通話も、高校受験が話題にのぼることが増えた。


『りこぴん、受験の時期もアイドル活動してたのすごすぎる』

「本当にね。勉強で心折れそうになったら、『りこぴんはこの時期、学校・アイドル活動・受験勉強のすべてをこなしていたんだぞ!』って自分に言い聞かせることにする」

『それ良い! 好きな人が頑張ってたって考えると自分も頑張らなきゃって思える』


 どんな話題だって、陽奈子と私の好きなアイドルであるりこぴんにつなげられる。


 陽奈子と話すのは本当に楽しくて、学校でも通話でも話しているのに全然飽きない。

 でも、受験勉強が始まったら勉強で忙しくて通話できなくなっちゃうんだろうなってさみしくなった。




 中学3年生に進級。今回も陽奈子と同じクラスだ。もちろん、工藤と黒田で席順は前後。


「3年間同じクラスだね!」

「ね、嬉しい! 3年間一緒の人ってあんまりいなくない?」

「ほんとだよね~。彩愛と同じクラスになれて良かった!」


 仲の良い子のうち何人かとは別のクラスになってしまったけれど、話す機会が一番多いといえる陽奈子と同じクラスで良かった。


 3年間同じクラスで出席番号と最初の席順が前後。休み時間や放課後だけでなく、そもそも授業でも一緒に活動する場面が多かった。

 陽奈子がそばにいる学校生活が当然のように感じていた。


 高校に進学したら、クラスどころか学校も別になる。陽奈子と過ごす時間は一気に少なくなる。

 そんな当たり前のことが、このときは想像もできなかった。




 中学3年生の冬。高校受験が目前に迫り必死に勉強をする日々。さすがに、夜に陽奈子と通話をする機会はほとんどなくなった。

 そんなある日。勉強が一段落したタイミングでSNSを眺めていると、とある重大発表が目に入った。


「……え!? 嘘!?」


 陽奈子に知らせないと! とはいえいきなり通話はさすがに邪魔しちゃうかもだから、とりあえずチャットで……。

 と思ってたら陽奈子から通話がかかってきた。


「もしもし?」

『あやめ! あやめー! 大変! あ、ごめん急に通話かけちゃって。勉強邪魔しちゃったよね!?』


 耳元から陽奈子の声が聞こえる。久しぶりの通話だからか、少しドキドキした。


「大丈夫、実は今私も陽奈子に連絡しようと思ってた!」

『あ、じゃあ同じ内容かも!?』

「そう、りこぴんのライブツアー! 私たちの地元に来る!」


 そう。

 Webで告知された、我らがりこぴんのライブツアー。今回は全席指定のホールツアーで、私たちの住んでいる地域にあるホールも会場の1つだった。

 しかも。

 

『これさ、日程的に高校入学の直前じゃない? 4月入ってるから中学生じゃないし少し夜遅くまで出歩けて、しかも入学前だからギリギリ忙しくないかも!』

「ね! ベストタイミング、絶対行きたい!」

『今からお母さんにライブいっていいか聞いてくる、待ってて!』

「あ、私も聞いてくる!」


 そうしてお互い親に確認して無事に許可をもらえたので、地元ホールの公演の選考抽選に応募することが決定した。


『りこぴんありがとう……! 受験勉強辛いけど、りこぴんのライブに行けるって思えば頑張れるよ……』

「本当に……りこぴんは神様かもしれない……」

『今日の分の勉強終わったら応募しとく!』

「陽奈子ありがとう! 楽しみだなぁ……あ、でもチケット当たるかな……」

『……大丈夫だよ! 私たち勉強頑張ってるしご褒美として絶対当たるよ!』

「あははっ確かに!」


 それから少し会話をして、勉強に戻るからって自然と通話終了になった。


 通話が終わった後もドキドキがおさまらない。

 きっと、通話が久しぶりだったのと、りこぴんのライブツアーに行けるかもしれなくて興奮しているからだ。

 気を取り直して勉強を再開したけれど、どこか落ち着かずその日はずっとふわふわしたままだった。

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