表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

彩愛の話② 日々のやり取り

「彩愛!聞いて聞いて、大変だよ、りこぴんライブツアーやるって!」


 中学2年生になった。今年も陽奈子と私は同じクラスで、相変わらず出席番号は前後で、自然と席も前後になった。これは、進級してすぐのある日のこと。


 陽奈子と私が仲良くなったキッカケであり、二人が共通して好きなアイドルのりこぴん。そのりこぴんがライブツアーをやることになったらしい。今までもライブは何度もやっていたけれど、ツアーは初めてだと思う。


「ええええ!うそ、いつから?どこで!?」

「これこれ、ライブツアーの情報!朝家でプリントしてきた!」


 りこぴんのライブツアーという大事な情報を知らずにいたなんて、不覚……。陽奈子が、Webに載っていたというツアーの詳細ページをプリントアウトして持ってきてくれた。


「昨日の深夜に公開された情報だって」

「陽奈子、なんでそれ気付けたの!?」

「りこぴんのSNS通知オンにしてるからね~」


 家に帰ったら私も絶対通知設定しよう。


 陽奈子が見せてくれたページ、そこには会場や公演時間が書かれていた。

 最初は二人ともワクワクした表情だったけれど、段々暗くなっていった……。


「……やっぱり、行けそうにないね」

「さすがにダメって言われちゃうだろうなぁ。危ないし。あーあ、早く大人になりたい……」


 会場はすべて、私たちが住んでいる場所からだいぶ離れていた。ライブの時間は夜だから、一番近い会場でも家に帰る時間はきっとすごく遅くなってしまう。

 あと、会場はライブハウスで、どのライブもスタンディングらしい。りこぴんのライブには参加したいけれど、親の許可がもらえるとは思えないし、正直怖いなって気持ちも強い。


「私は高校生になったらライブに行っても良いって言われてるよ。陽奈子は?」

「私もそんな感じ。高校生になったら絶対絶対絶対絶対ライブ行く!あと、今回のツアーのグッズは買う。通販で」

「ライブの公演時間に合わせて昔のライブ映像見ない?」

「それ良い!最高!」


 いつかりこぴんのライブに参加する日を夢見ながら、陽奈子とは相変わらずりこぴん談義で盛り上がった。





 休み時間や放課後だけでは時間が足りなくて、休日に二人で会うことも何度かあったし、夜はほぼ毎日チャットツールでやりとりをしていた。


『この動画の3分20秒〜、りこぴん出てる!』

『陽奈子これどうやって見つけたの!?すごすぎるんだけど!?』


『彩愛が言ってたインタビュー記事読んだ。感動して泣いた』

『りこぴんの良さが1000000%出てるよね。最高すぎる』


『りこぴんが着てたTシャツ買っちゃった!』

『私はりこぴん愛用って言ってた手帳ゲット!』


 こんな感じでりこぴんの話が多かったけれど、学校の話とか全然関係ない話とか、とにかく色んな話もした。


『ヒナコサマ……数学の宿題、3問目がわかりません……教えて……』

『仕方ないな~答えと途中式の写真撮って送るから待ってて』


『彩愛がおすすめっていってたクッキー買ってみた!すっごく美味しい!!!』

『でしょ!?食感が絶妙で大好きなんだよね』

『安いのも良い』

『安くて美味しい、最高だよ』


『なんか今日りさが元気ない気がしたんだけど』

『部活の友達から聞いたんだけど、最近吹部少しピリピリしてるらしい。りさパートリーダーだから何か巻き込まれてるのかも』

『部活絡みかぁ……私たちに何かできるかな……』

『話聞くぐらいしか……』

『……りさから相談されるまであえて何も言わず、いつも通り過ごした方が良いかな』

『そうかもね。せめてクラスでは楽しく過ごしてほしいし』




 ある日の夜。

 りこぴんの曲を聴きながらボーッとマンガを読んでたらチャットツールの通知がきた。相手は陽奈子。


『あやめ~!今日流星群なんだって!知ってた!?』


 陽奈子からの連絡がなかったら知らなかったな。マンガを閉じて返信を打ち込む。


『そうなの?知らなかったよ』

『今ベランダに出てるんだけどまだ見つからない~』

『私も見てみよーっと』


 チャットしながら私も庭に出てみる。すごく良い天気で天体観測にぴったり。住宅街みたいな明るい場所じゃなかったら、きっと満点の星空が見えたんだろうな。


『今日天気良いね』

『ね!星すごく綺麗』

『流れ星見たいなーお願いしたいことたくさんある』

『あやめ~意外と強欲?w』


 少しやり取りして気付いた。チャットを送るためにはどうしてもスマホに目を向ける必要があるから、流れ星探しに集中できない。スマホを見ているうちに流れ星を見失ってしまう可能性が高いって。


 少し考えて、陽奈子へチャットを送る。


『チャットしながらだと星見るのに集中できないから通話しない?』


 ……今思えば、別にチャットしながら流れ星を探す必要はなくて。流れ星を見つけてからメッセージをしたり、見つからないから諦めて寝るって伝えたり、チャットは一旦保留でも良かった。

 でも私はそんなことに気付かず、陽奈子に通話の提案をした。

 チャットを送った直後に通話の通知が来た。相手は陽奈子。


「もしもし?」

『彩愛天才!確かに通話なら空見ながらでも出来る!』


 耳元から陽奈子の声が聞こえてドキドキした。そういえば、もう1年以上の付き合いだし一緒に遊ぶ機会も多いし毎晩のようにチャットしてるけど、通話って初めてだ。


「チャットしながら流れ星探しは無理だね、ていうか陽奈子と通話って何気に初めてじゃない?」

『そういえばそうかも!付き合い長いのにね~』


 ケラケラと楽し気な笑い声がする。なんだか耳がくすぐったい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ