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彩愛の話⑧ ライブ後・実感

「……はぁぁああ〜!! すごかった、すごかった!! 楽しかったああああー!」

「本当にね! 最高だった、楽しかった、ライブってこんなに楽しいんだね!」


 りこぴんのライブの終演後。私たちはすごく興奮していて、ただただ「すごかった」「楽しかった」しか言えなかった。


「生りこぴん可愛すぎた……りこぴんが可愛いのは知ってたけど予想以上だった! 可愛すぎたよ」

「陽奈子、りこぴん可愛い……って言いながら泣いてなかった!?」

「可愛すぎて我慢できなかった……!」

「びっくりしたよー! でも気持ちわかる。あとさ、歌上手過ぎた!」

「それ!! 歌が上手いのもそうだけど、大好きな歌を生で聞けた感動すごい。ほんっとに楽しかった……!!」


 興奮で思わず声が大きくなる。りこぴんが可愛くてパフォーマンスが最高で、ライブが本当に楽しくて。

 間違いなくここ最近で一番幸せな時間だった。


「いやぁ……行けて良かった。陽奈子ありがとう……!」

「こっちの台詞だよ! いや、ありがとうを言うならりこぴんにじゃない!?」

「あ、確かに! りこぴん、幸せな時間をありがとう……」


 幸せな気持ちを抑えきれなくて、抑えたくなくて、「すごく楽しかった、幸せだった!」を全面に出したい気持ちだった。今思えば、馬鹿みたいにはしゃいでいた。


「はぁ……楽しかったね、彩愛……!」

「うん! 早くも次のライブが待ち遠しい」

「本当に! ……次、かぁ」


 「次のライブ」に対する返事が、何だか少し落ち込んだ声な気がして気になった。


「……陽奈子? あ、さすがにライブ終わった直後に次の話は気が早かった……?」

「あ、ううん! 私も次のりこぴんライブが楽しみすぎるよ! ただ……」


 一旦言葉を区切る陽奈子。さっきまでの興奮したような様子が嘘みたいに、いつの間にか落ち着いた表情になっていた。


「……今日のライブさ、春休み中で、高校入学直前で、4月に入ってて中学生じゃないから行けるって話だったじゃん」

「そうだね、タイミング良かった」

「ほんとにね! ……ってことは、りこぴんライブが終われば、その後すぐに高校入学で。……高校、ちょっと不安だなー、怖いなーって」


 ああ。……楽しい時間が終わってしまった分、その先に待つものをハッキリ感じるようになって不安ってことかな。

 言われてみると私も、りこぴんライブが終わって春休みの楽しみに一区切りついて、高校入学が迫った感じを覚えた。


「それにね、……」


 陽奈子が私の顔を見て、すぐに目を逸らした。


「……彩愛と”次に”会えるのいつかなって思って、さみしくなっちゃった! えへへっ」





 中学校の卒業式が終わった後も、陽奈子や友達が泣いている時も、何となく「終わり」を実感できていなかった。

 春からは高校生になること、中学で仲の良い友達と同じ学校ではなくなることはわかっていた。けれど本当の意味で実感できてはいなかったんだと思う。


 もう、学校で陽奈子と会うことはないんだ。……次に会うのはいつなのかを考える必要がある、会うのが当たり前ではなくなるんだ。

 卒業式で泣いていた陽奈子は、そのことをちゃんと実感していて、だからこそ泣いていたんだ。


「……え、っと……。会おうよ、休みの日とかさ! 夜とか電話すれば良いし、連絡もするよ!」

「……うん、私もする!」

「別に、学校変わるだけで縁が切れるわけじゃないし……。ってか、陽奈子と縁が切れたら困るよ、誰とりこぴんの話すれば良いの!? ってなっちゃう!」

「あ、それ私もだ! りこぴんの話するために彩愛にいっぱい連絡しないとだ!」


 はじけたように笑う陽奈子を見て何故かほっとした。

 

 学校が離れるのは事実。けれど、別に友達じゃなくなるわけではない。

 趣味が一緒で、気が合って、何より中学3年間ずっと一緒にいた。

 多少合う頻度が下がったって、これからもずっと友達……なのは、間違いない。




 陽奈子と私にとって春休み最大のイベントであったりこぴんのライブが終わった。

 春休みは残り僅か。高校の準備や家族との用事を済ませるうちにあっという間に過ぎて。……そして、高校の入学式を迎える。


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