プロローグ
キーンコーンカーンコーン…
4限を終えるチャイムがなる。やっとお昼だ。
退屈な授業、退屈な毎日。毎日同じ事の繰り返し。
今日いつもと違う事といえば、後ろの席の陰キャの山田だか山本だかが嘔吐して早退したくらいだ。前の席の私は臭いや床の汚れやらで散々な目にあった。幸い吐瀉物は私の椅子にまでは飛んでおらず私自身の被害はそんなにはなかったのだが。
「夏菜子!お弁当たべよ!」
友達のゆっこが私の席までやってくる。もちろんわたしは食欲なんてあるわけがない。
「ゆっこの席の方で食べよー」いつもは教室の真ん中辺りにある私の席でお弁当を食べるのだが、今日はそんな気にはなれない。
ゆっこの席は直射日光のあたる窓側だ。
お弁当を持って席に移動する。左腕にジリジリと太陽の光が照りつける。カーテンを閉めようとすると、グラウンドで白線を引く体育教室の江ノ元の姿が見える。
2階からでも彼女の顎から大粒の汗が流れ落ちるのが見える。
いつも髪の毛を引っ詰めて、ノーメイクで、ジャージで…
進路のことなんてまだ遠い先だと思っていたのに、もう高校2年生になってしまった。少なくともあぁはなりたくないなと思った。
私は、涼しいオフィスで可愛い制服、もしくはオフィスカジュアルなんか着ちゃって、化粧もネイルもバッチリの丸の内OLみたいな感じになりたい。丸の内OLがどんな物かもいまいち分かっていないが、まぁとりあえずそんな感じだ。
「夏菜子!暑い。早く閉めて。」ゆっこがだるそうに手で顔を仰ぎながら私を睨む。
「あぁ、ごめんごめん。」シャッと勢いよくカーテンを閉める。
カーテンを握ったでがじんわりと汗ばんでいた。