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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第3章 赤髪の剣士と魔法使い
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結末

 誰かに手を差し伸べるということは誰かの手を振り払うということ、今までの経験から数えきれないほど学んだ。

 犠牲は仕方ない、仕方ない……仕方なかったんだ……

 そうしなければ助けられなかった。


「貴様は一体何を守っておるのだ、その多くの犠牲の先に一体何がある、貴様の”正義”はそうやって屍を積み上げるだけ積み上げ、最後には差し伸べた相手からも決別される破滅の道……妾には到底理解できない」


 あの獣の言葉は今でも脳裏に焼き付いている


 だがそれを何故今思い出す?

 あぁ……そうか、今目の前にある状況がアイツの言っていた理解できないものだからか






「………これで全員か」


「ねぇ……ライ……一体これはどういう……」


「どういうとは?」


「……今貴方何したの?……」


 マキナは肩を振るわせながら俺を睨みつける。

 周りを見ると他の奴らも同様に青白い目の視線が集中していた。


 ただ赤く染まった手を眺める。

 紛れもない血、俺の周りにはすでに肉塊となった騎士達、そしてミカと名乗った人物の頭部が転がっている。


「見てわからないのか?目の前の敵を倒しただけだ」


「自分で……何を言ってるかわかってるの……ライは人を殺したんだよ……」


 マキナの俺に向けられた視線は先ほどまでの友人同然のようなものとは全く違う、得体の知れない何かを見ているようなものだった。


 数分前、俺はマキナを殺そうとしたミカを短剣で一振り首と体を割るように切りそのあとは襲ってきた騎士をただひたすら魔法で焼いた。

 別に誰か殺すのは今に始まったわけではないし正当化するつまりもない。

 俺自身がマキナを守りたい、そう思ったから排除したまでだ。


 今回は騎士団だ、ただの盗賊とは違う。

 確実にこの場いるもの全員仕留めなければ援軍が来る。

 気絶させる手は鎧によって無効。

 よって殺す以外に選択肢はない。


「ば、ばけ………もの……」

「いやだ………いやだぁぁぁぁああ死にたくないぃぃい」


 腰が抜けているマキナをよそに後ろにいた冒険者達は一斉に逃げ出す。

 泣きながら逃げる者、震える足のせいで這いずりながら逃げる人、子を抱えたまま山を下って行く人。

 皆俺と言う存在が騎士団なんかよりもよっぽどやばい物に見えたらしい。

 こうなることは行動を起こした時点で分かったいた。

 だから何にも感じないしいつも通りのこと。


「………化け物か、久しぶりに言われたなそんなこと」


 数百年間寝てたせいで随分昔のことに感じる。

 きっとこの先もこうやって同じやり方しかできないのだろう。


「……さて何故お前は残っている、俺に殺されたいのか?」


 視線の先にはまだ腰が抜けて座り込んでいるマキナがいた。

 さっきまで50人を超える人々がいた広場にはすでに死体と俺、そしてマキナしか残っていない


「私は……信じてるから………ライは私を助けてくれるために動いてくれた……騎士団を殺したのだってそう……私のために動いてくれた……なのに……なのに……」


 言葉が詰まり上手く言い出せないマキナ。

 だが一言、涙を震わせながら訴えた。


「あなたに対する恐怖心が無くならない………消えないの!!」


 これは俺に対する怒りなのか、はたまた悲しみなのか理解できない。

 信じるという言葉の信憑性は皆無。


「そうか、それが正常だ。お前はいたって普通の反応をしている」


 (なだ)め方なんて俺は知らない。

 そもそも元凶が自分なわけで俺が何を言ってもこいつには響かない。


「嫌だ………怖い……怖い……怖い!」


 マキナの視線は決して俺を逃さない。

 ずっと捉え続けて俺が一歩前に出るとその度に後ろに引きづりながら下がる。


 さてこうなった以上もう俺はこの場にいる資格はない。

 だが目的だけは済ましておくとする。

 商人がさっきまで引っ張っていた荷車の中、これが今回の目的。


「………これか」


 荷車にかけてある白い布を捲ると目的の物はすぐにあった。

 緑色の皮が巻いてある日記帳ほどの本。

 本当は正式な取引をするつもりだったが致し方がない。

 大体の金貨が入った袋を荷車に置き本は黒衣の中にしまう。


 もうこの場に用はない、死体処理するにしても血が飛び散りつすぎて跡を残さない方が無理だ

 それに俺の情報はさっき逃げて行った奴らから広まっていくだろう。

 冒険者としての活動ももうできない。


「できるだけ早くこの場を立ち去れ、騎士団が来ればお前が犯人扱いさせる」


 俺はこの場立ち去るべく歩き始める。


「………待って!」


「なんだ?」


「私はどうすれば良い……どうすればライがこんなやり方をしなくて済むようになるの?」


「それは無意味な質問だ、俺はこれまで経験してきた中での最善策を実行したまでだ。マキナ・レクス、お前が例え勇者よりも強く、魔王を倒したとしても俺はこのやり方以外を知らないし変えられない」


 全ては無意味、誰かを助けたとしても、どうせ俺を置き去りにして全て無くなるのだから……

 全ては偽善、自己満足の延長に過ぎない。


 だがこいつが……もしこいつが俺を殺せるようになるのだとしたら…あの狭い隙間の中で復讐心を燃やしていたあの少女が……


「お前に一つだけアドバイスだ、”俺達”を本気で殺したければ手段は問うな、強くなるだけで殺せるほど俺達は甘くない」


「ライ……何を言って……え……違う……まさかそんなはず……だってライは!」


 何かに気づいたマキナを置いて俺は歩き始める


 敵に塩を送るとはまさにこのこと。

 だがあの夢の少女は俺を殺したいと強く願うほど憎んでいた。

 その思いがたった数年で消えるはずはないだろう。

 マキナ・レクス、その復讐心と才能は世界の害悪(俺達)を果たして殺しうるのだろうか。

言い訳はしません!(すびばぜん)

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