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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第3章 赤髪の剣士と魔法使い
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暗闇の先

どこまで闇が広がっていくような通路をランプの灯りが点々と照らしている。

 地面は湿気が溜まっておりジメジメとして中々に気持ちが悪かった。


「………」


 あれだけ喋っていた和也は地下に入ってからは一言も喋っていない。

 私も何か声をかけようとするがこの雰囲気自体が重苦しい。


「……和也?」

「………わかっとるここまで付き合わせたいおいて黙っておくのは無理がある……ただその前に………」

「何です?」


 和也が一呼吸置くとこちらを向く。


「嘘ついて悪かったな」

「?」


 少し落ち込んでも見えるような顔で和也は言った。


「………え?なんで謝るのですか?」


 素直な疑問だった。

 和也が謝る理由が私には到底理解できない。


「わいは嘘をついたんや!それもそれも信頼している仲間に!許してくれとは言わへん!!」

「いやいや!嘘をついたくらいで重いです!」




 そういえば和也はこんな人だった。

 いつだって自分に真っ直ぐで召喚されて右も左もわからない中、和也は私達を引っ張ってくれた。


「はぁ〜〜嘘なんて誰でも言いますです!私だって隠し事なんて沢山あるです……」

「でもわいは信じてくれた人に……」

「もぉ!だから嘘ぐらいで大袈裟ですって!それに私の信頼はその程度じゃ裏切れないです!舐めないでください!!」


 この和也の性格は少しどうにかせねばならないのかもしれない。

 たった半年の仲だ。

 でももうお互いの良いところも悪いところ充分わかるほど会話をし冒険をしてきた。

 だから私と杏は和也の事を信じている。


「………そうかそう……なんや……そうだな!安心せい!わいはこれからも日菜はんと杏はんを全力で守る!」

「だから大袈裟な………」


 嘘をついたことへの罪悪感もここまで来ると本当にどうかと思う。

 でもそれが和也のいいところ。


「おっとめっちゃ話しが逸れたな!でなんやっけ?」

「ここに来た理由です!1番大事な所忘れてどうするんですぅ!」

「そうやったそうやった、すまんすまん」


 和也のいつもの軽口が戻る。


「……元の世界への帰還方法を探しに来たんや」


 その口からは思いもよらない言葉が出てきた。


「ふえ?さっき帰りたくない、この世界を楽しんでいるって言っていたようなです……」


 私も別に帰ることを望んでいる訳でもない。

 和也も杏も望んでいない。

 この状況で探す意味がない……


「……確かにこの世界はおもろいし杏はんと日菜はんと出会えたことは幸せや、でもだからこそ……逃げ道は用意しとかねばならんのや」


 和也の真剣な横顔には確固たる信念があるように思えた。

 その根幹ならあるのは多分……


「……もしかして自分が死んだ時用に……ですか?」

「……正解や」


 その信念の先にあるのは私達のこと、和也が今日まで積み上げたきた信頼と信用が物語っている。


「どうして……自分が死ぬなんて言うんですか?私達が先に死ぬこともありえるんですよ………」

「わいは自分のギフトの能力をよく理解している、日菜はんにはわかるはずや、わいは攻撃戦闘特化、対して杏はんも日菜はんもどちらかと言えば後方より、つまり……わいが殺された場合逃げる手段しか取れないやろ?その時の先の一つとして考えたんや、まぁ杏はんは、元の身体能力のせいで戦えはするけどな、あの怪力女は流石や!」


 がっはっはと笑う和也。

 そんな能天気な和也と違って私は笑う気にはなれなかった。

 怒るにも怒れない。

 これは事実、和也がメインとして活躍しているパーティーを組んでいる今、和也が1番死ぬ確率が高い。

 でもだからと言って……自分が死んでからのことをもう考えるなんて……


「おっと……それが半分の理由、もう一つは…………まぁおいおい言うわ、大した理由じゃあないんし」


 今は説明する時じゃない、そう言っているようにも聞こえる。

 でも聞き返すほどの気分ではなかった。


 私は……この3人の中で何ができる?

 死ぬことなんて考えてなかった。

 きっとこれからずっと3人で冒険していけるだろうとそう思っていた。

 でもそんな甘い話はない。

 常に死と隣合わせの冒険。

 私だけだ……ただチートで無双して楽して暮らそうなんて馬鹿みたいなことを考えていたのは……。

 ちゃんと和也は”その辺”もしっかり理解している。


「………っとついたななんやもうついたのか」


 目の前にはただ一つ片扉。

 見ただけでは機密情報が詰まっているものには見えない。


「じゃあ早速……でも待ってこの扉……」


 ドアノブをガチャガチャと鳴らす。

 しかし当然の如く扉には鍵がかかっている……それに……


「扉の前に魔法陣、鍵と陣の二重ロックですーーー」


 紫色に光る陣は近づいても反応しない。

 扉を開けた時に反応するタイプ?

 まぁどっちみち…


「ここまでですぅーさぁ和也!早く帰ろ………」

「まてや今開ける」


 後ろから歩いてきた和也が袖から取り出したのはなんの変哲もないただ鉄鍵。


「ほい!」


 そう言って扉の鍵穴に差し込む。


「いやいやまさかそんなわけ……」

「開いたで」

「うそぉぉぉ!!」


 鍵穴が周り始めガチャリと音がする。

 その瞬間に魔法陣も光を無くし薄らと消えていってしまった。


「和也……どこでその鍵を……」

「ちょっと職権を濫用しただけや気にすんな」


 確かに無策でここまでくるわけがないがまさかここまで準備をしているとは思いもよらなかった。


「何をボッーとしてるんや行くで」

「ちょっ!ちょっとまっ!」


 緊張感などまるでない和也はそのままの勢いで扉をドンッと開けた。

 そして手に持っていたランタンの火をつける。

 その先に照らされた物は……


「なんや聞いてた話しと大体同じや」


 和也の視線の先にある物は薄暗く、埃塗れで物置き同然に散らかった小部屋だった。


投稿がめっちゃ開いてしまいました!誠に誠に申し訳ありません!!

次の投稿は水曜を予定しています!

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