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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第3章 赤髪の剣士と魔法使い
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長くも新しい道

俺とマキナが指定場所に行くとそこには多くの人がいた。

家族連れや御者、俺たちの他の冒険者も集まっていた。

それに応じて馬車の数も10台ぐらいの大掛かりになっている。


「あそこが受付じゃない?」


マキナが指をさしたのは冒険者の人だかりの中に紙とペンを持った中年の男がいるところだった。


「すみません、護衛任務の受付ってここであってますか?」

「あーそうだ冒険者プレートの提示と名前を言ってくれ」


マキナは男の言った通り首元から冒険者プレートを取り出すと見せるように渡す。


「マキナ・レクスだ、ランクは……」

「Aランク!凄いな!!」


男が子供のようにはしゃぎながらプレートを見る。

冒険者ランクは初心者はE〜D、一般でC〜B、熟練になるとAランクとこのような認識になる。

ついで言うと国家直属冒険者になるとSランクという称号がもらえるのだがよっぽどのことがない限りならないので事実上の最高はAランク。

今回の依頼は冒険者ランクでの規定がないのでAランクの冒険者が集まりにくい、なのでAランクの冒険者が来てくれたことがよっぽど嬉しかったのだろう。


「で、次だ、そこのあんたは?」


男は俺を鋭い目線で見る。

同じようにして冒険者プレートを取り出し男に渡した。


「ライ・グランディール…」

「チッ……Eランクかよ」


露骨に嫌な顔をされた。

まぁ冒険者ランクでこういう顔をされるのはこれが初めてじゃないのでわかっていた。

Eランクの冒険者が嫌ならDランク以上規定にしとけよと思うがおそらく今回は人数が必要だったのだろう。


「まぁいい、これで全員か」


男から蔑みの視線を浴びながらプレートを手渡されるとすぐさま首にかけ胸元にしまった。


「おし、今回の任務の説明をする、依頼を受けた奴らは集まれ!」


男の大声に周りに散り散りになっていた冒険者達が一斉に集まり始めた。

男は周りを冒険者が囲むのを待つと喋り始める。


「じゃあ任務の説明をする、知ってると思うが今回の任務は帝都までの護衛、つまりこの数の馬車を守ることだ、迂回ルートではなく帝都までの最短ルート、ガーライル川を抜け、山脈の道を辿る」


男の強気な声に黙って耳を傾ける冒険者達。

この町から帝都までは迂回ルートで行くとそれなりの時間はかかる。

今回俺達が行く最短ルートでは魔物が多い上に険しい道のりだがその分日にちは減らせるっていうことだ。


「食料は配給制、途中の魔物が落とした素材はそいつを倒した冒険者の物とする、ここまでで質問はあるか?」


男は冒険者達は各々が顔を見合わせないことを確認した。


「ないようだな、では出発する各々の位置につけ」


その言葉を聞いた途端ガヤガヤと騒ぎ始め馬車のところに行く冒険者達、俺もその例にもれず馬車のところに行こうとすると


「じゃあ行こうか!」


テンションが異様に高いマキナが俺の肩を掴む


あれ?こいつまさか……



「俺は後ろの馬車の護衛するからお前は…」

「ね?」


あーなるほどそういうことか……


つまりあれだな、俺は任務の間ずっとこいつに付き纏われるということか。


「…………」

「ね?」


変な縁なんて作っておくんじゃなかった。


         *


しばらく道なりに進んでいくと大きな川と石で作られた橋が見えてきた。

このあたりから最短ルートとして山脈側をいく

馬車が列を組み俺達冒険者はその隣を歩く。

馬車の中には子供を連れた家族がいたりなど今回の任務は荷物運びだけではないようだ。

とりあえず早めに休憩ポイントまで行きたいところだが……


「でさでさ、最近いい剣を見つけてさ!レイピアと迷ってるんだよね!」


マキナは任務開始から元気に永遠と喋っている。

 いいファッションの店やら、ゴブリン退治の話やらしまいには剣の話までずっとだ。


「……そうか」

「でさでさ!やっぱり剣は鉄じゃなくてもっといい素材、オリハルコンで作りたいよね?でもこれが高くってさぁー」

「……そうだな」

「だからねだいぶ妥協してミスリルにしたの!そしたら今度はワイバーンのせいでミスリルの値段が高くなってて……」

「……そう……だな……」


俺が興味なさげに返してもお構いなしに話し続ける。

体力云々よりも正直こっちの方がきつい…


「あ……あぁそういえばお前なんであの時助けてくれたんだ?」


無理矢理話をねじ込みマキナの言葉を遮る。


「え?あーその話ね、なんか見てて危なかっしかったから…つい……」


少し頬を赤らめながらマキナは言った。


「それについては助かった」

「というかあの後を見せられたら私が助ける必要性あった?って思ったんだけどね…」


俺があの冒険者達をふっとばした時のことか

まぁ面倒ごとに巻き込まれたくない一心だったんが人の善意は素直に受け取ろう。


「あの時隣にいた女の子は一緒じゃないの?」

「ん?あーあいつか」


そういえばそうだったな。

俺はあいつを帝都に迎えに行くついでにこの任務を受けたんだった。


「色々あって公爵令嬢と王子と一緒に飛行船で先に帝都に行ってる」

「……はい?」


嘘でしょ?と言われそうな勢いの返し。


「俺も何がなんだがさっぱりだが色々あったんだ」

「……だからこの前飛行船が止まっていたんだ…珍しいと思った……」


説明するのが面倒なくらい本当に色々あった。

そうこの状況説明から分かる通り俺はセレンとリリア、メイヤに置いていかれた。


人としての履歴や家族構成を言えなかったことから俺は『お前みたいな怪しい奴を乗せるわけにはいかん!』と兵士に怒られ王族の飛行船に乗せてもらえなかった。

結果セレンを連れてそのまま去っていったのである。

飛行船を動かすのには莫大な燃料と大量の物資が必要となり持っている国は富を蓄えていると思わせるほど大変貴重だ。

だから俺みたいに怪しい奴は乗れなかった。


なんでセレンが飛行船に乗れたのか理由はわからんが少しだけ悔しい。


今回の婚約破棄ならびにパーティの侵入者としての弁明と証言する必要がある。

なのでその仕返しとしてセレンに面倒ごとを押し付け俺はゆっくり帝都に向かおうとしていた


「……まぁいいか」


セレンが怒って後で3日分ぐらい飯を奢らせてきそうだがあいつは多分帝都で高いもん食ってんだろうな。

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