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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第3章 赤髪の剣士と魔法使い
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小さな命が見たもの

「泣かないでこの中で待ってるのよ…きっと誰かが助けに来てくれるから…」

「おかあさん……?」


今にも泣きそうな笑顔で私をクローゼットの中に閉じ込める母。

この中は薄暗く少しだけひんやりしている。

今思えばクローゼットの中の不思議な匂いは香水だったのかもしれない。

隙間が少しだけ開いていたので覗くと父親らしき人物と母親が何やら深刻そうな顔で話していた。


「あなた……」

「あぁ、あとは祈るだけだ…もう時間もない」


父親の手には農業用のクワが、母親の手にはナイフが握られていた。

ドアはテーブルやソファなどで塞がれていて何かから家を守っているようだった。

よく耳を澄ますと外からは悲鳴のようなものが家の外から聞こえる。

すると……


「くるぞ!!」


父の険しい声と共にドアが大きく吹き飛ばされる。


「…………対象を発見直ちに排除を開始する」

「このくそがぁぁぁぁぁぁ!!」


大きく破損したドアから入ってきた何者かに立ち向かって行く父、しかし力の差は歴然であり手に持った鎌で切り刻まれ肉塊となって行った

恐怖で腰が抜けそうになりながらも手に持ったナイフで母親も立ち向かって行くが同じように切り刻まれる。


「……ひっ!」


私は手で口を押さえ必死に声を押し殺した。

母だった物は私が入っているクローゼットを塞ぐように倒れ込む。


「………21人目の処理を確認」


何者かは無機質な声と共に父の死体を踏み潰しながら家の中を歩く。

ギーギーと鎌を床に引きずらせながら家の中をぐるっとすると


「おっすおっすウリエルちゃん、この家は終わった?」


バッサバッサとする羽音の後に壊れたドアが入ってきたのは何者かと似たような羽を生やした男だった。


「……この住居に他の生物はいない模様」

「おっけーじゃあ次行くか、バエル様も待っていることだし」

「………了解」


数秒の会話をかわすと2人は去って行った。

これは私が全てクローゼットの隙間から見た記憶。


なんで私の親は殺されたの?

どうして私だけ生きたの?


この頃から私は己の憎悪を糧に努力した。

私の思いはただ一つ。


     絶対に奴らを許さない



気づいた時には朝だった。

いつもは感じないはずの疲れのせいで中々ベッドから出る気力が湧かない。


「……めんどくせぇ夢見せんじゃねぇよ」


この世界の誰か記憶、いつからかはわからないが見てしまうようになった。



          *


朝の港町は弓や剣を持った冒険者達で賑わう。

冒険に向かって行くものとは逆の方向を歩んで行き俺はいつも通りの建物を目指す。


「…………」


そういえば今日もあいつはいないんだったな。

流石にもうそろそろあいつの所に行かないとまずいか……

見慣れた冒険者協会と書かれた看板の下の扉を開け中に入って行った。

朝の1番忙しい時間帯はとっくに過ぎておりそれでもまだ人は多い。

入ってすぐの看板のところに依頼の紙が沢山貼ってあるが今日の用事はそれではない。


「帝都までの護衛依頼を受けた者だ」

「はい、10時からの護衛任務ですね、少々お待ちください」


俺が冒険者プレートを手渡すと受付嬢はそれを持ってカウンター奥に行った。

しばらくすると一枚の紙を持って帰ってくる。


「ライ・グランディール様でお間違えないですか?」

「あぁ」

「ここにサインをお願いします」


受付嬢から羽ペンと書類を渡されると内容に一瞬だけ目を通しサインをする。


「では40分後までに北門にお集まりください、任務の詳しい説明はそこであると思います」


受付嬢から冒険者プレートを渡されると俺は協会の建物を出て行く。


  今回は面倒ごとがなければいいが……



「なんと!君もこの依頼を受けていたのか!」


はい、早速面倒ごとです。

今俺の目の前にはいつしかの赤髪の冒険者がいた。

腰にはレイピアを構え、俺より少しだけ低いくて細身の体だった。

服装は髪色と同じようなリボンを胸元につけていた。


「……人違いだ」


俺は赤髪の前から去ろうと歩き始めるが並行してついてくる。


「こんな服の人なんて私一人しか知らないぞ?」


なんで一回しか会ってないのにこんなに馴れ馴れしいんだこいつは


「さっきそこで同じような服の人を見かけたぞ」


咄嗟に嘘をついた。

今回の護衛任務は普通の任務より少し長い、できるだけ人との関わり合いは避けたい。


「へぇー一度君を助けたのにそんな態度でいいのかなぁー?」


俺はその言葉にピタリと動き止めてしまった。

人差し指を口に当てぶっきらぼうに話す赤髪。


「チッ……」

「あーやっとこっち向いた!」


赤髪は無邪気な笑顔を俺に見せる。


「私はマキナ・レクスだ君は?」


右手を伸ばしながら語りかけてくる。


「……ライ・グランディール」


奴のして欲しいことはすぐにわかったがあえて無視しているとさらに笑顔で右手を前に出す。


「………はぁー」


避けられないと思い俺も徐に左手を前に出すと赤髪の女はすぐさま強く掴み固く握手をする。


「よろしく!」


なんで俺の周りには変な奴しか寄ってこないのか理解できなかった。

新章開幕!

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