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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
間章 見る者で世界は変わる
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とある2人

青空の下にうっすらと浮かぶ雲、昼下がりの王国、晃が闘技場で試合を行なっている中とある2人はレンガ作りのカフェの中に入っていった。


「だぁああーーーつまんない!」


テーブルでため息と同時に声を上げたのは美咲だった。


「うるさい、少しは静かにしたら?」


皮作りの本を片手にページをめくるのは八戸

2人は晃同様王国に呼ばれた勇者、いわゆる天才者だった。

美咲はテーブルに顔をへばり付けジト目で八戸を睨む。


「だってだってぇー晃、最近全然構ってくれないんだもん」


同じ城に住んでいるため、ご飯の時や訓練の時は会う、しかし今の晃は自由時間や休みの日もずっと鍛錬を続けているため、一緒に遊びに行ったりができない、それに……


「晃……最近なんか怖い……」


美咲は寂しそうな目をしながら窓の外を見る。

目の色が違う、今までの明るい好青年だった彼はどこへ行ったのだろうか……

何かを狩るような、獲物を狙っているようなそんな目をしていた私と美咲は感じでいた。


「……晃を変えた物があるとすればそれは私達の力不足、異世界を甘く見すぎていた」


異世界もののラノベのように私達は無双できる、心のどこかでは思っていたのかもしれない。

でも現実は違う。

ギフトというものがあるにしても勝てない敵がいてそれに対抗するため努力を積み重ねなければならない。


「………異世界ってもっと楽しいものだと思っていたわ……」

「ほんとにねぇーーーー」


他の転生者、勇者は今何をしているかわからない、私達見たいに強敵を相手に戸惑っているかのか、それとも無双してチヤホヤされているのか……


「ねぇー八戸、私達この世界に来てよかった思う?」


美咲の質問に八戸は数秒頭を悩ませ読んでいた本を閉じる。


「んーー私は正直、あの勉強漬けの日々から脱出できるならどこでもいいわ」


無難な答えだ。

受験戦争や就職氷河期などもうすぐ考えないといけないことが山ほどあった。

しかしそれをすべて投げ出してここに来れるなら私はそれでいい。


すると美咲はゆっくり口を開いた。


「私はね、3人で行けるならどこでもいい、私達がもといた世界でも異世界でも八戸と晃がいるならそこが私の本当の居場所……確かに家族のことも心配だけど……もし2人が異世界に行くって言っててたらなら私はついて行ってく」


美咲の気持ちは充分に理解できる。

あの人が死んでから鬱気味だった私を2人は救ってくれた。

2人がいない学校に私の居場所なんてないのはわかっている。

2人がついて行くって言ったらきっと私もついて行ったと思う。


「だからね、晃が何か悩みを抱えているなら私は全力で助けたい、多分その悩みの原因は私達だけど……」


美咲はわかっていた。

晃が何故こんな風になっていたか。

私達を守れなかった自分を悔やみ強くなろうとしている。

2度目はない、そう思わせることによって自分を追い込んでいることも


「……ねぇ、私達で晃にプレゼントしない?」

「ふぇ?」


私のいきなりの提案に変な声を上げる美咲。


「……ほら、晃が使っていた剣凄くボロボロだったでしょ?だから冒険者として貯めたお金を使って剣を買って上げるのはどうかなって…」

「…………」


美咲は首を傾げてこちらを見ていた。


や、やっぱり変だったか……


いつもの私なら絶対にしない提案、でも今の晃と美咲を見て自分も何かしなくちゃいけないとそう考えた。


「八戸……どうした?頭でも打った?」

「……変だよね……ごめんねなんか」


やっぱり失敗だったのか……

なんかおかしな薬でも飲んだ?

どうりで私最近寝るのが早くなってるんだ……


「………八戸」

「は、はい」


何故か敬語になってしまった……

そりゃそうよね、大事に貯めたお金を私の一存で使えるわけ……


「凄くいい!グッチョブだよーー!!」


美咲はパッと明るくなり私の右手を包むように掴んだ。


「いいね、そうねそうしよう!剣なら晃も喜ぶだろうしそれを口実に3人で買い物もできる、もしかして八戸……天才?」

「は……はぁ……」


美咲は何故かテンションが上がると知能が下がることがある。

というか毎回、こういうところに助けてもらったことは沢山あるのでなんとも言えないが……


「よーし決まり!!じゃあ帰ったら早速買い物ルートの開拓だぁ!」


美咲は両手をまっすぐあげ、目を輝かせている

他の客からの視線が痛い……


「……とりあえず、落ちついて何か注文しよ」


私は美咲を落ち着かせるためにメニュー表を開き渡そうとした……その時


………あれ?私ってなんで異世界語が読めるんだ?


メニュー表に書いてある文字に違和感を覚える

異世界にきて何回も見た物、しかし私は読めるはずもないのに何故が最初から読めていた。


「……どうしたの八戸?」


美咲が顔をキョトンとし私を見るがそんなことに気がつかないほど悪寒が全身を走る。


……いつ、どこで覚えた?

普通の異世界ものなら転生特典として翻訳もプレンゼントってなるはず……

でも私達にはなんの説明もなく、しかも自然とそれを受け入れていた……


プレゼント?……あれ?そういえばギフトって送り物っていう意味だよね?


………じゃあ誰からの……


「やーーーえーー!!」

「わ!」


美咲がいつのまにか私の隣に来て耳元で叫んだ


「こ、鼓膜が破れるかと思ったわ!!」

「だってー八戸が反応しないんだもん」

「もう少しマシな呼び方あるでしょ!」

「えへへ、そんなことどうでもいいから早く注文しちゃおうよ!」

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