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「メイヤ・スーザン……あなたの本当の名前を教えてくれる?」
少しだけ涙が収まったメイヤのもとにセレンが近づいて話しかける。
メイヤのボロボロだった体はすでにセレンの回復魔法で完治していた。
「………カマエル……家族名はありません、父も母も私が物心ついたころにはすでにいませんでした」
メイヤは袖で涙を拭いながら言った。
「どうして自分の主人……それもリリアを殺そうとしたの?」
「………私達天使は皆様が言うところの天の災害でしたね……を筆頭にありと世界の救済を目的とした活動をしています」
恐らくこの活動というのは街や村を襲撃し破壊すること……そしてその大きな目的はそこに住んでいる人達の命を刈り取る。
悪趣味にも程があるな
「……私は数十年前に帝国の姫になるであろうお嬢様の監視をバエル様から任されました、それからはずっとメイドとしてその任務を真っ当し続けたある日……私の仲間の一人からとある命令を受けましたその内容とは……」
「リリア・ファラーバルトの排除……か」
考え事をしながらメイヤの言葉に口を挟んだ。
「……はい、何故このタイミングだったのか…
何故お嬢様の命を欲しがっているのか……わかりません、だから私はその命令を聞いた時にバエル様に直訴しました……しかし、同じように命令違反をした天使達が……首を吊って死んでいるのを見て……怖くて………」
メイヤが恐怖に支配されたように顔を覆い隠す。
それを見ていたリリアが背中を揺すりながら慰めていた。
「セレン、ここ最近で天使達が町や村を襲ったという情報は使い魔が持ってきていたか?」
「ないわ、それどころか各国は今、天の災害討伐よりも魔の災害の方に勢力を削いでいるもの」
セレンの反応を見るかぎるメイヤの言っていることが真実であることはわかっている。
しかし何かが引っ掛かる。
命令違反をした天使達がなぜ大量に出たか…それは何か大きなことを起こそうとしている前兆に聞こえてしまう
「……何か考えがあるの?」
「………いや少し引っかかっただけだ、今は考えても仕方がない」
そう言って考えを切り上げた。
今の問題はそれじゃない、まずは目の前のことを解決しなければならない。
「……メイヤ、お前はリリアを今も害をなそうと考えているのか」
俺の言葉にメイヤはリリアの方をゆっくりと向き、互いを見つめ合っていた。
リリアは笑顔でそれを返すと覚悟を決まったようにメイヤは俺の方を向く。
「……私は今まで迷っていました。天の災害に逆らって殺されるのがいいかお嬢様を殺して自分だけ生き残るのがいいのか……遅すぎる判断だとは思っています、でも……もしも私がもう一度だけ許されるのだとしたら……」
メイヤはリリアの前にひざまづきまっすぐと見た。
「もう一度、仕えさせてください……どんな命令にでも命に変えてでも実行してみせます」
その表情を見てのかリリアは立ち上がりメイヤの手を取り満面の笑顔を見せた。
「ただ一緒にいてくれるだけでもいいんです……私の1番大切な人なのですから」
「……絶対に……絶対に必ず守り抜きます」
それはメイヤが天の災害からの決別だった。
ここで言うのもなんだが普通だったら信じないだろう…
しかし今回はセレンが嘘を見破れるおかげでその言葉が真の意味で確実な物となった。
反応を見るに嘘はついていない。
「……最後に一つだけいいか?」
「はい、なんでしょうか」
「リリアの婚約破棄もお前が仕組んだ物か?」
「いいえ、それに関しては全くの予想外でした、お二人が空から落ちてくることも含めてです」
てっきり俺はこれもメイヤが仕組んでいたものという風に思っていた。
となるとやはり1番可能性が高いのが……まて
いやそうなるとおかしい、何故ならメイヤ一人で実行しているからここまで計画が狂ったたのだと考えるのが妥当であったからである。
「………メイヤの裏切りをある程度予想していた……サブプランとして仕組んだのもが婚約破棄だとすると……」
おそらく新しい王子の婚約者も天の災害の一人だと予想がつけられる。
つまりここから見えてくるが
「………誘導」
「え?」
メイヤが驚きのあまり声に出す。
「なぁ……お前以外にこの町に天使がいるのか?」
「……いないと思います。少なくとも私が単独の実行犯としての命令でした……」
こいつは多分だが本当の作戦のことを知らされていない。
その本当の作戦の正体はわからないが、リリア殺害や婚約破棄はこの町に兵力を集めさせるための罠。
だがそうなるとなぜこんな通り回りなことをする?
少人数の天使達でこの町を襲撃すれば1番手っ取り早いはず。
「………面倒なことにならなければいいが」
第2章はここで一旦完結とします。
次は間章では色々なキャラの視点をお楽しみいただければと思います!




