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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第2章 令嬢と罪人の結末
34/57

いずれ

セレンが部屋を出ていき部屋に残ったのはリリアという少女と俺。

俺が部屋を出ていこうとすると何故か止められた。

普通はこういう怪しい男には近づきたくないのが人の性だと思うんだが……


「すみません……突然止めちゃって……」


リリアはベッドに座りながら言う。

目元は昨日と変わらず腫れている様子だった。


「問題はない、やるべきことはさっき終わらせてきたからな…時間はある」


そう言って隣にあった椅子を寄せて俺は座った


なんかこういうこと前にもあったよな

確か王国の勇者の時の……


リリアは顔を俯きながら布団で顔を隠す。


「私……今一人になるのが怖いんです…また誰かに裏切られるんじゃないかって……こんな自分が駄目なのはわかっています……でも…どうしても何かを信じることができなくて……」


リリアの言葉に重みを感じた。

確かに一理ある、こいつは王子に裏切られ身内にも苦痛を強いられている。

俺とセレンがリリアを裏切らない補償なんてどこにもない。

だから即答はしなかった。

数秒間を置き口を開く。


「……信じなくていいだろ」

「え?」


リリアの突然の言葉に驚き目を見開く。


「別に信じる必要性はない、疑い続ける方がよっぽど賢い生き方だ。そもそも信じるという行為は疑うことから始まる、確定している事象は信じる必要すらない。だから信じるというのは無駄なことだ…」


俺は淡々と意見を述べた。

疑うという行為はこの世界で生きていくためには必要なことだ。

自らが盲信しその先にある確定事項を見逃す愚かな行為は過去の自分が経験し恥じた物だ。


「で……でも信じるからこそその先に……」

「お前はメイヤというメイドが暴行を訴え告発したのをどう思っている?」

「メイヤがそんなことをするはずがない!」


弱気だったリリアが慌てて顔を上げる。


「だろ?お前をそこまでさせるそれは今までそのメイドと暮らしてきた時間の積み重ねだ、盲信じゃないだろ」


俺はリリアの目を見て言った。

悩むのは無駄だといわんばかりに伝える。


「まぁ俺はお前とメイドの深い関係を知らないからな、あとは自分で考えて見るといい」

「………言い方……ずるいです……」


リリアの顔に笑みが浮かんだ。

今までの何かが吹っ切れたそんな感じだった。

女の励まし方など俺は知らん。

ただ自分が思ったことを述べただなんだが……

本当にこんなのでよかったのか疑問に思う。


「そうか?まぁ俺にはこんなことしか言えんがな」

「………ありがとうございました……おかげで色々と吹っ切れました」


リリアはありったけの笑顔を見せた。

明るく、それでいてまっすぐなそんな表情だった。


「優しいんですね……」

「冗談俺はそんなやつじゃない、お前が思っている以上に汚れている」


俺は手を組みながらすぐさま否定したがリリアは首を振った。


「そうとは思いませんよ……ライさんとセレンさんは優しい人です……」

「………わからんな」


俺はリリアの気持ちが理解できない。

単純な言葉をかけただけでどうしてここまで人を信用できるのか……


「すみません……質問いいですか?」

「かまわん」

「どうしてライさんとセレンさんは一緒にいるんでしょうか……不思議な組み合わせだなって思って………」


リリアは自分で自分の手を触り顔を下に向ける


「利害の一致による旅だ、あいつと俺の目的は真逆に位置するが目指すところは変わらん、最もあいつが本当にその目的かは定かじゃないが……」

「そ、そうなんですね……兄妹とか親戚とかではないですか?」

「………は?」


その言葉に耳を疑った。


「その……雰囲気似てますから……」

「服の色のことか?」

「い、いえ……違います……言葉に言い表せないようなそんな感覚……ご、ごめんなさい!いい言葉が思いつきません!」


リリアが勢いよく手を合わせ誤ってきた。


「あーいや悪いとは思ってないが……やっぱりわからんな」

「そ、そう……ですか……」


どこに似ている要素があるというのか……

強いて言えば服の色が黒だということだが浅はかすぎる……


「まぁいい……俺は先に下に行ってるぞ」

「……わかりました、ではまた後ほど」


俺は徐に立ち上がると部屋の扉を開けリリアを残し出ていった。


「本当半分嘘半分って言ったところね」


出てすぐのところには壁に縋り俺の方を見るセレンがいた。


「盗み聞きが趣味とは、お前ならそうするとは思ったけどな」


「真実を伝えなくていいの?」

「なんのことだ」

「わからないふりはよくないわよ、一晩中ずっと調べてたでしょ……」


あぁ……こいつにはお見通しって言うわけか


「伝えるかどうかはお前に任せる、俺は俺のやるべきことをやるだけだ」

「……そ」


セレンはドアノブに手をかけ動きを止める。


「気をつけてね」


その言葉を意味を理解できるのは俺とセレンだけだった。

最初から最後まで事情がわかっているならこいつにリリアを任せて正解だ。


「俺を誰だと思っている、普通の人間に負けるはずがない」


そう言うとセレンは一瞬だけ俺の方を向きノックして部屋の中に入っていった。


………これから起こることはリリアにとってどれだけ苦悩を強いられるかわからない。

バリアス王子とか婚約破棄とか正直今はそれどころの話しじゃない……この物語の罪人とは果たして誰のことを指すのだろうか

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