傷
セレンの使い魔にこの時間帯で空いてる宿を見つけてもらい受付で部屋の鍵を渡された。
俺がリリアを背負いながらだったが受付の人に
凄い形相で睨まれた。
この時間帯の客、しかも人を背負いながら入ってきたら余計に怪しまれるだろう。
リリアにはフード付きのコートを着せていたので彼女だということはバレていないはずなんだが……
「ふはーやっぱりベットはふわふわね」
「やっと寝れる…とりあえずリリアはここのベットに寝かせるぞ」
俺はそう言って背負っているリリアをベッドの上に寝かせた。
俺達が普通の声で話していても目が覚める気配がないということはやはりよほど疲れていたのだろうか。
そんなことを考えているとセレンがベッドに座りながら口を開く。
「とりあえずリリアを着替えさせるから、ついでに私も着替えるけど」
「わかった、俺は部屋から出ていく」
そう言ってドアノブに手をかけた。
「あ、一つ言い忘れてたことが……いや実際に見てもらった方が早いか」
「一体なんのこと?」
セレンは寝ているリリア近づきながら言った。
「とりあえずそいつを着替えさせろ服ならタンスに用意されているはすだ」
俺は2人がいる部屋を出てすぐのところの廊下で待つことにした。
セレンはまだ気づいていないようだったが1番最初にリリアに出会った時、希望が消え失せた顔をしていたがそれとは別に何かに恐怖している目をしていた。
婚約破棄を宣告されてたから?メイドが行方不明だから?それも一つだろうが多分あいつが恐怖しているのはもっと他の………
*
「えーと確かここにあるって受付の人が言ってたような……」
セレンがタンスを開け大人用の服を取り出す。
灰色一色のその服は背が小さいセレンにとってはまだまだサイズは合ってないらしい。
「私ってなんで背が一向に伸びないのかしら……」
セレンは館で数百年を過ごしその間外部の情報は使い魔だよりだった。
寿命が普通の人より長いのは魔女であるためなのはわかっている。
しかし他の魔女はしっかりと大人の姿をしているのに対しどうして自分だけ子供の姿なのだろうか……
「まったく……いつの時代も不公平なものね…」
独り言を呟きながらセレンは綺麗に畳んである服を両手で持ちリリアが寝ているベッドまで運ぶ。
「…………メイヤ……ご……めん……なさい」
ベッドにはさっきまで落ち着いた表情とは違い何かにうなされて寝ているリリアがいた。
「メイヤ……ね………」
*
少し時間がたったあと部屋の扉がゆっくりと開き間からセレンが顔を出す。
「入ってきていいわよ」
寝衣姿のセレンが小さいな声で言った。
俺は部屋に入りベッドに座る。
リリアもセレンと同じような服を着ていた。
セレンは目の前に立ちあからさまに心配する表情で俺を見る。
「少し見ただけでわかったわ……いつから気づいていたの?」
「橋の下で出会った時からだ、そういう目をしていた」
適当に言っているのではなく実際にそうだった
俺が今まで見てきた人間の中でも特に何かに恐怖し助けを求めるような目をしていたのだ。
「背中の傷痕……鞭で叩かれたような物があったわ……あざも新しいものから古いものまで」
「やはりな」
セレンの落ち込んだ言葉を口に出す。
「片付ける問題は増えたな、古傷があるなら恐らく身内の仕業……親にも助けは求めれない」
「どうして……彼女は時期王女じゃないの?」
「さぁな、理解できないしするつもりもない」
ここでなぜリリアが泊まる場所がなく彷徨っていたのかという理由にも納得がいった。
周りの全てが敵ならそりゃそうだ。
婚約破棄も行き当たりばったりではなく計画ものだと考えるのが妥当であろう。
「また面倒ごとが増えたな……」




