涙
「————っていうわけなんです」
「え、私が結婚式をめちゃくちゃにしたせいじゃなくて?」
金髪の女の子は小首を傾げた。
どうやら私の顔に涙を流した跡があることからそうだと勘違いしたらしい。
「…………すまん、俺の早とちりだった見たいだ」
「ラ〜イ〜?どうして私を先に謝らせるのかなー?」
「一連の流れの原因はお前だろ、それに俺が謝るよりセレンがやった方が許される確率上がると思った」
「ライもあんなところで停止するから悪いんでしょ!」
「許せ、決して先行して謝らせることによって俺は逃げようとした訳ではない」
「……嘘反応出てるんだけど」
「知ってる」
「ふにゃーー!!」
私のその言い争いを見ているだけしかできなかった。
ただ暖かそうなその会話。
お互いを分かりあって、信頼しあっている。
私は……私は……
「うぅ…………うぅ……」
「………」
私は涙が抑えれなかった。
2人の会話を聞いて今までのことを思い出してしまった。
自分の虚しさ、悲しさ何もかも辛かった。
怖かったのだ。
私は膝から崩れ落ちながら泣く。
「大丈夫……大丈夫よ」
「うぅ…………うぅ……ごめん…なさい」
優しい言葉をかけながら少女は私を包みこむように抱きつく。
一体誰に謝っているのだろうか
私は少女の胸の中でずっと泣いた。
「私はあなたが嘘を言っていない事がわかるわ……だから……ね?」
少女がかける言葉はどこか懐かしさを感じさせてくれた。
「私はセレン、あなたの名前は?」
「リリア…リリア・ファルラーバルトです…」
泣きながら親からもらった大切な物を伝えた。
「よろしくねリリア!」
「はい……セレンさん」
私は安心したのか段々と体の力抜け意識が遠のいていった。
私……まだまだ子供みたい……
*
「お前のそういうところは流石としか言いようがないな」
「あら?珍しいじゃない素直に褒めるの、ライもリリアが起きたらちゃんと自己紹介するのよ」
セランはそう言って寝ているリリアを膝に乗せる。
リリアは安心しきった顔をしておりさっきまでの絶望を体現した表情とは一変している。
「ま、別に俺はいいんだがそれよりそいつをどうする?」
「決まってるじゃない助けるのよ!」
「どうやって?」
「うーーーーん………」
下を向き考え込むセレン。
俺達はまだリリアという少女の一連の流れしかわからない。
ここで迂闊に何か物語を進めると返って事態が難化する。
「まぁ、こいつが目覚めてからだろうなそうしないと話しが進まないそれにだ、リリアがいる以上橋の下で野宿はまずいだろ」
「それは大丈夫、今使い魔にこの時間に空いている宿を探してもらっているわ、雨が弱くなったら行きましょ」
セレンはそういうと外を見る。
雨はだんだんと弱くなってきている感じはするがまだまだだろうな。
「……ねぇ私大切なことを聞いていなかった」
「ん?なんだ」
セレンは俺を一点の眼差しで見つめる。
「リリアの件、ライは協力してくれるの?」
俺は一瞬その言葉の意味が理解できなかったがセレンの表情で理解した。
「本当に魔女だなお前…いやお前達は」
「理解してもらえて助かるわ、さぁ返事は?」
俺はこの時のセレンにエキドナの時と同じような空気を感じた。
一言で四方八方を塞ぐ、まるで人の全てを理解しているような、そんな気がしてならない。
「………協力はする、もちろん最初からそのつもりだった……だが」
俺はリリアを見た。
悲しさも不安も寝ている間だけは何も感じないそんな表情だと俺は捉えた。
だから……
「俺は俺のやり方がある、俺に助けを求めるということは俺の行う全ての行動を肯定するということだ、お前にならわかるはずだセレン」
自分には自分のやり方しかできない。
俺が何故偽善者と呼ばれ七災害となったのかそれは自分の行動とやり方が間違っていたからだということは理解している。
でも今更後戻りはできない。
「あなたがやったことは一部書籍として残って現代に伝えられている……獣災害は大勢を助けるために少数を切り捨てる選択をしたわ、でも……ライは真逆…数人を助けるために大勢を犠牲にした」
「そうだ、そのせいであの正義野郎と一度戦うことになったんだが結局最後まで互いを理解するのは不可能だったな」
「……自分のやり方に疑問を持ったからここで私に選択肢を与えたのね」
「あぁそうだ、契約者はリリアかセレンどちらでも構わない、俺に助けを求めるということはそういうことだ」
「…………」
セレンはリリアを膝に乗せたまま俯く。
俺は自分やり方しか知らないし変えるつもりない。
ただもしそのやり方で助けたい人を傷つけるなら修正が必要だ。
「……だが努力はしてみる、期待はするな」




