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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第2章 令嬢と罪人の結末
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俺達が冒険者協会にことの経緯を説明し長い尋問から釈放されるまで数時間あった。

最初は凄い疑われたが俺達は何も知らないしそもそも知るすべがない。

ただ出身地を聞かれた時はどう答えるようかと思ったがなんとか誤魔化し無事釈放されたわけだ。

その間すっかり日が落ち夜も更けていた。

俺が冒険者協会の扉を開け出るとセレンが不機嫌そうに待っていた。

どうやら先に質問攻めは終わっていたらしい。


「おっそーーい!!」


セレンが俺を見つけた途端に頬を膨らます。


「すまん、何時間待った?」

「2時間以上ここで待ったわよ…私はすぐに釈放されたけどどうやらその様子だと疑われまくったらしいわね…」


なるほど、小柄なセレンには人を殺せるはずがないということか。

俺が疑われたのは黒衣のせいか?

途中で別室行きになったが二人とも経歴があやしすぎたから疑われても仕方がない。


「質問に答えるだけだったから無心でやっていたが、明日に王子の結婚式があるからか兵士達の疑いようも凄かったな」

「タイミングがタイミングよね全く…」


運が悪かったとしか言いようがない。

セレンはそれを理解し諦めたような表情をした。


「でもよかった…ライが帰ってこなかったらどうしようかと思ったわ」

「心配かけたのは悪かった飯は奢らせてくれ」

「やったぁぁぁ!」


大きく飛び跳ねるセレン。

ミスリル買ったばかりなのに出費が嵩むな…

するとセレンが動きを止め空を見上げ何か閃いたように俺を見た。


「ねぇ…ご飯は奢らなくていいからやってほしいことがあるの……」

「……………嫌だ」

「まだ何も言ってないじゃない!」

「どうせ面倒ごとだろ」


まぁ空を見た時点で何をお願いするか大体わかったが…


「ねぇ、今から私と散歩しない?」


後ろで腕を組み遠くの方を見つめるセレン。

その方向にはこの町を一望できる丘があった。


「……まぁいいか、お前が頼みそうなことは理解できた」

「話しが早くて助かるわ!」


俺達は夜の町を進んでいく。

屋敷の方からはガヤガヤとした声が多く聞こえ流石王子の誕生日だと思った。



          *


俺達は町を一望できる丘に着いた。

下の方では町の光が多く集まり綺麗な夜景を見せてくれた。


「じゃあ…お願いね」


風が吹く丘でセレンは言う。


「……いいのか?効力は5分間だけだ」

「私が魔力補助すればさらに飛べるわ!さぁ早く早く!」

「はぁー気は乗らないが」


セレンが俺に向かって手を伸ばす。

小さな手を俺の背中に伸ばしガッチリと固定した。

俺はセレンを抱き抱えると足元に魔法陣を展開した。


「………天を舞う(カエルヌ)


俺は一気に空を飛んだ。

高度はどんどんと上がっていく。

数秒ほどで町の半分の景色は見下ろせる高さまできた。


「きゃあああ!気持ちいい!」


セレンが楽しそうに笑う。

そう、セレンがお願いしたかったこととは空中散歩のことだ。

歩いてはないが…

兵士達にバレないギリギリのラインで飛んでいく。

あいにく、俺とセレンは黒がベースの服だ。

町からも目を凝らさないとわからない。

セレンの手が俺の背中周り固く掴んでいる。

お互いに風を全身で浴び走っている馬並みの速度で飛んでいく。


「こんなんでいいのか?」

「私!空を飛ぶのが夢だったの!でも今夢の一つが叶ったわ!」

「喜んでいるようで何より、スピードを上げるぞ舌を噛むなよ」

「わーい!」


さらに速度を上げ町を駆け巡る。

さすが帝国第二の都なだけあって流石に広い、

5分では回りきれそうにないな。


「ライーーー!最高ねーー!」

「ふん」


風で髪が乱れてもお構いなしのセレン。

俺とセレンはさらに速度を上げ町を駆け巡る。


「ひゃああああ!!」


こいつ子供みたいにはしゃぐな……

これで喜んでくれるなら安いもんだが

俺は飛行をやめ空中で立ち止まる。


「…………」


俺はそのあまりの絶景に言葉を失った。


「ここからしか見れない景色最高でしょ」

「あぁ……こういうことか……」

「……ライ?」


丘の上からじゃ感じ取れなかった今自分たちが光の中心にいるのだと思うと俺達はまるで町中の光から祝福されているような感覚になった


「ありがとうセレン…」

「…………… (かっこつけないでよ)

「なんか言ったか?」

「なーでもない!ほら早く目指すはあの豪華な屋敷!いくわよ!」


俺はさっきよりも少しだけ遅いスピードで飛んでいく。

俺の勘違いかはわからないがセレンの顔が少しだけ赤くなっていたように感じた。

その後数分間は町を飛び回った。

そして俺はあることに気づく。


「なぁ…セレンそろそ飛行魔法がキレそうだ、帰りの分だけで構わん魔力供給をしてくれ」

「わかったわ、少し待ってね!」


セレンが魔法陣を2つ展開するそして俺の方に向けると


「あ、あれ?」

「どうしたセレン?」


魔法陣が俺から弾かれる。

セレン何か焦りもう一度魔法陣を展開するが再び弾かれた。


「………おかしい、なんで魔力補助が効かないの!」


嫌な予感がする。

これ以上ここから動くとすぐにでも空中浮遊が切れそうだ。


「ねぇ……もしかしてライの空中浮遊魔法って冠位魔法?」

「……?そうだが」


するとセレンは手を合わせ顔を上げる。


「……ごめん!冠位魔法に魔力補助はできないの!」

「おいお前…まさか」


その時俺の魔法が切れた。

俺達は体逆さに大きく落下していく。


「きゃああああ!!」


さっきの喜びの声とは真逆のような悲鳴を上げるセレン。


「クソッ!」


俺はセレンを掴み体によせ守るように全体で衝撃に備える。


導きの門(ゲート)!」


俺は異空間の横穴を開き中なら右手を突っ込む

そして一枚の皮でできた巻物を取り出すと


「スクロール!プロテクト」


俺が短い詠唱をこなすと巻物は燃えて消えていった。

そして


「衝撃に備えろ!」

「きゃああああ」


俺達は強い衝撃とともに大きな建物に落下していった。



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