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死にたい男と生きたい少女  作者: 島国に囚われしパンダ
第2章 令嬢と罪人の結末
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疑問

草木生い茂る辺りが薄暗めの森。

かろうじて太陽の光が入ってきている程度で足元がつるなどで不安定になっている。

俺達は森の奥へと進んでいった。


「……あれか」


俺が見つけたのはゴブリン達が壊れかけの馬車の上で何かを叫んでいる様子。

今回の依頼は馬車からの荷物を奪還、そして被害を最小限に抑えることだ。

ゴブリンに襲われる被害がこの町の周辺で相次いでいるらしい、最近だと死亡者が出たとかいう噂を耳にした。


「どうするの、奇襲する?」


セレンがゴブリンに見つからないよう小声で話しかけてくる。


「そうするか…セレンはそこで待機だ、俺が誘き寄せる」

「わかったわ」


そういいながら俺は叢をかき分け一歩ずつゴブリン達に近づいて行く。


「……今だ」


俺は後ろからゴブリンの脳天を短剣で刺す。

ゴブリン達が俺の存在に気づき一斉に襲いかかる。


「ヴゥリリリリィ!」


俺は急いで後ろに下がり叢の中をかける。

そして広い通りに出ると


「セレン…やれ」

「よしきた!」


叢の中で待機していたセレンが魔法を放つ。

紫色の魔法陣から放たれたその刃はゴブリンの首を一瞬で切り裂いた。


「ヴゥリリリリリリリリィィィ!」


残っていたゴブリンがセレンの方に一目散に襲いかかる

俺は短剣を投げ一匹殺すと素早くゴブリンに近づき袖からもう一つの短剣を出し2匹切り裂く。

辺りにはゴブリンの血が流れ出ていた。


「これで全部か?」


周囲を見渡すとどうやらゴブリンはすでに片付いたらしい。


「見たところね、まだいるかもしれないから注意よ」


セレンが叢をかき分け出てくる。

耳を覚ますと足音はセレン以外の物は聞こえない。

潜伏もなさそうだ。


「荷物を見に行くぞ」

「りょうかーいー」


さっきまでゴブリン達がいた場所に戻るとそこにはまだ綺麗なままの荷物が残っていた。


「……ゲートで運んでもいいが」

「やめときましょ、ドワーフも驚いてたでしょ冠位魔法は人間が使える物じゃないんだから」


セレンの言う通りだ。

あれは俺が迂闊だったことは承知している。

誤魔化せたかは知らんがドワーフが言い広めないことを祈っておこう。


「そうだな、このままでとりあえず中身だけ確認するか」


俺は木箱を一つ一つ開けて行く。

中はどれも綺麗なままでありこのままでも大丈夫そうだ。

しかしなぜ…ゴブリン達はこのまま放置したのだろうか。

わざわざ奪い取った物資をそのままにしておく理由などない。


「おい……セレン、そっちは……」


俺がセレンの方を向くと馬車の方を見て固まっているセレンがいた。

鋭い目で馬車を見ている。


「……どうした?」

「馬車の中から血の匂いがするわ……それも多分ゴブリンじゃない……」


セレンと馬車に近づく。

ボロボロの布で覆われており血痕がついている。


「………開けるぞ」

「うん」


俺は思い切り馬車を覆っていた布を剥がした。

すると中には……


「……やっぱりか」


俺とセレンは漠然としていた。

血の匂いと馬車に近づくたびに鼻につく違う種類の血の匂い。

そこには性別もわからないほど、ぐちゃぐちゃにされた人の死体があった。

引っ掻き傷が多数あり、ゴブリンの爪と一致している。

体は潰されている。

散らばっているのは宝石や指輪、人が死んだと判断するには充分だ。


「…………」


なるほど、だからあそこの荷物は綺麗なままだったのか。

ここにそれ以上の価値のものが沢山あるもんな


「……ギルドにどう報告するか」

「………まぁ死亡者がいるとは聞いたけどまた新たに出てくるとは聞いてないわよ」


これがこの世界の現実だ。

商人であろうと冒険者であろうと死ぬ時は結局あっけない。

セレンは死体を見回していた。

ただ一つ気がかりなのがまだ血の色が新しい。

多分殺されてまだ数時間っていったところか


「……この人……どこかで…」


服もビリビリ割いてあり、特徴といえる物が判別できない。

しかしセレンは目に見えない何か感じ取っていた。


「…………ん?」


俺が目を疑ったのは落ちていた短剣。


「おい、セレン…この短剣」

「えぇ…私も見覚えがあるわ、でもなんで…」


その短剣にはエメラルドの装飾が施されており鍛冶屋で見た値札が付いていない短剣と特徴が似ている。


「………今ある情報だけじゃあ予測しかできないだがこれが当たっていれば恐らく…」


俺は最悪の結末を考える。

だがあくまで最悪だ…まだそれだと決まったわけじゃあ…


「……ごめんなさい」


セレンは死体の原形を保っていた右手を少し動かす。

ぎじぎしとなる馬車、すると……


「やっぱり……」


そこには剣やナイフなどで刺された傷が大量にあった。

あのゴブリン達は武器を所持していなかった。

つまり


「殺されているな、それもゴブリンで偽装しようとした」

「えぇ…間違えないわ」


この人は人間に殺されているというところでセレンと解釈が一致した。


「………ライ、私に浄化魔法をお願い」

「了解した」


俺は紫色の魔法陣を展開するとセレンに向かって光を放つ。

その光はセレンの全身を包み込む。


「ありがとう、とりあえず報告しないと感染症として広まるかも」

「だな、あとは俺達の仕事じゃない」


セレンは死体の前で数秒手を合わせ続ける。

そうして不審な物だらけの死体を俺たちは後にした。

普通の人なら恐らく見ただけで吐いていただろう。

しかし俺とセレンはそういう素振りを全く見せず淡々と意見を合わせた。

それは俺達が普通の人間じゃないと言っているようなものだったのかもしれない。

報告ありがとうございました!誤字ができるだけ無いように頑張ります……

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