鍛冶屋
昼の街並みはやはり昨日とは変わらない。
強いて言えば昨日よりも若干見張りの兵士の数が多くなったことか?
まぁ絡まれることをしなきゃいい話だし問題はない
「そういえばセレンって魔眼もう一つあったよな?使えるようになったのか?」
「あ、これのこと?」
セレンが歩きながら右目を見せる。
左目には小さい紋章のような物があるが右目にはそれがない。
「まだ戻らないのよね……どうしてかしら?」
5人の魔女はそれぞれ魔眼という特別な目を持っている。
その中でもセレンは左目に嘘を見抜ける真実の魔眼、右目に相手の感情を読み取る心境の魔眼を持っているのだがここまでの旅で心境の魔眼が原因不明で使えなくなっている。
恐らく根本的な原因はセレンにあるのだろうが俺も無関係ではなさそうだ。
「不便は働いてないんだ、もう少し様子見だな」
「そうねそもそも原因がわからないのだもの」
そんな会話をしながら俺とセレンは街中を歩いて行く。
「ねぇそれよりこの通りって冒険者用の道具が並んでいる場所でしょ、何か買う物あるの?」
セレンが辺りを見渡すと剣や杖を持った冒険者が多く歩いている。
その通りには薬草屋、道具屋、それに交易をする場所もあった。
「あーまぁそうだな、日用品の補充だ」
俺達は奥の方にある年季がある建物に入って行く。
扉を開けると同時に鈴の音が鳴り中からは鉄の匂いが充満している。
奥の方では金属をハンマーで叩く音が数秒ごとにしていた。
「ねぇここって……」
「鍛冶屋だ」
「ライ…日用品の意味知ってる?」
「知ってるぞ、いつも使う道具のことだろ?」
「てっきり私は着替えとかポーションとかそういうのだと思ったわ……」
まぁ剣を毎日使うって考えるならそれはちょっと違うな。
俺のメインは魔法だから剣は正直なんでもいいが今回買いに来たのは別だ。
「おうおう、今回はどうゆう品をご所望だ」
カウンターの奥から長い髭を生やした背の小さいおっさんが現れる。
特徴が例のドワーフと一致しており見ただけで種族は判別できた。
「ミスリルをくれ、この袋分だ」
俺はそういいながら導きの門を展開し中から袋を取り出す。
手のひらより数倍大きいサイズだ。
「……あんたゲートが使えるのか?」
「あ……」
迂闊だったな…手癖でやってしまった。
ドワーフが静かに驚く。
この魔法は冠位魔法に分類される物、驚かれるのも無理はない。
「でどうだ、いけるか」
「あ……あぁ大丈夫だ、ただ最近ミスリルの値段が上がっている…それなりの値段になると思え」
ドワーフはカウンター横に置いてある木箱を開ける。
そこには薄緑に発光している鉱石がありこれこそがミスリルだ。
「ねぇ、どうしてミスリルなんか買っているの?」
「俺は錬金魔法が使える、これはそれ用だ」
「あーなるほどね、自分で作るのね」
セレンが納得し手を合わせる。
鍛冶屋で作られる武器の方が性能は上
しかし自分で瞬時に武器が合われることを考えるとやはり鉱石のストックは欲しい。
「ほい、一応詰めるだけ詰めた」
ドワーフが袋を片手でカウンターに置く。
その袋からしっかりとミスリルが詰め込まれているのが確認できた。
「いくらだ」
「金貨5枚だ」
俺は金貨5枚をドワーフに手渡すと袋をゲートの中に入れる。
「一応だがミスリルが高くなった理由を聞いてもいいか」
「最近鉱山の方でワイバーンが確認されたらしい、そのためミスリルの採掘がストップしている」
ワイバーン…竜種のことか
火を吐き森すらも焼き尽くすと言われているが
確か攻略難易度はSだったか……
なるほど通りで高いわけだ。
「理解した、助かる」
「おう」
「他の武器も少し見ていっていいか?」
「構わんぞ、最近客も少ねぇしな」
俺はドワーフに了解を得ると店内に飾ってある剣や盾、防具など見る。
どれも一級品であり、値段が高いのに納得の行く品々だ。
「セレン、お前は武器持たないのか?」
「私?うーん無くても魔法や魔術は発動できるし持ち運ぶにしては重いからいらないわ」
確かにここのミスリルや鉄などの武器はどれも重厚感のある物ばかりだ。
「………この剣」
俺が見つけたのは短剣、他の剣よりしっかりと研ぎ澄まされており真ん中にはエメラルドのような物が入っていた。
よく見ると他の武器にはついている値札がない。
「この剣は?」
「あー値札がないやつは注文品だ、売ってねぇぞ」
ドワーフがカウンターを整理しながら言う。
だから店内にはそこらかしこに素材が大きく違うやつがあるのか。
ここはどうやらオーダーメイドもやっているらしい。
「じゃあ行くか」
「そうね、次は冒険者協会かしら」
俺達は店を去ろうと歩み始める。
すると
「ここです!メイヤ」
「お嬢様お足元に注意を」
ドアの鈴が鳴り入ってきたのは女の2人組
一人は足元まであるスカートを履き、もう一人はメイドらしき格好をしていた。
長いスカートの女は嬉しそうに店内を回る。
「今日はメイヤにプレゼントがあるんですよ」
「でも…私はこのナイフが……」
メイドがそう言って取り出したのはボロボロのナイフ、結構年季が入っているらしい。
すると長いスカートの女は
「それ私が昔に上げたやつですよね、今まで大切に使ってくれてありがとう」
「お嬢様……」
俺達はそんな会話を背に店を出て行く。
店内には2人の楽しいそうな声が響いていた。
「ライ?あなたもあれくらいはっちゃけていいのよ?」
「断る、無駄な労力を使うだけだ」
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