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第四話 奴との再会

お待たせしました。

今回から、新しい仲間が加わります。

お楽しみに。

周りが寝静まり、街中を走る二人の青年の足音がこだまする。黒髪の青年、ユウキが口を開く。

「うひゃひゃひゃ!あいつらのパニックぶり、めちゃくちゃ面白かったなあ~」


「よ・・・よかったね・・・」


絹の様なしなやかな茶髪を揺らしながら笑う青年、ハルキ。しかし若干笑顔が引き攣っている。


「よし!!このまま町を抜けてこの国を出るぞ!!」


「そう簡単に言ってるけどねぇ・・・地図も無しにこの国を抜け出すなんて無理でしょ・・・」


そう話をしているうちに、王宮からの衛兵数十名に周りを取り囲まれた。


「あンの王さん、見かけによらず手を回すのが早いじゃねえか」


「どどどどうするのユウキ!?僕戦闘とか、ましてや喧嘩なんかしたことないよ?」


「まあまあ、ここはおれに任せな。」


そういってユウキが衛兵たちに突撃する。その瞬間、暗い街に一陣の風が吹いた。その瞬間、衛兵たち全員が地面に突っ伏す様に倒れる。そしてその風の正体であろう人間が、正面に見える民家の屋根の上に立っていた。被っていたフードとマスクを取ると、長い黒髪が夜風に靡く。そして、聞き覚えのある声がする。


「久しぶりね。ユウキ。それに・・・ハルキ。」


「あ・・・・・あ・・・・・ああ・・・・」


ユウキの声にならない叫びが静まり返った街に響く。


「お・・お前は・・・・スズネ!!行方不明になってたはずじゃ!?なんで此処に!?」


彼女は紫月鈴音(しづきすずね)()()()の世界では、ユウキの幼馴染であり、ユウキとハルキのクラスの学級委員でもある。とても美人なのだが、中身は腹黒である。握力50㌧とも噂が立つほど力も強い(らしい)。そんな彼女は、二年前に行方不明になっていた。ユウキの問を華麗に無視(スルー)し、そのまま話を続ける。


「あら?あなたたちの後に付いてきてる子はお友達?」


そう言われてユウキとハルキは後ろを振り向く。25メートル程離れた路地に一瞬動く人影があったのを見逃さなかった。次の瞬間、ユウキは地面を蹴って走り出した。慌ててハルキも後を追おうとすると、スズネに呼び止められた。ハルキはスズネに聞く。


「ユウキ1人で突っ走らせて良いの?1人じゃあ危なくない?」


するとスズネが民家の屋根に腰を下ろして答える。


「大丈夫。あの逃げた方、見た所暗殺職だし。暗殺職ってね、正面戦闘は得意じゃないの。でも追いかけてるのは正面特攻しか考えてない脳筋。どう?相手にとって不利なのわかるでしょ?」


この事を聞いてハルキは成程。と思った。


     ◆   ◆   ◆


その頃ユウキは、先程の人影の主の背中を捉えていた。標的まであと10歩、という所で相手が此方を向いた。だがユウキは止まらない。相手に向かってひたすら直進する。迷わず突っ込んでくるユウキを見て、黒いローブを翻し、相手は自然な動作で右手を左から右に動かした。すると、黒い扇状の波動が風を切ってユウキ目掛けて飛んでくる。それが相手の飛び道具だと分かった瞬間、ユウキは膝を折り曲げてしゃがんでそれを躱した。そして避けられた事に驚いている相手に向かって地面を蹴り、前に飛んだ。そして右手で相手の首を掴み、そのまま地面に投げ倒した。そして間髪入れず相手の両足を掴み、関節技を決めた。


「どうだ!!じいちゃん直伝の『スコーピオンデスロック』は!!」


スコーピオンデスロックを決められた相手は余りの痛みに悶絶しているが、声は挙げない。(タフだな・・・コイツ・・・)と思っていると、スズネとハルキが到着した。


「おうお前ら遅いぞ!!まあコイツはおれがとっ捕まえたがな!!」


ユウキが自慢げに言う。


「その子に話を聞きたいから場所を変えましょ」


という提案にユウキは素直に納得する。そのまま右手を首に回し、左手で右手を押さえ、チョークスリーパーの形でそいつを気絶させた。そのまま肩に担ぎあげて、町外れの小屋へ連れていった。


     ◆   ◆   ◆


朦朧とする意識の中、黒いローブの男は激しく後悔していた。

彼の名はツキカゲ。このあたりでは中々名の通った暗殺者(アサシン)である。

彼の操る影魔法は隠密・殺傷能力に長け、影魔法の適正が高い彼にとっては、暗殺者(アサシン)

は天職であった。暗殺職の苦手とする近接戦闘を影魔法によってカバーし、有利不利問わず、数多の要人を屠ってきたツキカゲだったが、黒髪の脳筋男によってその自信は粉々に粉砕させられた。

(クソッ・・・こんな依頼・・・受けるんじゃなかった・・・・)


     ◆   ◆   ◆


手足を縛り、椅子に座らせ、尋問の用意は出来た。頬を抓り、目を覚まさせる。

スズネが、


「貴方がユウキ達を尾行していた理由は何?」


と聞いてもそいつは黙り込むだけだった。軽くため息をついたスズネは、『パチン』と指を鳴らす。

すると、ツキカゲの後ろに立っていたユウキがにやりと笑う。

そしてそいつを持ち上げ、右手で頭を、左手で足を持ちまたもや関節技にかけた。


「喰らえ!!ロ〇ンマスクのタワーブリッジ!!」


流石に耐えきれなかったのか、


「ぐ・・・降参だ・・・もう・・・関節技は止めてくれ・・・」


とギブアップの声を上げた。ツキカゲは関節技が余程嫌だったのか、あっさりと全てを話した。

自分の名前がツキカゲという事。王の命令で勇者2人を捕らえてこいと命令があった事。暗殺者ギルドに所属している事、全てを話した。

下手に嘘を吐いても、今はリスクにしかならない。ツキカゲはそう分かっていたからだ。

全てを聞いたユウキ、ハルキ、スズネの3人は、隣の部屋でツキカゲの事などそっちのけで会話を始めた。ツキカゲは逃げる情報が得られるかもと思って静かに聞いていた。


「なあ、スズネはなんでこの世界に居るんだ?」


スズネはあっさりと答えた。


「私にも分かんないわよ。図書館で見つけた本を開いたら王宮にいたのよ」


ユウキとハルキは顔を見合わせ、ごくりと唾を呑んだ。此方の世界への転移の方法が自分達と全く同じだったからだ。何はともあれ、お互い3人が無事だった事に安堵した。全てを聞いていたツキカゲは、ある事を思いついた。それは、この3人とこの世界を旅する事だ。この3人からは只者では無いオーラを感じる。それに自分の「影の鎌」を避けて見せたユウキもその1人だ。その事実に、ツキカゲは大きく魅了された。そして次の朝、3人が部屋に入って来たのを見計らって、相談を持ち掛けた。


「お前等、俺様を仲間に入れる気は無いか?勿論、一緒に旅をする仲間として、だ。心配はするな。これでも現役の暗殺者だ。索敵なんかはお手の物だぞ。」


それは、ツキカゲにとって、一世一代の「賭け」だった。


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