エピローグ
真っ黒だった大地は次第に元に戻り始め、空を飛んでいたツキカゲは糸が切れたかのように
意識を失い、落下する。
ユウキとスズネが慌てて受け止め頃たには、髪は元の漆黒に戻り、両の黒翼は消えていた。
カゲロウの人格も、「後は任せるよ。危なくなったら、また僕の出番かもね」
と言い残し、そのまま消えていった。
「────本当に、倒したんだな。」
「勝っちゃった────。」
「夢じゃない────わよね?」
そう言いつつ、ユウキの頬を引っ張るスズネ。
「いててて。夢じゃねえや。これ。」
ユウキが地面に仰向けに倒れ、スズネとハルキも続く。
数秒の沈黙の後、弾けた様に笑い出す三人。
「よくもまあ誰も死ななかったなあ!」
「本当そうだよ!」
「誰かさんは死にかけてたけどね?」
他愛も無い話をしていると、転移魔術を使ってローズが三人の元へ訪れる。
「お、先生。」
「あ!先生!」
「え?先生?」
「お疲れさん、いやはや、本当にやってのけたか。」
「これでお前さん達は本格的に物語に組み込まれる事になる。」
「ん?それってどういう意味だよ?」
「そのうちわかるさ。」
そう言い、一冊の本をユウキへ投げて寄越すローズ。
否、中身は無く、表紙だけの本である。
「これは!?」
「お、これどっかで見たことあるな。(第一話参照)」
「そいつは『記憶』って言ってね。そいつがお前達の標になってくれるさ。」
「おっと、話し過ぎた。そろそろ時間だね。」
その瞬間、辺りの風景がぐらりと歪み、輪郭がぼやけ、やがて完全に消える。
全てが青色の粒子となって『記憶』へと吸い込まれていく。
「なんだ・・・・これ!?」
青色の粒子は『記憶』へ収束し、頁へと姿を変える。
そして、同様に青色の粒子に包まれ始めるオウカ。
「ぬ、吾輩も潮時か。短い間とは言え、天晴れな戦いであった!」
地面を全て引き剥がし、己の頁へと変換する『記憶』。
全てがまっさらとなったそこに、まるで頁がめくられるかの様に、新たな舞台が形成されていく。
「遷都が始まったようだね。」
「さあ、旅の始まりだ。行っておいで。」
御一行の物語は、更なる先へ。
第一章、これにて完結です。ご愛読頂き、本当にありがとうございました。
※二章もあります。