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第拾四話 最高位魔法使いの実力

「気楽に行こう、気楽に。殺し合う訳でも無し、折角なら楽しもうじゃないか。」

ローズが両目から剣呑な光を溢れさせながらおどける様に言う。


奥歯を噛み締めながらユウキが唸る様に聞き返す。

「死にかけても、恨みっこ無しだぞ?」


「それはこっちの台詞(セリフ)さ。」

「さ、掛かってきな。子猫ちゃん達?」

両手を横に広げ、余裕を見せるローズ。


「挑発に乗るな。あちらのペースに吞まれるぞ。」

ツキカゲがやや興奮気味のユウキを諭す。


「相手の手の内を知りたい所だが、相手は曲がりなりにも最高位(グランド)だ。

速攻だ。一瞬で決めるぞ。いいな?」


ユウキとスズネが無言で頷く。


三人がローズの方に踵を返す。


「お喋りは終わりかい?じゃあ、真剣勝負だ。」


「望むところ!!」

ユウキが叫ぶと同時に、スズネとツキカゲがそれぞれ左右に散る。


一塊になっているところを、広域魔法で殲滅されるのを防ぐ為である。


ツキカゲがすぐさま影を伸ばし、ローズを拘束しにかかる。

それに合わせ、後方から双剣を手に、スズネが距離を詰める。


「最近の若者は血気盛んだねぇ・・・」

さもやれやれ、といった様子のローズ。


「そうだそうだ。たしかアタシはこんなことも出来たね。」

ローズが指をぱちん、と鳴らす。白色の波紋が広がり、

ツキカゲが伸ばす影を地面から剥がして行く。


剥がれた影の一片を掴み、引っ張るローズ。


「何!?」


影を引っ張られ、空中でバランスを崩すツキカゲ。

有無を言わさず、ローズの方に引き寄せられる。

そのまま踏みつけられ、地面に倒れ込む。


「それと・・・・」

ローズがツキカゲを踏みつけたまま即座に振り向き、

スズネの突き出した双剣を人差し指と中指で挟んで止める。

「そっちも()()()()んだよ。」


空いた片方の手の人差し指をスズネに向けるローズ。

光の輪が放たれ、スズネを拘束する。


「くっ・・・!?」

スズネが藻掻くが、外れない。


「さあ、あとはあの坊やだけ・・・・」


ユウキの大きく振りかぶった拳がローズの眼前に迫る。


「!!」


ツキカゲとスズネは(デコイ)だったのだ。

スズネの攻勢で注意を逸らし、

ツキカゲの影を目隠し(ブラインド)に距離を詰めていたのだ。


手首の紋章を一画消費し、狂戦士の怒り(バーサーカーレイジ)を発動し、

最高威力の正拳が放たれる。


「・・・・惜しい。少し浅いねぇ。」


「!?」


ユウキの渾身の一撃はローズの掌打によって完全に相殺されてしまった。


「さ、KO(ノックアウト)だ。」


ユウキの頭にぽん、と手を乗せるローズ。


「これはアタシの完全勝利、だね?」


三人はぐうの音すら出ない。

それも無理は無い。ここまでの圧倒的な実力の差を見せつけられたのだから。


特に、プライドの高いツキカゲは半ば放心状態だった。


「おーいオウカ~?ここから出しとくれ~」


「ふっふっふ。中々に面白い闘いであったな。」

師匠(せんせい)もまだまだ衰えておらぬな?」

オウカがそう言いながら、ユウキ達を指で摘み、グラスの外に出す。


グラスの外に出されて暫くすると、もとの大きさに戻ったユウキ達。


「かっかっか!久しぶりに良い運動ができたねぇ!」


年齢とは裏腹に、子供の様にはしゃいでいるローズ。


それとは対照的に、しょぼくれているユウキ達。

ツキカゲに至っては放心続行中である。


そんなユウキ達に向き直るローズ。


「ま、最高位魔法使い(グランドソーサラー)の名は伊達じゃない、ってこった。」

「そういえば、アタシが勝った時の話をしてなかったねぇ?」


ぎくり、と背筋が凍り付くユウキ。


「じゃあまあ────アタシの、弟子(生徒)にでもなって貰おうかね?」


「え????」

ユウキの目が大きく見開かれ、疑問符の言葉が漏れる。


スズネはこの展開が視えていたのか、最早何も言わない。


ツキカゲは今も放心中である。


「ふははははは!とうとう私も姉弟子か!」

満面の笑みで高らかに笑うオウカ。


ユウキはただひたすら、呆気に取られている。




~~~<その後>~~~~


「と、言うワケで。今日からアンタの師匠(せんせい)になりました。

ローズ・メアリー・ウィロウだ。師匠(せんせい)と呼ぶように。」


「え?え?誰?ローズ・・・なんて?」」

ユウキ達にローズの家に案内され、唐突に弟子(生徒)になれ、と告げられ、

もう何が何だかわからないハルキ。


ローズが個人懇談、と称してユウキ達は別室だ。


「アンタ、魔法が使えなくなったんだってねぇ?

なんでも、基礎すらせず、無理に魔法を行使してたらしいね?」


淡々と話を続けるローズ。

ハルキは今魔法が使えない、ローズにそう伝えたのはユウキである。


「はは・・そっか。どうりで最近魔力の鼓動が感じられないワケだ。」

全てを諦めたかのような声でそう呟くハルキ。


「どれ、アタシにちょっと見せてみな。」

解析(アナライズ)


ローズの眼にぼんやりと光が灯り、ハルキを見る。


「これは・・・っ!」

ハルキを一瞥した後、ハルキに向き直る。


「率直に言わせてもらおう。」


ごくり、固唾をのむハルキ。


魔力回路(リード)が焼き切れて、魔力増幅器(トランジスタ)はがたがた。

おまけに魔力貯蔵核(コンデンサー)がぼろぼろときた。」

「はっきり言って、ハルキ、あんたはもう魔法は使えない。」


「そ・・・それは、一生!?」


「その通り。」


更に追い打ちを掛ける事実。

ハルキの顔が絶望に染まる。


「だが」

「例外もある。」


「そ、それは!?」

ローズの話に食いつくハルキ。


「例えばアンタのその手首。」

ローズがハルキの手首に刻まれた点対称の流星の様な紋章を指差す。


「その紋章、実は物凄い魔力触媒(リソース)だ。」

「それを利用すれば、魔法は使える。その訓練には途方もない時間がかかるがね。」

「それでも、アンタ、最後までへこたれず、訓練をやり遂げる覚悟はあるのかい?」


ハルキの信念は揺らがない。例えそれが、自分にとってのどんな苦行であったとしても。


「やります。やってみせます!!」


「良く言った。」

天晴(あっぱ)れ、と言わんばかりのローズ。


「自分の血液を魔力に変えるなんざ、それこそ途方もない努力も必要さ。」


「あれ?なんでこの紋章が血液だ、ってわかるんですか?ローズさ・・・師匠(せんせい)。」

ハルキは大いに訝しんだ。何故なら、自分達が血を奪いし者(ブラッドイーター)である、というのは何があっても秘密、と御一行の中でのルールがあるからだ。


「?だってそりゃあ──────」

「アンタ、血を奪いし者(ブラッドイーター)、だろ?」


ハルキは水を浴びた様な戦慄を感じた。

一体何者だ、最高位魔法使い(グランドソーサラー)の肩書だけでは到底足りない、

もっと何か悍ましい力と、途轍もない叡智を備えた「何か」である。


そう、ハルキの本能が告げている。




───ハルキの心臓が、始まりの終わりを示唆するかの様に躍動していた。



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