表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/32

第十話 賑わう解体場と

無事にギルド登録が完了したユウキとハルキが、ギルドの扉を開け、外へ出る。


出てきた二人に声を掛けるスズネ。


「早かったわね、二人とも。ここのギルドマスターは敏腕なことで有名だったけど、どうだったかしら?」


やや肩を落としながら、ユウキも応える。

「どうもなにも・・・おもしろ・・・敏腕なおっさんだったぞ。


「俺様も同感だ。ギルドマスター(あいつ)は手強いぞ。」

ユウキの影からツキカゲもぬるりと出現する。


「名前に違和感あるの僕だけかな?」

ハルキが呟く。


「そうそう!ギルドマスター(あいつ)の名前がよ、「ノブヒト」って言うんだ。

スズネ、なんか知らねぇか?」


スズネが一瞬考え込む様な素振りを見せると、

「さあ」

短く応えた。


「なんでえ、天下のスズネ様でもわかんないことあるのか。」


「それはそうと、ギルドマスターが明日に職業(ジョブ)を決めるから来い、って言ってたけど、

職業(ジョブ)って何?」

ハルキが質問する。


「ふっふっふ、親切な俺様がおしえてやr・・・」


職業(ジョブ)って言ったらあれだろ、よくある戦士(ウォリアー)とか魔法使い(ソーサラー)

とかの事だろ。」

ツキカゲの言葉を思いっきり遮るユウキ。


「成程!大体想像がついたよ!ありがとうユウキ!」

そしてとても悲しそうなツキカゲ。


「それより、解体所に行きましょ。折角狩ったワイバーンが台無しよ。」


ユウキは訝しむ。

「あ~いつぞやの。でもよ、ワイバーンの死体なんて回収したっけ?」


スズネがふっ、と笑うと、虚空へと手を伸ばす。

何もないはずの空中には、うっすらと波紋のようなものが。

興味津々なユウキとハルキ。

ツキカゲはただ静観している。

スズネがその波紋へと手を突っ込む。

抜かれた手には、見覚えのある大きな牙が。


「あー!その牙は!!」

ユウキが目を見開き、

「ワイバーンの・・・!!」

ハルキが続ける。


二人の反応に概ね満足した様子のスズネ。

「これは異次元収納(アイテムボックス)って言うの。とっても便利よ?」

呆気に取られているユウキとハルキ。

(すげぇ・・めっちゃ欲しい・・・その能力(スキル)!)

未知の能力(スキル)興奮を隠せないユウキだった。


       ◆  ◆  ◆


御一行はギルドの間隣りにある解体所─── 鋸と鉈が看板に描かれている建物へと入った。

建物の中は冒険者で賑わっている。

向かって左が解体場、向かって右が素材の換金所だろう。

解体場では屈強なおじさん達が魔物を鉈で解体している。

換金場では若い職員が忙しなく動いている。


スズネが換金場へとまっすぐ進んで行く。

アイテムボックスからワイバーンの素材が入っているであろう小袋と小瓶を二つ取り出し、カウンターへと置く。

職員の一人が対応をする。

小袋の中身を見て目を大きく見開き驚く。しかしすぐに我に返って精算を始める。


「ワイバーンの牙と爪がそれぞれ6つ、そしてこれは──ワイバーンの眼球ですね。」


小瓶の中身はなんとワイバーンの眼球だった様だ。

目玉なんていつ取ったんだ、とユウキが訝しむが言葉には出さない。


「俺様も解体してもらうとするか」


ツキカゲがそう呟き、解体場へと向かう。

ユウキとハルキもついていく。


「ラークを呼んでくれ」


慣れた様子でカウンターに声を掛ける。

カウンター嬢からカウンター奥に声が掛けられ、

左目に眼帯をし、頭に赤いバンダナを巻いた強面で屈強なおっさんが奥から現れた。


「おっ!カゲの旦那!らっしゃい!毎度御贔屓にどうも!」

満面の笑みでツキカゲに挨拶するラーク。

どうやらツキカゲはここの常連の様だ。


「今日はワイバーンを頼む。先日狩ってきた。」


「おっ!ワイバーンですかい!それなら解体のし甲斐があるってもんですよ!」


ラークの案内により、解体所裏の倉庫へ案内される。

もちろんユウキとハルキもついていく。


「さあさあ!今回も大漁でしょう?倉庫一つ、貸し切りにしときやした!」


「では頼むとしよう」


ツキカゲが自分の影に手を突っ込み、ワイバーンを頭から引きずり出す。

その数、5頭。

ユウキとハルキは唖然とする。


(ちゃっかりワイバーンを回収してやがったのか。抜け目ないやつ。)

すこし眉を顰めるユウキ。


(いつ見ても便利な能力だなぁ)

少し感心するハルキ。


「わかりやした!ワイバーン5頭!明日の朝には解体終わらせときますでぇ!」


「頼むぞ。いつも通り、()以外は買い取りで頼む。」


「あいよ!いつもの!こりゃあ腕がなるぜ~!」


切れ味のよさそうな鉈を片手に、早速解体を始めるラーク。


「さ、帰るぞ。あいつは解体を始めたら止まらん奴でな。あとは任せるとしよう。」


魔物の解体という見慣れない光景に少し眼を奪われながらも、ユウキ達は解体所を後にする。

外はもう夕暮れ時。スズネとも合流し、徐々に紅色に染まって行く街並みを眺めつつ、

ユウキ達は歩いて行く。



      ◆  ◆  ◆


日が暮れ、大分人の減った冒険者ギルド。カウンター奥の部屋で少しだけ背もたれの高い椅子に座る

中年男性が一人。

この冒険者組合(ギルド)組合長(マスター)、ノブヒトだ。

彼の手にはユウキとハルキの登録詳細用紙が。

少し眉を顰めながら、疎ましそうにそれを眺めている。


()()()()か・・・また厄介な新人(ルーキー)が来たものだ。」


ぽつりと呟くと、心の底から疲れた、とでも言うかの様に大きな溜息をついた。


「流石に疲れたな・・・一週間不眠は流石に堪えるか。」

「少しだけでも・・・仮眠を摂っておこう」


そう言って瞼を閉じたノブヒト。

照明の魔石が優しく煌めき、ノブヒトを束の間の休息へと誘う。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 全て [一言] がんばれー作者!! おーえんしてます!!
2023/02/06 20:10 無添加ツナ
[良い点] ノブヒト!?気になります! [一言] 新作頑張ってください
2023/02/02 20:53 こだわりベルト
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ