表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/122

第65話 頭大丈夫か?




 体育祭も折り返し。午後の部へと入った今、俺たちは早速男子リレーの入場門へ来ていた。蓮は1走者であり俺はアンカーなので、その分離れる。ちなみに蓮の長距離走は余裕の1位だったので、それなりにポイントは貰えた。


 この時点で2位のクラスと2倍近いポイントの差があるので、勝ちはほとんど決まってる。そう思うと、どこかやる気を失うかと思われたが、どのクラスもそんなことお構いなしに、最後まで全力を出そうと声を張り上げていた。


 男子リレーは団対抗なので、学年もバラバラ。現在2団は競技でも独走中なので、盛り上がりは最高潮。だからこそ目指してるのはどの学年も、クラスポイント以外の何物でもなかった。


 俺は役目はもう無いと思っているので、このリレーもやる気はそこまで高くない。アンカーとはいえ、必ず抜き返せるわけでもないのだから、正直最下位か圧倒的1位でバトンを渡してくれたら嬉しい。


 まぁ、やる気がない根本的な理由は、昼休憩で伊桜に会えなかったことだ。どこにいるかと探しても見つからないし、綱引きでも惜しかったが2位を取ったのだから、喜び合おうとした。でも見つからない。かくれんぼしているつもりもないから、運が味方してくれなかっただけだろうが、それが気になった。


 しかし、応援が無ければ走れないなんてことはないので、クラスリレーに勢いを繋ぐため、今を全力で駆けるつもりだ。


 「緊張してる?」


 男子リレーの次は女子リレー。1走者である花染が背中をツンツンとして聞いてくる。男女どちらも2年生3年生無視して、短距離タイプがアンカーという、1年1組だけが体育祭ぶっ壊し編成なのは笑える。


 「アンカーだと全然しないな」


 「そうなんだ。私出だしミスったらどうしようってガタガタしてる」


 見ると小刻みにブルブル震える姿が目に映る。


 「スタートなんてそんな変わらないだろ。花染ならその後で差をつけれるから心配するなよ。どうせ最後には バケモノ待ってるんだから」


 県1位を凌駕した華頂。本気で走ればきっと驚きのタイムが出るだろう。本人の性格上、本気で走ることはそんなにないので、多分そういう運命で生まれてきたのだろうが。何故か走れば巫山戯てしまう。そういう人気者の片鱗も見せながら走って1位は、檜山先輩からしたらもう笑えるだろうな。


 「1走者だけ長距離にしないかな。だったら余裕なんだけど」


 「それなら最後、俺と華頂がランニングしてでも勝てるくらい差が生まれるぞ」


 「楽して勝ちたいー」


 長距離が楽って思考、普通に尊敬する。


 「そういえば、綱引きの時大丈夫だった?由奈が倒れたやつ」


 「あー、驚いたけど怪我も無かったし大丈夫」


 「それならいいけど。由奈が心配してたからさ」


 「なら大丈夫だって伝えててくれ」


 「分かった」


 下の名前で呼ばれると、どうも分からない。青泉のことだろうが、女子はほとんど名字だけだから、そのシーンを言われないと今も【?】だらけだろう。


 「隼くんって、由奈みたいな時々ドジする女の子とかって好き?」


 「……いきなりだな」


 思わず振り向くと、それに合わせるようにそっぽを向く。


 「ドジする人を好きなのかは俺もよく分からない」


 「そっか……」


 「なんでそんなこと聞くんだ?」


 「好きなタイプが分からないから、ちょっと聞いてみようかと」


 「好きなタイプか……それも分からないな。可愛いとかクールとかでも決まらないし、初恋すらしたことないからそこらへんは疎くて」


 伊桜に日頃からカマチョしているが、実際あれに恋人になるテクニックなんてものは全く込めてない。ああすれば距離を縮められると思ってしているだけで、未だに恋愛感情を抱かない俺は好きなタイプを知らない。好きになった人だとも言えない。


 「じゃ、究極の選択。私と姫奈を選ばないといけないってなったらどっち選ぶ?」


 「究極過ぎるな……んー……それなら花染だな」


 「えっ、ホントに?」


 「どっちも同じ量のいいところがあるけど、花染の方がイジるといい反応してくれそうだし、笑顔も見せてくれるだろうから、花染だな」


 華頂は逆。イジるとイジり返すし、笑うタイミングとかは同じっぽそう。どちらも冗談の通じる最高の相手なので、微々たる差で軍配が上がるのは花染だ。


 「選ばれた……選ばれた……」


 「大丈夫か?」


 ブツブツと独り言を繰り返す。呪文を唱える闇落ちした人のように。姿は可愛くても、目がヤバい。


 「あーうん、大丈夫。え?ここ現実?」


 「……は?」


 暑さにやられたか。日差しは強くないが、人それぞれ感じ方には差があるので、一概にないとは言えない。明らかにキマってる人だ。これは。


 「花染、そろそろ戻ってこい。手遅れになるぞ」


 「大丈夫、戻ってるから。ちょっと姫奈に勝ったことが嬉しくて何処か行ってた」


 「そんなに?とことん負けず嫌いだな」


 根っからの負けず嫌い。だとしても狂ってる。狂人だ。喜び方で分かるほどの頭のぶっ壊れ方。これがあの美少女として人気の花染佳奈とは、全く思えなかった。


 「ふぅぅ、落ち着いた」


 同時に男子の誘導が始まる。


 「ホントに大丈夫だよな?無理するなよ?」


 「うん、分かってる」


 「そんじゃ、1位取ってくるから」


 「頑張って」


 「花染もな」


 先を走る誘導の人に、男子が固まって付いていく。離れていく花染が、離れれば離れるほどおかしくなっているようにも見えて、どうも落ち着けなかった。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ