表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

106/122

第106話 大きな約束




 今日は良い日だ。そう思うのは()のはずなのに、私がより思っている気がする。我儘を聞いてもらっているからだけど、そんな私を許してダメにしている隼も中々に悪い。


 「ありがと。これで、お互いホントに友達として距離を縮めた気がするね」


 「そうだな。間違えて学校で呼ばないようにしないと」


 友達が終わったなら、次は恋人として距離を詰めなければいけない。それは義務だ。誰がなんと言おうと義務だ。


 「呼んだ時は……呼んだ時でどうにかしないとね」


 呼んだ時。その時は私の存在がバレる。注目を集める。


 待って……そうなれば私は…………。


 ――何故私が私を偽るのかを、隼に教えよう。隼を好きになってしまえば、付き合いたいと思う。誰にも渡さず、私の隼だと主張するために。


 バレてしまえば、偽りの理由を言わなければならなくなる。本当は言いたくなくて、高校卒業まで貫く予定だったけど、もうその必要もなくなるから。隼がもし、私の隣に立ってくれるなら、そんな心配は消え去るから。


 言おう。私に寄り添ってくれるタイミングを見計らって。私は悪巧みだけは得意だ。隼を振り向かせるために、女子の中の醜いドロドロした恋愛の勝負に、私は足を突っ込む。水面下の争いに、勝つために。


 「隼、いきなりで悪いけど、次会う予定を決めていい?」


 「どうぞー」


 「クリスマス、2ヶ月後だけど、私と()()デートしよ」


 「……外でデート?」


 「うん。その時に、私との関係で1番気になってることの答えを教えるから。だから、絶対に空けてほしい。クリスマスじゃないと、私言わないから」


 絶対だと、誘われても断れと、私はそう言った。そうすれば、隼は絶対に来てくれるから。知りたいって、私に興味を持ってくれてるから。


 でもこれは、リスクが高い。クリスマスともなれば、花染さんたちも誘うだろう。その時、嘘をつけない隼は私だと言うはず。林間学校もそうだったと聞いたから、それは間違いない。


 ならば、流石に賢いいつメンたちは察する。隼と私に何かがあるのだと。でも、それでも良い。隼が私を選んで聞いてくれるなら、バレたとこで今更恐れはないのだから。


 「そんな縛りが掛けられてるのか?大変だな」


 「まぁね。だからクリスマスは私とデートだよ」


 「了解。怜が誘ってくれたなら、暇人で怜ファンの俺が頷かないわけないしな」


 「ふふっ。期待に応えてくれるのは流石だね」


 約束は絶対守られる。隼との破られた約束なんて、これまでなかったから。私は安心している。いつか自分でも取り払えなくなるこの呪縛を、簡単に取り払える人が目の前に存在しているのかもしれないから。


 過去の物語は、私を強く縛った。もう、1人では夜すら歩きたくない今を、隼は相性だけで埋めてくれた。夏休みに花火などの思い出を作りに来た日、その日は夜に帰宅だったけど、隼は喜んで付いてきてくれた。声に出して伝えずとも、優しさだけで阿吽の呼吸を築けた。


 ()()()()に隣に並んで歩いて帰ったけど、相変わらず、ペースを合わせたりする優しさは健在だった。


 そんな隼となら、私は偽りを消せる。消してみせる。


 それから、私たちは隼の誕生日を楽しんだ。いや、誕生日だからといって、何か特別なことをしたわけではないけど。ただ、会うための理由として、偶然あった誕生日を借りただけ。


 そんなことはお互いに理解している。隼だって、「俺の誕生日か」と、何度も言っていたし。楽しかったんだから、それでいいんだ。


 「もう17時前だって。暗くなり始める頃だよ」


 隼の膝の上に頭を載せて、目先にある顔を見て言った。下から見ても、綺麗に縁取られた容姿は文句なし。吹き出物なんて皆無だ。


 「帰るのか?」


 「暗くなったら、隼に背中を押してもらわないといけなくなるから」


 「嫌だって言い方だな」


 「全然そんなことないよ。けど、送ってもらうと、隼のことが寂しくなるから」


 恥ずかしさも抵抗もなくなった今、想いそのままに伝えれる。


 「そうか。ならお開きってことか。そう思うと寂しさあるな」


 「仕方ないよ。こんな美少女と別れるのは誰だって寂しいだろうし」


 「間違いないな」


 「でしょ。暗くなる前に帰らないとね」


 帰ると思えば、既に隼に恋した私は少しつらい。今度会うのはクリスマスということを決めてしまったから、その間、学校でもそんなに話せない。


 でも、それが今後のためになるなら、受け入れるしかない。だから、今のうちに、と、私は体を動かして横になり、隼の腹部に顔を向けた。


 「何してるんだ?」


 「今度は2ヶ月後だからそれまでの充電ってやつ」


 これまで抱き枕だった相手が、隼に代わった。両腕で隼の胴体を掴んで顔の前まで引き寄せる。


 「これ、普通恋人同士がするもんだろ」


 「親友なら変じゃないでしょ?男女の親友なら、これくらい普通だし」


 そんなことはない。親友でもあるけど、好きな人でもあるから出来る。


 「んー、まぁ、定義も曖昧だしな」


 「っそ。私たちは私たちだからね」


 我ながら積極的すぎるとは思ってる。けれど、いい攻め方だとも思う。きっとこれなら、私は負けない。卑怯でも何でも――最初から隼の興味を惹いた私が有利なんだから。


 「それじゃ、帰ろうかな!」


 「誕プレありがとな。大切に使う」


 「うん。予備は使っちゃだめだよ」


 「破れなかったらな」


 破れても、隼なら置いてくれてるさ。


 時計は17時を知らせていた。帰るには早いけれど、クリスマスが控えてるとなると、そんなの些末なことだった。

 少しでも面白い、続きが読みたい、期待できると思っていただけましたら評価をしていただけると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ