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植民地

 数日後、魔王ハイゼベルクは捕まえた人間たちを集めました。この頃になると、人間たちはもうハイゼベルクを恐れてはいません。

「お前たちにやってもらいたいことがある」

「というと?」

「町を作ってもらいたい」

「はあ?」

 要領を得ない男たちを前に、ハイゼベルクは詳しく説明します。

 魔物の集落から西に進めば、人間の国がある。その道程の中ほどに、南北に流れる大河がある。その手前に町を作る。岩がちな地形で濃厚には向いていないが、石材や木材は豊富だ。町を作ったあとはその石材、木材と、魔物の集落で取れた農作物を交換する。また、町を建てる期限は一年とし、一年間は食べ物は無料で支給される。町の作りは人間たちに任せるが、城壁は必ず作ること。

 人間たちが理解するまで、ハイゼベルクは何度も何度も説明しました。ようやく理解すると、人間たちは自分たちの町が手に入るならと承諾します。

 さっそく次の日に人間たちは出発。町を作り始めます。ハイゼベルクは人間たちが命令に背かないか逐次監視しました。それと同時に、魔物の集落からは新たな町の方向に向かって道路を建設します。それまで、道路といったら人間の足で踏み鳴らされただけのものでした。しかし、今ハイゼベルクが作っているのは、薄く切った石の板で表面を舗装した頑丈なものです。

 これらはすべて、人間の国に攻め入るための準備でした。

 人間たちが魔物の集落に攻めてきたあと、ハイゼベルクはレイヴンやドッペルゲンガー、捕らえた人間を使い、情報を集めました。それにより、人間たちは魔物の集落に来るまでの道のりで苦しみ、少なくない人数を失ったとのことです。中でも一番の難所は南北に流れる大河。ここで百人以上の人間が流されて下流へと消え、持ってきていた荷物も多く失いました。

 ハイゼベルクはまず、移動を楽にすることを考えます。経路上に町を作り、一度ここに集まってから再出発するのです。総距離は変わらずとも、一度完全な休息を挟めば疲労、損耗は激減します。さらに町ができたあとは大河に橋を渡すつもりです。これで、難所を克服します。

 もちろん、捕らえた人間たちにそんなことは言いません。ただ建材をとるための町だと説明しています。

 新たな町は、民が植えられた地ということで、植民地と呼ばれました。

 植民地建設、道路敷設をしている間、ハイゼベルクは戦いの訓練も行います。

 実際に戦うことはできないので、訓練には狩を利用しました。五百人の隊も、狩場で動きやすいよう百人ずつにわけられます。これを百人隊と名付けました。もとの五百人は大隊と呼ぶことにします。大隊は集落に五つありますので、すべての大隊を合わせて軍団と呼ぶことにしました。軍団に属する魔物は軍人、兵士などと言います。

 四個大隊はそれぞれ番号を振られます。その番号順に作業を割り当て、半月で交代します。はじめの半月は、第一大隊は狩で訓練、第二大隊は集落の防衛、第三大隊は道路の敷設、第四大隊は休憩。次の半月はこれをひとつずつずらします。

 一年後、予定通りに植民地は完成します。この年に成人した魔物を加え、さらに一個大隊が編成されました。遅れて道路も完成します。

 町が完成して考える余裕が生まれると、植民地の住人たちは家族のことを思い出します。故郷に置いてきた妻と子を連れてきたいと言うと、ハイゼベルクは、一度に全員で行くのではなく、何人かは人質として残ることを条件に、それを許しました。子ができて町が永続するのはハイゼベルクにとって好都合ですが、人間たちが逃げてしまっては元も子もないからです。

 住人たちは二度に分けて国へ戻りました。妻と子を連れてくることには成功しましたが、このことはリア王の耳にも入ります。

 王は、植民地の住人たちを、魔物に寝返った裏切り者だと感じ、ひどく不愉快に思いました。

 一月後、事件は起こります。

 リア王が植民地へと攻めてきたのです。裏切り者たちを処罰するためでした。

 住人たちは城壁の中に逃げ込みましたが、逃げ遅れた者は殺されました。

 このことはすぐハイゼベルクに伝えられます。使者はハイゼベルクの建てた道を行きますから、わずか一日で魔物の村につきました。

 ハイゼベルクは四個大隊を連れて植民地へ急行。数では劣勢でしたが、訓練の行き届いた部隊はあっという間に人間たちを蹴散らしました。リア王も国へ逃げ帰ります。

 ハイゼベルクはそのまま植民地へ留まり、リア王への対策を打ちます。

 大河に橋を渡し、対岸に砦を建設。一個大隊を駐留させました。さらに近辺の木々を切り開いて視界を良くし、不意打ちされることがないようにします。

 建設の間、ハイゼベルクは植民地の被害も調査しました。そのとき、ハイゼベルクは人間たちから二人の子供を預かってくれないかと頼まれます。リア王の襲撃で親を殺されたために身寄りがなく、自分たちは町を作ったばかりで他人の子供まで面倒を見る余裕がないとのことです。魔王は二人を預かることを承諾。

 二人は双子の兄弟でした。兄はリオ、弟はルウ。人間でありながら、親を殺した人間の国を深く恨んでいます。

 魔王は二人を利用する算段をつけながら、帰路につきました。

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