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西門の戦い

「はーっはっはっは。待ってろよ、魔物ども!」

 高笑いを上げるのは敵将の男。

「とはいいますけど王様、この前はこてんぱんにやられちまいましたぜ。うちの弟も死んじまいやしたし」

「なに、案ずるな。私の作戦通りに動けばいい」

「ほんとに大丈夫ですかねえ」

「む、貴様なにを言うか。完璧な作戦ではないか。パーフェクトプランではないか」

「なんで言い直したんです?」

 手下のつっこみは華麗にスルーして男は続ける。

「いいか、我が軍は一万。私は四千を率いて西の門へ。他の三つの門はそれぞれ二千ずつ。魔物どもは数が少ないからな。これで一つの門だけでも魔物より数が多い! さらに門は巨大な丸太で破壊すれば完璧だ!」

「左様でございますか。まあ、わっしらは言われた通りにやりやすが」

「うむ。良きにはからえ!」

 敵将、王と呼ばれた男はカカっと高笑い。

 やがて魔物の村が見えてきました。遠目からでも巨大な城壁がはっきりと見えます。王様がぽつりと呟きました。

「……壁、でかくなってない?」

 近づいてみると、やはり壁は大きくなっています。前は壁の周りに畑があったのに、今はすべて壁の中にあるようでした。さらにまずいことに門は八つ。

「門の数増えてますけど、どうすればいいんで?」

「そんなの見ればわかる! どうすればってお前……どうしようか」

 王様は周りの人たちと相談をはじめました。

 一方、魔物の長は櫓の上から人間たちの様子を見ていました。

 人間たちが近づいてくるのは櫓の上の見張りがすぐに発見しました。すぐさま臨戦態勢に入ります。戦うことができない魔物は内側の城壁の中へ。五百の隊は、ひとつは城壁の上。新人たちの五百の内壁の守り。残りの二つは敵と戦うため、門の手前で待機させます。

 即座に体制を整え待っていると、人間たちはなぜか壁の前で止まりました。そのまま何人かで話し合いをはじめ、一向に動く気配がありません。

「……なにをやってるんだ、人間どもは」

 長は呆れます。指揮をする人間は集まって会議。上の煮え切らない態度を見た手下たちは手持ちぶさたとなって勝手な行動をはじめます。

 長は隊長を呼びつけました。

「北門から出ろ。茂みの中をこっそり移動して人間たちに近づけ。上から人間たちに矢を放つから、それを合図に襲い掛かれ。人間たちが反撃してきたら逃げて、近くの茂みに隠れていろ」

 隊長が出発すると、城壁の上にいる隊に矢の準備をさせます。上からは外に出した一隊の様子も見れます。準備ができたのを確認すると、長は声を張り上げました。

「矢、放て!」

 五百の魔物たちが一斉に矢を放ちます。人間たちは壁の上にまで攻撃が届かないので逃げ惑うばかり。そこに外に出した一隊が攻撃をしかけました。人間たちはすでに混乱していたので奇襲を受けるとろくに抵抗できません。王が命令してやっと体制を立て直しましたが、隊長は命令通り反撃が来たらすぐに逃げました。魔物の被害はゼロ。対して人間たちは怪我で動けなくなったものも含めて二千近くを失います。

 それでも諦める気はないのか、人間たちは千ずつで八つの門につきました。彼らは用意していた巨大な丸太を十人で持ちあげ、門に突撃します。

 こうして攻撃ははじまりましたが、人間たちの配置を見た長は勝ちを確信しました。

 長は隊長を二人呼び、作戦を説明します。それぞれが準備にかかると、長は人間たちのいないところへ壁の上から飛び降りました。

 長は一般的な魔物よりずっと強いですから、壁を登ることはできなくとも飛び降りるくらいなら問題ありません。

 外に出た長は茂みに隠していた一隊と合流。直接指揮を取ります。

 長が櫓の上の見張りに合図すると、作戦ははじまりました。

 まずは壁上からの一斉射撃。さすがに人間たちも学んだらしく、盾を頭上に掲げて防ぎます。これで弓矢による被害はありませんでしたが、それ以外はすべて長の計画通りに進みました。

 矢を浴びせたことで丸太の突撃も止まります。西門を全開し、一隊が飛び出しました。門を壊すことに夢中だった人間たちは戦いやすい隊形になっていないので、最初から有利に戦いを進められます。

 集団での戦いは、いくら数が多くても実際に戦っているのは一番外側の者だけです。それに気づいた長は、その外側の者が戦いやすいように隊列を組ませました。ゆえに千と五百でも、戦力の活用により、数の優位は覆せます。

 人間たちはなんとか魔物に対抗できるよう、戦いやすい態勢をとります。しかし、それが終わるや否や長率いる五百が後ろから襲いかかりました。人間たちはすでに正面の敵に対してに並んだ後。急に後ろの敵には対応できません。挟み撃ちにあった人間たちは見る間に血祭りにあげられていきます。

 勝てないと見た王は側近に連れられて命からがら脱出。

 人間たちはまだ七千も残っていましたが、最初の奇襲で二千、さらに挟み撃ちで千人を殺されています。王様自身も命は助かったとはいいえ、矢による重症を負っていました。指揮者不在、死傷者多数による士気喪失。人間たちはもはや戦うことができません。倒れた仲間を残して帰っていきました。

 こうして、魔物は二度までも勝利を収めたのです。

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