長文タイトルに関する考察
もし、本エッセイがあなたの知的好奇心を刺激できたならば幸いです。
小説家になろうでは、長いタイトルの小説が多く投稿されています。長文にする理由は、ビュー数を多くするためだと言われています。一方、Web小説が登場する前の紙媒体のライトノベルのタイトルの文字数は多くて20字程度と思います。
もし、文字数が多いほうが有利ならば、紙媒体のころのライトノベルのタイトルの文字数も多そうなものですが、そのようになっていませんでした。これがどのような背景に由来するのかについて考察を行いました。
まず、小説家になろうで長文タイトルが多い理由について、なぜなぜ分析を行います。
①なぜ長文タイトルが多い?
タイトルが短いと読まれないから。
②なぜ読まれないか?
内容が一目でわからないから。
③なぜ内容がわからないのか?
上位10位までの表示では、タイトルのみが表示され、
上位100位までの表示ではクリックが必要なうえ、タイトルよりあらすじの文字サイズがかなり小さく視覚的なアピール効果が低いため。
紙媒体の単行本等では、販促のために帯を設けます。帯には大きな文字サイズで、その本のアピールポイントが書かれています。そして、小説家になろうのタイトルの文字数制限は100文字です。100文字あれば、その小説のアピールポイントを十分に宣伝できます。つまり、「小説家になろう」においては、タイトルを単行本の帯として活用していると言えそうです。
長文タイトルは、小説家になろうの管理システムに適応した進化の結果といえるのかもしれません。
次に昔の紙媒体のライトノベルのタイトルに長文タイトルがほぼなかった理由について、なぜなぜ分析を行います。
①なぜタイトルが短かった?
長文にすると不都合だから。
②なぜ不都合になる?
紙媒体の本の背表紙に物理的に書ききれないから。
文字数を多くすると文字サイズが小さくなり、他の本より視覚的に目立たない。売れ行きにマイナスだから。
読者がタイトルを記憶しきれないので、口コミによる販促効果を損なうから。
本屋や取次店における受発注において伝票記入が煩雑になる等の管理上の問題が生じるから。
なぜなぜ分析がいまひとつですが、どうやら紙媒体のライトノベルのタイトルが短かったのは、あえてそうする理由があったためといえそうです。また、こうした単行本の場合のタイトル文字数の制約は今もあると思います。そこで、書籍化を狙っている作者さんは、あえて短いタイトルをつけるのではないでしょうか。
もし、私が書籍化する小説を選定する立場なら、本の背表紙の寸法を測って、タイトルが2行になった場合の文字の横幅等まで気にしたいところです。
他の方のエッセイで、面白い小説を発掘するためにあえて短いタイトルの小説を探すという話を読みましたが、上記の理由が背景にあるのではないかと思います。書籍化を狙って書かれた小説のほうが、面白い可能性が高いのはありえる話だと感じます。また、短いタイトルで勝負して、それでもランキング上位にいるなら、それは面白い小説である可能性が高いのは道理であると感じます。
とはいえ、短いタイトルをつけて読まれなければ本末転倒ですので、「シンデレラ 児童労働させられていた私が魔法の力で王子様と幸せな結婚をした話」といった具合に作品タイトルに主題と副題という形で小説の名称を付ける方がおられるのかなと愚考する次第です。