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二人きりの打ち上げ

「準優勝、おめでとう」


 校門を出てから優太がそう声をかけてくれた。

 ようやくその言葉が聞けたけどチョロい女だと思われたくなくて、すぐに喜んだりしなかった。

 っていうかあたしはちょっと怒っている。


「なんでもっと応援してくれなかったのよ? そうすれば優勝も出来たかも知んないのに!」

「いや、だって。みんないたし……クラスメイトの前で話しかけるなって言ったのは美依奈さんだろ」

「時と場合によるの!」


 本当は誉めてもらって嬉しいし、たまには甘えてみたいのに、可愛くないな、私。


「そんなの分かんないし」

「彼氏なら分かってよね。それに体育館からいつの間にか教室に戻ってたし。信じらんない。フツー彼女に駆け寄るよね? てか淳之助はましろに駆け寄ってたよ!」


 喧嘩なんかするつもりなかったのに。

 仲良く帰って誉めてもらうつもりだったのに。

 どんどん思っていたのと全然違う展開になっていき、泣きそうだ。


「行こうとしたよ。けど他のヤツと話してただろ」

「他のヤツ?」


 言葉の意味も気になったがそれ以上に言葉遣いが気にかかった。

 優太は『他の人』とは言うが『他のヤツ』なんて言葉はあまり使わない。


「ああ、檜山のこと?」


 そうだ。試合が終わってまっさきに声をかけてきたのは檜山だ。

 一年の時に同じクラスでそれなりに仲がよくて、いまでもたまに話す間柄だ。

 優太の表情は強張っており、明らかに不満を持っているみたいだった。


「もしかして優太、やきもち?」


 敵意むき出しに『ヤツ』呼ばわりということは気になったということなのだろう。

 思わずにやけてしまった。


「はあ!? そんなわけないだろ! 他のヤツと話してるから声かけなかったんだよ!」

「他のヤツ、ねぇ」


 いつもそっけないからあまり相手にされてないのかと心配していたけど、ちゃんとやきもちとかしてくれるんだ。

 愛されてるって感じがして嬉しい。


「檜山はただのともだち。向こうから話しかけてきただけだし」

「別にそんなこと聞いてないよ」


 プイッと顔を背けるのが可愛い。

 ちゃんとあたしに恋してくれてるんだ。

 あー、マジ好き。だいすき。


「じゃあアイス奢りで許してあげる」

「は?」

「は? じゃないでしょ。彼女に駆けつけなかった罰」

「分かったよ、もう」


 ホントは腕とかしがみつきたいけど、たぶん照れて怒られるからしない。てかあたしも恥ずかしくて無理。



「本当に打ち上げ行かなくてよかったの?」


 アイスを食べながら優太が訊いてくる。今度は普通に訊いているから嫉妬とかじゃなさそうだ。


「うん。あたしは興味ないし」


 優太と一緒の方が楽しいし。


「でもせっかくましろさんとも仲良くなれたのに」

「別に明日も明後日も会えるでしょ」

「そうだけど……なんか試合終わったとき、みんなましろさんに声かけて仲良くしてたけど、モヤってした」

「なんで? いいことじゃん」

「そうだけどさ。美依奈さんたちが練習付き合って、陰口まで言われて……何事もなかったようにましろさんと仲良くするのってどうなのかなって」


 優太は明らかにあたしらに気を遣ってくれていた。

 そういうとこは、昔と変わらない。

 懐かしさもあって、胸が熱くなるのを感じていた。


「いいの。ましろがみんなと仲良くなれたんだから。あたしらは別に感謝されたいとか、そういうつもりでしたんじゃないよ」

「それは知ってるけど」

「それに実際ましろがいて楽しかったし、結果もよかったでしょ? ましろのお陰だと思うな」

「美依奈さんって、優しいんだね」

「はあ!? 優太の方が百倍、いや千倍優しいでしょ」

「そ、そうかな?」

「そうだよ。当たり前だし」


 のけ者にされた子と、同情なんかじゃなく仲良くする。

 それは小学四年のころ、優太があたしに身をもって教えてくれたんだよ?


 じっと見詰めて心の中で伝える。

 でも通じなかったようで、優太は顔を赤らめて目を逸らしてしまう。


「それはそうと淳之助、ちゃんと打ち上げでましろと仲良くなれてるかな?」

「どうかなー? 厳しいだろうね」

「照れ屋だもんね、淳之助」


 照れ屋と鈍感。最低の組み合わせだ

 なんとかしてあげたいけど、また余計なお世話だって優太に怒られるだろうからやめておく。


「ねえ、そうだ! 二人で打ち上げしない?」

「いましてるだろ?」

「そうじゃなくて! カラオケとかいってさ!」

「えー? いいよ」

「行こうよ! ほら!」


 手を握って引っ張ると渋々ついてきてくれる。

 やっぱり優太は優しい。


「なに歌おっかなー」

「僕は苦手なんだけどな」


 思わずいつもの癖で靴を脱いでソファーに座ってしまっていた。カラオケは女子としか行かないからつい無防備な格好になってしまう。

 足と足の間を優太がガン見していた。


「わっ!? み、見ないでよ、変態!」


 慌てて足を閉じてペタンと座る。


「ご、ごめん」

「まあスパッツ穿いてるから別にいーけど」

「う、うん」


 なんだか微妙な返事だ。

 おかしい……


「あー!」


 球技大会のあと、暑いからスパッツ脱いじゃってた!


「み、見えた?」

「ち、チラッとだよ」

「ウソ! ガン見してたくせに!」

「だってあんなに足開くから!」

「もうサイテー! 死にたい!」

「そこまで言わなくても」


 せめてもう少し可愛いの穿いておきたかった。


 自分が悪いのにペチペチと優太を叩いてしまう。

 色んな意味で可愛くないな、あたし。


いつも読んで頂き、ありがとうございます!

これにて『美少女ギャルに『ウソ告白』されたので、騙されたふりして返り討ちにします』第一幕終了です!


ここまでお付き合いいただいた皆様!ありがとうございます!


ウソ告白だと信じて疑わない優太と付き合っていると喜ぶ美依奈さん、完全に勘違いした二人の二人の物語はどうなっていくのでしょうか?


今後もお付き合いいただけると幸いです!



「面白かった」「続きが読みたい」と思った方は、ブックマーク・感想・レビューなどで応援していただけると幸いです!


またページ下部の「ポイント評価」欄から評価点を入れていただけると、作者のモチベーションが上がります!

美依奈さんのいちゃいちゃ度も上がるかもしれません!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いやーみんな拗らせてるな もっとこんなのが見てみたいなぁ
[一言] 第1幕、お疲れさまです。 優太は嘘だって無理やり思い込んでる状態だから、 美依奈ちゃんがもうちょっとだけ素直になれたらね~
感想一覧
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