ゴールデン・ガール
継続が目標。とにかく続けます。
『地雷』とは……
『地雷(じらい、英: land mine)』は、地上または地中に設置され、人や車両の接近や接触によって爆発して危害を加える兵器。 (Wikipedia大先生より)
転じてオタク界隈、特に女性オタク間における俗語として、キャラクターのカップリング組み合わせやシチュエーション等が個人にとって全く受け付けず、耐え難い精神的苦痛を負う程に嫌悪感を感じている状態を言う。“場合によっては血を見る”(ソースは俺)。
現代での死を経て、自分の書いていたラノベ世界に異世界転生した俺は、開始10分足らずで二度目の死を迎えた。魔王として転生した俺を始末するために現れた、もう一人の異世界転生者である、勇者『ミザリィ』が、現代で俺をSATUGAIしたマジキチ読者だと分かった途端、俺の貧弱なハートはストライキを決め込んでしまったのだ。所謂心臓麻痺というやつである。魔王の死因が心臓麻痺……即死耐性完璧のはずなのにねぇ?
そして今俺は、異世界女神の女神待合室で女神チェアに腰掛けている。異世界と言ったら女神、死んだ現代人は異世界転生する前に女神女神女神、場合によっては異世界で命を落としても「ぼうけんはおわってしまった」にはならず女神が出張ってくる。俺が転生したこの世界の女神は、名を『エントラジア』という。だって原作者俺だし。紹介されなくても知ってる……知ってはいるんだ……
『素敵さんへ、てめえはまた死にました☆今ちょっと野暮用で忙しいので席開けてます。時間がたったら勝手に復活するはずなので、それまで資料に目を通しておいてください♡女神エントラジアより♡』
女神がふんぞり返ってるはずの女神デスクの上には、思わずイラっ☆とくる女神メッセージカードと、フォルダが一冊置かれているだけだった。女神放置プレイである。俺の設定どおりのポンコツ女神…いやそれを超えるド級のボケナス駄女神だ。
そして『時間がたったら勝手に復活する』というメッセージにも覚えがあった。俺が転生したライトノベル『チト百合』のラスボス魔王『深紅王』の持つ特殊能力だ。
魔王『深紅王』は、自身に『不死の呪い』をかけている。この呪いのおかげで、魔王は肉体的ダメージで死亡してもすぐに再生してしまう。魔王を完全に葬る為には、ある特殊な条件が必要なのだ。今頃は産まれたまんまの姿でひっくり返り、泡吹いて心停止している魔王こと俺を、四天王の一人『黒衣の魔女』が必死こいて心肺蘇生している事だろう。
「資料…資料っていわれてもねぇ?…この世界、俺の書いてたラノベなんだけど……」
妙な不安を感じながら、俺は女神デスクの上に置かれた女神重要ファイルを手に取った。ファイル名は……
『異世界魔王として転生した素敵さんを絶対殺すために転生した超強いチート勇者について♡』
ふざけた女神ファイル名だけで内容はだいたい予想できたが、見ないわけにはいかない。魔王として転生した俺にとって、今一番必要な情報なのは間違いないからだ。
転生者の本名『岸辺逸子』年齢16歳。
素敵さん作のライトノベル『チート百合勇者は異世界ハーレムがお好き』の愛読者です。よかったですね♡
素敵さんが連載を諦め、クソ展開で主要人物を抹殺して物語をたたんだ事に憤慨し、原作者である素敵さんをSATUGAI。ご存じですよね?そしてその後、彼女御自身もすぐに後追い自殺してしまったのです。あぁ~、悲劇♡
でも、ご安心を♡わたくし超やり手の異世界女神「エントラジア」が救いの手を差し伸べました♡彼女は素敵さん同様、『チト百合』の世界に転生する事になったのです。☆奇☆跡☆
「異世界の女勇者『ミザリィ』として転生するか」という私の問いには二つ返事で快諾いただけました♡「深紅王こそ、この世界すべての間違いの元凶」「絶対に生かしてはおけない」と、ノリノリなご様子でしたよ?
もちろん、素敵さんの設定通り転生時にガバガバなチートステータスを付与させていただきました。グラフは全部振り切ってます♡素手でアークデーモンも絞め殺せますよ?得物は原作通りの聖花剣『マダーローズ』。絶対折れないし刃こぼれもしないし彼女にしかあつかえません♡
それと、転生前から既にぶっちぎりのスペックをお持ちだったようです。
父親は陸上自衛隊特殊作戦群の群長を経歴に持ち、母親は博士号を持つ科学者。容姿端麗才色兼備文武両道、7カ国語を習得、14歳にして飛び級で名門大学進学する程度の知能をお持ちの所謂天才でらっしゃいます。
父親の方針から国外で民間軍事会社の訓練プログラムを受け、各種護身術、武器扱い、近代戦戦略構築に精通していらっしゃいます。
視力は左右両目ともに7.5。
以下取得済み国家資格
『特例第一種衛生管理者』『甲種危険物取扱者』『2級化学分析技能士』『測量士』『二級配管技能士』『発破技士』『第一級総合無線通信士』
以下無資格ながら独学による実質同等の保有技能
『管理栄養士』『解体工事施工技士』『木造建築士』『1級ロープ加工技能士』
追伸……素敵さんが魔王として同じ世界に転生している事をバラすような、野暮な事はしていません♡
それでは、良い異世界ライフを☆
「バケモンじゃねえかあああ!!」
誰もいない女神待合室に俺の孤独な咆哮が空しく響き渡る。なんだよこれ、なんでよりによってこんな『生メアリー・スー』にロックオンされてんだよ。っていうか後半のあの資格の山?!聞いた事もないの持ってるよこの子?!資格マニア?!俺なんか英検5級だよ……7か国語習得って?!16で俺と住む世界違い過ぎない?!何が『作者は自身より利口なキャラクターを創造できない(ドヤァ)』だよ?!魔王で原作者の俺が蛆虫以下に見えるよこれ?!実際あの子俺見るとき昆虫見る目だったよ!
「こ、殺されりゅ…」
否、殺されるだけならまだマシだ。地雷踏んだという理由で原作者を殺すような子が『魔王は不死』という設定を知らないはずがない。俺の事を手厚く監禁し、両足をへし折って玩具にするつもりだろう。ましてや魔王である俺の正体が原作者「素敵文王」である事が知れたらどうなるか、考えるだに恐ろしい。
「あばばばば、はっはやくなななんとかしにゃいと……」
「……さま……す…魔王さ……」
途方に暮れ、凍える子犬のようにガタガタ震えていた俺こと魔王の耳に、聞きなれた声が届く。
「馬杭さん…じゃなかった…『黒衣の魔女』!」
「既に心の臓は動き始めています。お目覚めを……」
「あ、はい」
リスポーンクールタイムは終了。女神不在の女神待合室に神々しい女神スポットライトが差し込むのと同時に、俺の体はゆっくりと上昇していく。復活イベントってやつだ。俺、魔王なんですけど……。
まばゆい光に包まれながら、俺は駄女神「エントラジア」を心の底から罵った。
目を開けば、またあの魔王の間。うねうね生暖かい肉布団を引っぺがして体を起こすと、やっぱり「黒衣の魔女」が傍らに佇んでいた。ってかこの肉ベッドマジでどうにかした方が良いな俺のSAN値がゴリゴリ持ってかれる。まぁそういう設定にした俺が悪いんだけどね?!
「おいたわしや深紅王様……300年ぶりの覚醒に、いまだお体が慣れていらっしゃらないのでしょう……」
「ほんっとすんません」
先が思いやられる……。魔王に転生した俺を殺る気満々で狙っているのは超の付くチート転生勇者。しかも倫理観だけは転生前からマイナス値のサイコさん。魔王の身でありながら、俺は彼女を何とかしてなだめて説得しなくてはならないのだ。しかも、自分が原作者である事をバラすのはバッドエンド確定。きっと世界の半分をあげても、許してはくれないだろう……。
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