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異世界召喚された勇者たちは酒場からでない。  作者: 新居部留源
いつもの夜に~深淵の海豚亭~
8/32

第八話 そして、宴の夜は深けて・・・


ハーラムを見送ると自分の席にだらりと座りなおしそれぞれビールを一気に飲んだり食事に手をつけたりしている。

「しっかしダイはあっちの技術の流出を嫌がるねぇ。異世界物の定石じゃん」

サマジがパスタをフォークでクルクル回しながら話はじめる。

ダイが目くじらを上げて手元にあったおにぎりを持って立ち上がりサマジに向けて投げつける。

「ふんぬっ!!!あほたれー!!

俺にどこぞの異世界モノ作品みたいに自分の実力でもないものでふんぞり返って馬鹿面さげてドヤ顔してろとお前はいうのかーーーー!!ムキーーーーッ」

ダイは怒りで地団駄を踏みながら奇声を上げる。

そんなダイに躍りかかったのはおにぎりを顔面に張り付かせて動かなくなったサマジではなく先ほどまでヘラヘラしていたコマシだった。

「くぉらぁぁぁ!!ダァァイィィィ!!

カルゥアちゃんの作ってくれたものになんてことしてんだぁぁぁ!!やっていいことと悪いことがあんだろぉがぁぁ!!」

ダイに馬乗りになり襟首を掴んで激しく譲りながらキレまくるコマシ。

「あと、食べ物粗末にすんなぁぁぁ!!」

「そっちは後かよ」

おにぎりを頬張りながらリーは冷静に突っ込む。

顔面に張り付いたおにぎりを自らの手でとり食べ始めるサマジ。

「なーに騒いでんの?なに?喧嘩中?めずらしいね」

壁の松明のかがり火の光を反射するような金髪のショートヘアの少女がお酒と食べ物を持ってやってきた。汚い酒場に似つかわしくない品のある顔立ち。幼さのせいかあまり似合っていないが少し濃いめの化粧。この店の一番の売りともいえる大きく胸元の開いた挑発的な給士衣装ではなくその貧相な胸元が残念にならぬようにカスタマイズされたものとなっている。

「ニルスちゃん!!お仕事終わったの??!!」

彼女を見てダイを揺すり倒していたコマシはダイの襟首から手を放しピョンと立ち上がると彼女に一目散に駆け寄った。

「なに?喧嘩は終わり?

そ、とりあえず手すきになったからご飯ついでに

一杯頂こうかなって。お祝いの席なんでしょ?」

ニルスは持ってきた食べ物をリーに渡し椅子を取りに行こうとする。

すでに椅子を持ってきていたコマシは椅子をニルスに促す。

「ありがと」小さく感謝を言葉にして椅子に座るニルス

「ダイちゃん、ニルスが来てくれたよ。起きてお祝いしよう!!」

コマシは寝っ転がってるダイを引き起こしにかかる。

「ぅぅむ・・・・。ひどい目にあった。」

ダイはまだ頭がふらふらしているのか千鳥足で席に戻る。

「俺の方がひでぇよ」

サマジはおにぎりを食べつくしていたが顔はカピカピになっていた。

「何やってんだか。ほらお祝いなんでしょ?席についてカンパイしましょ?あら?ビールがないんじゃないの?カルゥアー、こっちに来る時にビールを4つ持ってきてー」

ニルスはテキパキとテーブルの上をある程度片し他のテーブルの片付けをしてたカルゥアに声をかける。

凛と芯の通った耳心地の良い声にコマシがうっとりした顔でニルスを見ている。

ヒョイと空き皿を持ってニルスは一旦カウンターに戻り、入れ替わりにカルゥアが5つのジョッキを持って席にやってくる。

「・・・お待たせしました」

か細い体格なのに易々とジョッキ5つをテーブルまで運んでくる。

「おつかれさま。カルゥアもゆっくりしていくんだろ?」

サマジが椅子を進める。

カルゥアは少し照れながらコクリと頷くと椅子にちょこんと座った。

ニルスとミーヤが連れ添って席に戻ってくる。

「おっまたせぇー。ご相伴に預かりに参上しましたよん♪」

ミーヤも上機嫌にビール片手に敬礼をする。

「ふむ」

ダイは一同を見渡しニヤリと口を歪めると

「ではとりあえず、ここにいる我が友たちと愛らしき女性達に。

今日は熱い勝負に勝利し、そして良き商談で当面の糧も得た。それを祝いここに皆とカンパイしたいと思う。今日の良き日に。乾杯!!」

ダイは持っていたジョッキを高々と掲げる。

「かんぱーい」

口々に乾杯を楽しげに唱えジョッキを掲げ杯をぶつける。そしてそれぞれジョッキに口をつけぐいぐいと飲む。

「ぷはぁ〜〜、生き返るぅ〜」

「ふぅ。ビール、おいし。」

「・・・ふぅ」

女性陣は仕事の一息も兼ねて本当に美味しそうにビールを空けている。

ダイはそろりとテーブルを離れ酒場の中央に歩み出る。

すでに縁も竹縄、酒場に残るのは真の酒豪と出来上がってもなお酒を煽りたい酒好きのみ。

盛況だった頃の3分の1くらいの人数となっている。

ダイはいつも通り芝居がかった喋りで酒場の誰もに通る声で語り出す。

「勇敢なる冒険者であり酒の神を愛してやまない諸君に朗報だ。今宵、この場に居合わせた愛すべき同士諸君に我々がこの場で得た幸運のお裾分けをしたいと思う。ここよりこの場に振舞われる神酒は全て我々から諸君への贈り物だ。マスター、良いビールの樽を空けて皆に振る舞ってくれたまえ。

さぁ共に呑み騒ぎ、みなの勇敢な冒険譚をこの俺にきかせてくれ!!」

大歓声と大喝采が起こる。マスターは嬉々として樽を酒場の中央へ出しアルフィナともう一人の女性がジョッキを持てるだけ持って樽の周りに群がる酔っぱらいに手渡す。


何事かと2階にしけこんでいたお客も服を着ずに顔を出す。

サマジもヤレヤレといった感じで中央へ足を運び、

ミーヤたちも連れ添ってジョッキ片手に中央へ華やかに踊りでる。

その後ろをひょいひょいとついて行くコマシ。

「まったくせっかくの稼ぎもいきなり浪費かよ」

テーブルに残ったリーはため息をつきつつビールを煽る。

宴の夜は再度幕を開ける。


~ 第一章  完  ~~

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