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異世界召喚された勇者たちは酒場からでない。  作者: 新居部留源
いつもの夜に~深淵の海豚亭~
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第七話 出来過ぎの三文劇

夜も深け始め酒場の入り口では別れの挨拶が飛び交い始めている。

そんな酒場の奥のテーブルではまだ交渉は続いていた。

ダイの話が続いている。

「さて、現在この国は北から魔王軍に攻められている。現在、膠着状態とはいえ押され気味の状況と聞く。そこで求めているのは戦力の増強、もしくは現状打破のなんらかの方法を試行錯誤してると見ている。

我々を召喚したのもその一計といったところだろう。

ハーラムさん、あなたはそこを稼ぎの種と目をつけていると俺は見ている。」

ダイは言葉を区切りビールを煽る。軽くゲップをして話を続ける。

「つまり今回の魔剣も人に手放すのでなく新たな戦力の開発を目的としているのでしょう?。

実はここにいるリーは王国魔術団の団長殿と懇意にしていてね。リー、現状の話を」

話を聞いていたリーは合点がいったと感じでうなずく。

「なるほどね。まぁ団長さんとは色々と情報交換と魔法、召喚などについていろいろ勉強させてもらってるんだ。主に魔法、魔力を道具へ伝達、維持、使用する方法を試行錯誤しているところだね。あとは俺たちを召喚した召喚魔法の改良だな。加えて新たな魔法の道具、武具の作成を試行してるらしい」

リーはここまで話し終え、ハーラムを見てニヤリと笑う。

ハーラムはお手上げとばかりに両手を低く上げ

「なるほど。すでにミカゲルさんと情報交換がなされてましたか。では私の目的もバレバレと言うことですか。」

「ふふん。つまるところ新兵器の開発と生産なのだろう?そのための研究材料として使われるといったとこかろかな。」

ダイはしてやったりという顔をしながらジャーキーにかじりつく。

「いやはや、お見それしました。そこまで読まれているとは。私とミカゲルさんは別の魔剣を2本所持してましてね。この2本は人の手では扱えない剣でしてね。現在の魔法知識ではどうしても解明できず魔剣の複製には至ってないのです。ですがそちらの魔剣を解析できればなにがしらかの進展が得られるのでは?と考えております。」

ハーラムは一息つきビールに口をつけて口の中を湿らせる。

「まぁこれもリーさんと一緒にの作ったえーと「魔力を変換する道具」?でしたか?

その時の知識が要だとミカゲルさんは言っておりましたがね。」

「なるほどね。あの技術の転用かぁ。うーん、たしかに面白い使い方ができそうだな・・・。」

リーは深く考え込み始める。

「その技術の確立のためにこの魔剣が必要なら当然俺の掲示した金額の意味も理解してもらえると思うがね?」

ダイはハーラムを正面から捉えほくそ笑みながら

咥えたジャーキーを噛み千切る。・

ハーラムは頭に手をやり少し考える仕草を入れる。少し思考した後

「ふむ。その金額であなたたちの助力が得られる。と解釈してよろしいのかな?」

「ま、力を貸すのはそちらのリーだがね。」

ダイはリーに目をやる。リーは考え事をしていたが視線に気づき肩を竦める。

「しかし、600枚は流石に横暴ですな。せめて300枚くらいでお願いできませんか?」

ハーラムは胸に手を当て困った表情をする。

「いやいや、天下のルディオ商会がこれから起こす偉業を過小に見積もりすぎではないかね?。550。うちのリーへの報酬込みだよ。」

ダイは立ち上がり大げさに身振り手振りをする。

なんのアクションかはよくわからない。

「我々もたくさんお支払いしたいのは山々ですがいくらなんでも予算オーバーなのです。375、これ以上となると私も諦めねばなりませぬ。どうかここで手打ちにしていただけませんか?」

ハーラムは悲しみと切実さを体全体で表現するかのように体を屈め哀願するかの如く膝をついた。

そんなハーラムにダイはゆっくり近づき同じように膝をつき

「仕方がない。ハーラムさんのたっての願いだ。だが我々もこの地では右も左もわからぬ身、少しでも安心できる地盤を固めたいのだ。475、ここまでが我々の譲歩できるところだ。わかってはくれないか?」

ダイは下から覗き込むようにハーラムの目を見る。

ハーラムはそんなダイの目を見て天を仰ぎ神に祈るように聖印を空に描き

もう一度ダイを見て

「我々の力でできるのは400これが限界です。これ以上は私も折れることはできない。ダイさん、あなたと私のためにこれで納得してもらえませんか?」

ハーラムとダイはまるでロミオとジュリエットのように見つめ合う。実に見苦しい絵だった。

ダイは不適に笑うと立ち上がり、ハーラムに手を出し

「負けだよ、ハーラムさん。金貨400枚、それで手を打とうじゃないか。」

ハーラムも立ち上がりダイの手を取り両手で強く握手を交わす。

「そう言っていただけますか!さすがは賢明なる異世界の勇者。今後も良い関係が築けそうです。」

ハーラムはニッコリ笑い周りを見渡す。

そんな二人の一連のやり取りをみていた3人は

「大いなる茶番だな」

「ぁぁ、見苦しいほどの茶番だ。」

「三文劇でももうちっとましだねぇ」

口々に呆れ文句を口にする。

ハーラムは握手を解き襟を正しコホンと咳ばらいをすると

「では支払いは後日でよろしいですかな?流石に金額が金額ですので準備に時間がかかります。」

申し訳なさそうに目を伏せる。

「かまわんよ。剣はその時引き渡そう。その後はリーが魔術団長と話をするだろう。良い結果がでると良いのだかな」

ダイはニヤニヤとリーを見る。

「善処はするさ。こちらとしても面白いことに転用できるかもしれないしな」

リーは少し楽しげに応える。

ハーラムはそれを聞き嬉しそうに双手を揉みながら

「期待してますよ。しかし私としては一番気になるのはあなた方の世界の文明と知識なのですがね。例えばあのテーブル。お譲り頂くわけにはいきませんがねぇ」

ハーラムが指差すのは全自動麻雀卓だった。

その瞬間、ダイの表情から笑みが消える。

冷徹極まりない目は鋭く細く怒気を帯びていた。

「すまないな。ハーラムさん。我々は愚か者になりたくはない。安易に我々の知識、道具、技術をできる限りこちらに放出したくないのだ。これ見よがしに高度な英知を大事な世界にばら撒いて崩壊させたくはない。わかっていただけるだろうか?」

先ほどまでとうって変わった背筋に寒気を覚える声と話し方に少したじろいだハーラムは

「す、すいません。安直な思考でしたな。、忘れてください」

ハーラムの狙いの本星は思った以上にダイの逆鱗に触れたのをハーラムは内心驚いた。

「いやいや、こちらこそ大人気ない態度をとってしまってすまない。我々のできる限りの助力は惜しまないので今後ともよしなに」

先ほどまでと裏腹に和かにでも人を食ったような笑みを称えながらダイはハーラムにお辞儀をする。

急変ぶりに少し狼狽を隠しきれず

「そ、そうですな。では後日準備ができましたらまた伺わせてもらいます。今日はこの辺で」

ハーラムも礼をしダイに握手を求める。

二人はもう一度握手を交わし

「おや、帰られるのですか?一緒に呑んで行かれないのかな?」

ダイとの握手の後、サマジ、リー、コマシと握手を済ませたハーラムに声をかける。

「いやはやお恥ずかしい話、私は下戸でしてね。もうすでに足元がおぼつかぬのです。自分で歩けるうちに帰宅したいとおもいます。では早めにまた伺いにまいります」

そう言ってもう一度ぺこりと頭を下げるとそのまま酒場の入り口に向いて歩いていく。

「ではまた」

「おつかれさん」

「ハーラムさん。またねー」

「おっつー。早めにたのむぜー」

4人は口々に挨拶の声をかける。

ハーラムはもう一度振り返りぺこりとお辞儀をして去って行った。

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