第二十七話 謀略者の密談
ウェスタンドアを押し開き「深淵の海豚亭」の中へと再び足を踏み入れる。
「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ〜」
すぐに女給に声をかけられる。
酒場はまだ始まったばかりのようで客はちらほら。
だが周りに目もくれず奥のテーブルを目指す。
そこには変わったテーブルに3人の男たちが座っている。
「やぁ、たびたびすまないな。ご足労をかける。まぁかけたまえ、ヘンリー・タレットくん」
正面の小太りの男が声をかけ席を促す。
ヘンリーは座っているメンツを見渡し
「彼が戻ってきたわけではなさそうだね。何の用だい?こちらが忙しいのは知っているだろう?」
ヘンリーは苛立たしげに言う。
小太りの男、ダイはテーブルの上で手を組み
「座りたまえ。ヘンリーくん。少しこちらの状況を君にだけ話しておこうと思いきてもらったのだ。大事な話だ」
ダイは意地悪く笑う。
ヘンリーは不愉快さを顔に出したが促されるように席へ着く。
「今回の件と関係あるのか?」
そう問うとダイは少し難しい顔をして
「まぁ・・・十中八九は関係ありだと踏んでいる。裏も取ったしな。ただ事態の収拾にはひと手間必要だと思ったのでね。君に力を借りたいのだよ」
ここでヘンリーは話の重要性を察して
「わかった。話を聞こう」
そして横に座っていたメガネの男、リーが語り出す。
「これは他言無用、俺たちだけの秘密ということでお願いしたいのだが、この国を攻めていた魔王軍が侵攻を停止したのは知ってるよな?」
ヘンリーは急に話が飛躍したので少し驚きながら
「知ってる。突然なんでそんな話を?」
「まぁ聞いてくれ。この件にはちょっと裏話があってだな。瓢箪から駒というかちょっとした実験の副産物で俺たちは魔王とまぁ、その・・・お知り合いになってだな、そん時に今回の侵攻に乗り気じゃなかった魔王の説得に成功したといういきさつがあるんだ」
リーが少し言いずらそうに話をするとヘンリーは驚き勢いよく立ち上がり
「なっ!!どういうことだ??君たちは魔王のてさっモゴッっ・・・」
大声で叫び出すヘンリーの口をを素早くサマジが抑える。
「おい!!声がデケェよ!ここだけの話っつってんだろ。あとちゃんと最後まで聞け」
ヘンリーは瞬間で熱くなった頭を冷やし両手を上げてサマジを見る。
サマジも素早く手を下ろしヘンリーを解放する。
「・・・すまない。話を続けてくれ」
ヘンリーは椅子に座り直し話を促す。
「勘違いしないでほしいが魔王とのやり取りは、えーと。そうだなぁ念話みたいなもの。
で、伝わるか?ようは話をできるだけなんだ。それで・・・その、趣味の話が合ってね。意気投合して仲良くなったというかなんというか・・・
だから直接関係があるわけじゃないんだ」
りーは一息つき水を飲み話を続ける。
「元々部下に押し切られる形で今回の侵攻を開始したらしいんだが、俺たちとの取引で停戦を約束してもらったんだ。だが、その部下が納得いかず俺たちを暗殺することを条件に開戦を要求してきたらしい。まぁ、魔人ってのは実力主義らしいからそれは止められなかったそうだ」
黙って聞いていたヘンリーが口開く。
「では例の魔人は君らを狙った刺客だと?じゃあなぜ、えーと・・・コマシくんだったか?彼はなぜその刺客を助けたんだ?」
「あいつは多分この話を知らない。そして魔人を助けた理由もシンプルだ。『女の子が襲われてたから助けた』だ」
ダイはニンマリと笑う。
ヘンリーは呆気に取られて絶句している。
「・・・じゃ、じゃあ彼はすでに殺されてると?」
「いや、それはない」
「ないない。あいつが初対面で女に殺されるかよ」
「ないな。そんな簡単な話なら事は面倒なくていいんだがなぁ」
3人は口々に否定する。
「・・・じゃあ彼はまだ生きていると?魔人からは逃げたということかい?」
訝しげにヘンリーは尋ねる。
ダイは首を横に振り
「いや、あいつのことだ。まだ魔人と一緒だろうなぁ。まぁそこら辺は心配していない。問題は事が大きくなっている点だ。街を巻き込み過ぎている。秘密裏に事を片付けるのはもはや無理だと判断している。このまま収束させるにはちゃんとした落ちが必要だと考えているのだよ。
そこでヘンリー・タレット。君の力を借りたいのだ。事を大きくしたのは君だしな」
ダイは椅子にもたれかかり偉そうに座る。
「全く意味がわからない。君らはコマシくんの心配はしていないのか?彼が殺されないと言い切れるのか?事の収束?何をどうしたいというのだ?」
ヘンリーは理解力が追い付かず完全にパニックになっていた。
「まぁ難しく考えるんじゃあ無い。とりあえず街に静けさを取り戻すのが最優先なのだよ。そのために君と・・・彼女の力が必要だ」
ダイは今日一番の悪い笑顔で店の入り口を入ってきた女性を見た。
ヘンリーも振り返り入り口を見る。
赤い髪のポニーテールを揺らしながらウェスタンドアを押し開き入ってきていたのはアルフィナだった。




