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異世界召喚された勇者たちは酒場からでない。  作者: 新居部留源
昼の情景~ミリガンティア市場~
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第二十六話 思い者の逢瀬

結局追加注文までして2人は結構な量を食べた。

とくにヘレンは驚くほど黙々と食べた。

さすがのセイシロウもびっくりした。

「いやぁ、食べた食べた。驚くほど食べたねぇ」

満腹感でうっとりしながらセイシロウは皿にフォークを置いた。

ヘレンも食べるものがないのを確認してフォークを置く。ヘレンはまだ食べそうな雰囲気だったがお皿の山積みをみて流石にここらでやめとくべきだなーとセイシロウは思った。

「美味しかった?」

そう問うと

「・・・悪くはない」

そう答えるヘレン。

「さて、こっからどうしよーかなー」

セイシロウはこの後の行き先を思案する。

ヘレンはふと当初の目的を思い出したがもうどうでもよかった。

自分が躍起になってやってきたことが虚しく感じてしまっていた。

このまま、この男とふらふらと街を彷徨うのでも良いな。と考えてる自分にびっくりした。

店員に代金を渡し会計を済ませたセイシロウは立ち上がりヘレンに手を差し伸べ

「よし、さ、行こうか」

ヘレンはセイシロウを見上げて何か言おうとして思いとどまり、彼の手を取って

「・・・そうだな。行くか」

と立ち上がった。

2人は店を出て手を繋いだまま大通りを歩く。

先ほどより警備兵のグループが増えているようだ。魔法使いらしき者も混じっている。

ヘレンが魔法使いであることを考慮すれば当然であった。

ローブを纏ってない以上バレやすい可能性はあったがヘレンはもう気にしなかった。

ざっと探っただけでもヘレンの相手になりそうな使い手はいない。最悪でもこの場を混乱させてでも逃げおおせるくらいはできそうだと判断したからだ。

意味もなくつないでる手に力を入れてみる。

そうすると横を歩くセイシロウはにこやかにこちらを見てぎゅっと手を握り返してくる。

ヘレンは今まで感じたことない充実感に満たされていた。

前からは遠征から帰ってきたのだろうと思われる冒険者の集団が歩いてくる。旅の成果は上々だったのか大声で談笑しながら今回の旅の振り返りを話しながら歩いている。

その声に多くの者が迷惑そうに振り返る。

警備兵たちも何事かとその集団に視線を送る。

セイシロウたちはいらぬトラブルも嫌なのでその集団をスイっと避けて通り抜けようとしたとき

長い槍をもった男が隣の男にちょっかいをだし、隣の男が反撃として槍の男を力強く押した。

男はよろめき槍が下がる。

その時、ちょうど通り抜けようとしたセイシロウに男の持っていた槍が降ってかかった。

ゴスッという音と共にセイシロウの体制が崩れる。一応回避しようとしたが回避しきれず頭にヒットする。

そして落ちる金髪の髪。

ふらつきながらも倒れるのは阻止したセイシロウであったが、目立つ黒髪がむき出しになる。

「おっと、わりぃ。にーちゃん」

槍の男はヘラヘラとセイシロウに謝ったが

その瞬間、呪文を唱える小さな声が聞こえ

次の瞬間には男たちの周囲に雷撃が渦巻く。

「ぐあああああああああ」

「ぎゃあああああああ」

「ヘレン!!!」

セイシロウはふらつく頭を抑えながらヘレンの手を強く引っ張る。

ハッとヘレンが我に返ると雷撃は消滅し

黒焦げになる前の冒険者たちはそこに全員倒れうめき声をあげていた。

突然の出来事に近くにいた警備兵は冒険者の生存を確認する。そして加害者を探したがその時には2人はすでに走りだしていた。

「いたぞ!!例の黒髪の男だ」

「女の方は魔法を使った!!あれが例の女だ!!」

「追え!!路地裏に逃げたぞ!!」

一呼吸遅れて警護兵の声が上がる。


2人は素早く逃げ出したので追っ手を一歩出し抜いていた。路地裏から路地裏へと入り込んでいく。

だがセイシロウもヘレンも地理に詳しくはない。

2つ3つ路地を曲がったところで行く手の方からも警備兵の声が聞こえてきて足を止める。

「この辺の路地に入り込んだそうだ!!!」

「まず路地を閉鎖しろ。それから虱潰しに当たればいい。誰も出すな!!!」

そう言いながらこちらに向かってくる。

セイシロウはヘレンの手を引っ張り入り組んだ建物の陰にヘレンを引っ張り込む。

セイシロウはヘレンを強く抱きしめて建物の入り口の陰に隠れるように小さくなる。

ヘレンはセイシロウの胸の中で彼を見上げる。

心臓のドキドキが周りに聞こえやしないかと心配なほど脈打っていた。

2人は息を殺して警備兵が通り過ぎるのを待つ。

警備兵はセイシロウたちの建物の近くまで迫っていた。

あと数歩というところまで歩いてきたところで

「おい!!とりあえず閉鎖して待機だそうだ。どうも状況が変わったらしいぞ」

別の兵士が呼び止める。

「どういうことだ?袋のねずみにしたんじゃないのか?」

「いや、よくわからんがヘンリー殿が向こうで追い詰めたらしい。とりあえず逃げられたらまずいから閉鎖を優先だそうだ」

そう話しながら警備兵たちは路地の入口まで戻っていった。


警備兵が去っても二人は抱き合ったまま立ち尽くしていた。

セイシロウはもう一度ヘレンを力ずよく抱きしめて抱きしめた手を緩め狭い空間でヘレンの顔に両の手を添えて覗き込む。

ヘレンもまっすぐとセイシロウの目を見る。

二人の顔は近づき唇を重ね合う。

最初は優しく一度少し離れてもう一度。

静かな接吻は何度も続き

セイシロウは建物のドアにヘレンを押し付け激しい口づけを交わす。

ドアには鍵がついてなかったようで二人の勢いに押されゆっくり開く。セイシロウはヘレンが倒れないようにうまく誘導しながら建物へ入る。

どうやらどこかの物置のようだった。

2人は抱き合い、口づけを交わしながら建物の中へ身を潜めた。

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