第二十三章 捜索者の訪問
日が傾き始めて「深淵の海豚亭」の中にも人が増え始めた。
お客はまだいないが女給たちが仕事場に顔をだし、掃除をしたり食器類の整理をしたりしている。
厨房の方も本格的な仕込みが始まっているようでいい匂いが漂い始める。
そこにウェスタンドアが開きサマジとカルゥアが楽しそうに揃って入ってくる。
入り口でカルゥアがサマジに手を振り店の裏の奥へと消えていく。
それを見送ったあと、サマジはご機嫌に口笛を吹きながらいつものテーブルへ歩いていく。
「よぅ。変わりねーかい?」
座っているのはダイとリー。
2人は静かに座っている。こちらを見ない。
サマジがダイの前のいつもの席に座ろうとした時
ゴスッ!!とダイに足を蹴られる。
「イテッ、なにすんだよ」
痛みで座るのをやめて2人を見る。2人ともこちらを見ない。
そしてもう一度ダイが足を蹴る。
「いたいって、なんだよ?」
「・・・デェトは楽しかったかね?」
静かな声でサマジを見ずにダイが尋ねてくる。
「ばっ、ちげぇよ。ちょっと買い物の手伝いにいっただけだ」
焦るサマジを目の前に
2人はこそこそ話を始める。
「聞きましたぁ?奥さん、ああいうこと言う人って大概コソコソ裏で動く人ですわよね?ぼくはテスト勉強なんてしてません。って言って徹夜でする人でしょう?」
「ええ、奥さん、まさにその通りですわ。店の前まで来ておいて我々に挨拶もなく女の子のお尻を追いかけていくような助平ですからね」
意地の悪い言い方をしながら2人は嫉妬の目でサマジを見る。
サマジは額を抑え頭が痛いといった感じで
「・・・・ああ、悪かったよ。声もかけずに行ったのは。別にただ買い物に付き合っただけだから気にしねぇと思ったんだよ」
サマジは素直に謝った。
「ふふん。で?デートはどうだったんだ?」
ダイはニヤニヤしながら問いただす。
「別にデートじゃねーって。まーでも有意義ではあったな。この世界の買い物ってやつをリアルに見てきた感じだ。俺たちの世界と違って夢と人情に溢れてて楽しかったよ」
少し自慢げに胸を張るサマジ。
「なんだつまらん」
ダイは興味をなくしたように横を向く。
「お前ねぇ・・・・。さんざん蹴りまで入れといてそれかよ」
サマジはやっとこ椅子に座る。
「そんなことよりちょっとまずいことになっててな・・・。」
リーは魔王から聞いた話をサマジにしようとしたところで海豚亭のウェスタンドアが勢いよく開きズカズカと鎧姿の男たちが入ってくる。
どう見ても客には見えない。この街を守る警護兵たちだった。
その中にみたことある茶髪の好青年がいるのを三人は見つける。
「君たち、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
ヘンリー・タレットは一直線にダイたちのテーブルへ早足でやってくる。
「なんだ、ヘタレくん。物々しいな。なにかあったのかね?」
さすがのダイも少しいぶかしげにヘンリーを見る。
ヘンリーはテーブルに座った面々を見渡してから
「やはり・・・か。ここにいない君たちの友人がどこにいるか知らないか?先ほど街の中央広場で魔人と遭遇した。かなり危険な強さの魔人だと思われる。僕が交戦したのだが君たちの友人に邪魔されてね。その魔人を連れて消えてしまった。彼の行先に心当たりはないか?」
その話を聞いてリーはダイの方を見て囁く。
「おい、いまの話って・・・・」
ダイはその話を手を挙げて遮り
「その魔人はもしや女だな?」
そうヘンリーに問う。
ヘンリーは少し驚いて頷き
「ローブを羽織っていたので定かではないが声と体格からしてたぶん女性だと思う。どうしてわかった?」
それを聞いてダイはニンマリと笑う。
「ふふん。なるほどね。あいにくだが今日はコマシを見ていない。ここには顔を出してないからね。彼の行きそうなところにも心当たりはない。
元々瘋癲の気のある男だからな。
まぁ女のあるところがアレの居るところだ。とだけ言っておこう。」
テーブルに肘をつきニヤニヤと笑う。
「・・・ここに戻ってくる可能性は?」
ヘンリーは少し癇に障った感じで眉をしかめる。
「その調子だとコマシと対峙したのだろう?あいつは馬鹿っぽいが馬鹿ではない。ここに君が来て張り込むのは理解してるさ。戻ってくる確率は低いな」
ダイは手でやれやれのジェスチャーをする。
「わかった。一応、店の前に兵を配置させてもらう。
もし、魔人を連れてきたら慎重に対応してくれ」
ヘンリーはそれだけいうと踵を返した。
店内をうろうろと捜索していた兵士たちを集めるとマスターに謝罪をして事のあらましを説明して店を出ていった。
店内に多少の緊張感が残る。
事のあらましがまったく分からないサマジが
「どういうこと?コマシのやつ、魔人の女連れて街を逃走中ってこと?あいつなに考えてんの??」
リーが一応捕捉する。
「あー、うん、ちょうどよくない知らせがヤっさんから届いてたんだ・・・・。どうやら俺たちを殺すためにヤッさんの部下の女が動いているらしいんだわ」
「ん??ナニソレ?つまりその魔人は俺たちへの刺客ってこと?なんでヤッさんがそんなん送ってくんの?ほんとは俺たち嫌われてた??」
サマジがまったく理解できない状況に少し混乱する。
「部下の暴走を止めれなかったらしい。それで警告をしてくれたんだが・・・・まぁ細かくはメッセンジャーを見てくれ」
サマジはスマホを取り出し過去ログに目を通し始める。
「どう動く?コマシのやつ自分が刺客を逃がしてるっての知ってんのかな?」
リーは真面目な顔で悩んでいる。
「さて、な。ただ「女」のことはあいつに任せておくのが一番かもしれないな」
ダイは少し真面目な顔で思案したあとニンマリと笑った。
「アレにかかれば魔人の女幹部だろうが金持ちの熟女だろうが小学生の女の子だろうがあいつの敵ではないだろうからな」
そう言って意地悪く笑った。




