第十六話 カルゥアとオニオンミートのパン
麻袋にいっぱいの玉ねぎを2人はそれぞれ抱えて市場の人ごみをかき分けながら進む。そこそこ重たいのだがカルゥアは苦もなくスイスイと歩いて行く。逆にサマジの方が慣れぬ人混みと持ちにくい麻袋のせいでカルゥアに遅れをとる。
「次はどこに行くんだ?」
足早に歩きなんとか追いつきながらカルゥアに問う。
カルゥアは少し振り返り
「パン屋さん」
と短く答えた。
なんとか市場を抜けレンガの建物が並ぶお店街に出る。市場の周りにはきちんとした店構えのお店が市場を囲むように立ち並んでいる。そのうちの一件にカルゥアは向かう。近づくとパンを焼くいい匂いが漂ってきた。
お店は店先に沢山の出来たてであろうパンが並んでいて売り子は割腹の良い中年の女性が店番をしていた。
カルゥアは女性にペコリとお辞儀して声をかける。
「こんにちは、おかみさん」
女性はカルゥアの声で彼女に気付くと豪快な声でカルゥアに話しかける。
「あらら、カルゥアじゃないか。今日は早いね。
おや、いつもどおり玉ねぎを仕入れてきてくれたのかい?助かるよ!!あたしらが行ってもあのケチオヤジどもはまけてくれないからね。」
おかみさんは豪快に笑った。
なるほど。そう言うことかとサマジは合点がいった。なんで玉ねぎだけ受け取ったのかわからなかったが頼まれてたからか。
「おや、今日はいっぱいあるね。そちらのいい男はカルゥアにホの字かい?なかなか見どころがあるじゃないか」
パン屋のおかみは豪快に笑った。そして玉ねぎを確認すると
「これなら銅貨4枚分くらいあるねぇ。どうする?銅貨で渡すかい?」
おかみさんの問いにカルゥアは首を横に振り、
「現物でお願いします。ラウンドパンとバケット、あとお願いしていたパンとオニオンミートパンを1つ」
カルゥアは最初から決めてたと言わんばかりにテキパキと答える。
サマジはまたしても驚愕する。
すげぇよカルゥアさん、すでに玉ねぎで倍の金額のパンと交換だと・・・わらしべ長者かよ・・・。
サマジのカルゥアへの尊敬度はうなぎのぼりだった。
「りょうかい。いつも悪いねぇ。ほんとに助かるよ。」
おかみは金額分のパンを見繕い大きいパンの入った袋をサマジに、小さい紙で包んだパン2つをカルゥアに持たせる。
「あといつもの数のパンをお店のほうに。これがその分の代金です」
カルゥアは何十枚かの銅貨を代金をおかみさんに渡す。
「あいよっ!いつもありがとね!ちゃんと配達しとくね。また頼むよっ。そっちのにーちゃんもうちのパンは美味いからまた買いにきなさいな」
おかみさんは愛想良く2人を見送る。カルゥアはにこやかに微笑みお辞儀をしてパン屋を後にする。
サマジの抱えたパンはとても旨そうな匂いを漂わせている。起きてから何も食べていなかったサマジのお腹が大きく鳴った。
横を歩いていたカルゥアがびっくりしてサマジを見る。
さすがに恥ずかしすぎてカルゥアを見れず空を見上げて吹けもしない口笛を吹くふりをするサマジ。
クスクスと笑ってたカルゥアは持っていた油紙の包みからパンを取り出す。
「マサシ、さっきのパン屋のおすすめの一つよ。オニオンミートのパンなの。マサシにたべてもらいたくて」
カルゥアは優しく笑いながらパンをサマジに差し出す。
「お、おう。いただくぜ」
照れながらサマジはパンを受け取りかぶりつく。
よく炒めたオニオンにミートソースのような味わいのある具をパンで包み込んだ一品だ。そりゃあ元の世界のパンに比べれば固く味気なくはあったが本物の竈門で焼いたパンは格別に美味かった。
なるほど。このパンのための玉ねぎか。
カルゥアの買い物上手に舌を巻くサマジであった。




