第十四章 カルゥアとお買い物
ダイとリーが魔王から魔人の刺客の話を聞く少し前のこと。
サマジは昼過ぎに起きて抜けない酒で少しふらつく頭のまま大あくびをしながら酒場へ向かっていた。
昼過ぎの繁華街はぽつりぽつりと歩く人しかおらず夜の賑わいとはうって変わって閑散としている。
ぼけーっと周りを見渡しながら歩いていると「深淵の海豚亭」に着く。店に入ろうとウエスタンドアに手をかけようとした時、店の中からドアが開き小柄な女の子が出てくる。危うくぶつかりかけてサマジはヒョイと一歩後ろへ飛び退く。
出てきた女の子はキョトンとしていたがサマジを見つけるとはにかんで笑い
「マサシ、いらっしゃい」
と言った。カルゥアであった。
胸元まである長い黒めの髪は太陽光の下では青く見える。身長の高いサマジとは頭2つ分以上差があり、おっとりした物腰のせいで小柄なのに大人びて見える。いや、聞いたところではそこそこなお年頃だということだがサマジは正確な年を知らなかった。容姿はかわいらしいよりだが少し倖薄そうな様相が男の保護欲をそそる、つい手を貸したくなる。そういう雰囲気を常にまとっていた。
「よっ。カルゥア。今から休憩で帰るのか?」
そう声をかけるとカルゥアは首を横に振り
「ちょっとお買い物を頼まれて」
そう言いながら市場の方を見た。
「ふぅん」
生返事をしながらサマジも市場の方を見る。
その後店内を覗き込みほとんどだれもいないこと、そしていつもの席にダイとリーがいるのを確認して少し考えると
「んじゃおれも一緒に行っていいか?」
サマジはカルゥアに問う。
一瞬なにを聞かれたのかわからなかったカルゥアが言葉の意味を理解した時ちょっと慌てながら
「あ、う、うん。」
カルゥアは俯き照れながら答えた。
「うんじゃ、行きますか」
サマジは入り口からすっと離れ市場へ向かう方向へ向きを変えカルゥアに進むよう促す。
2人で歩き始めてからカルゥアの様子をうかがいまじまじとカルゥアの服装を見ながらサマジは聞く。
「ところで、その格好で市場までいくのか?」
カルゥアは??を飛ばしながら自分の格好を確認する。いつもの給仕の服装だ。胸元は大きく開いてありほどほどの大きさがあるカルゥアなら谷間が見える。ウエストはキュッと絞ってありスカートは当然短め。歩き辛そうなヒールで小柄なカルゥアもそれなりの高さを得ている。全体的にキュートだが刺激的だった。
「なんか変?」
カルゥアは変なところがわからない。といった感じでクルリと回り自分の身だしなみをチェックしている。
サマジは上目遣いで天を見て、なにか言いたげに頭をワシワシと掻き
「ま、いっか」
とカルゥアに笑いかけた。2人は市場に向かってゆっくり歩きなおす。
「なにを買いに行くんだ?」
サマジはトコトコと横を歩くカルゥアに訊ねる。
「パンの注文。野菜、果物。ビールの樽注文。後肉屋で何か」
指折り数えるカルゥア。
「買い物の内容がアバウトだな。オイ」
「わたしの裁量に任されてる。」
えっへんとやや胸を張るカルゥア。少し自慢げだ。しかしサマジの視線は胸元に誘導される。
ちらほら行き交う人がいるだけの道を二人はのんびり歩きながら市場へ向かう。繁華街への道から大通りに出ると少し活気の溢れ始める。昼時は冒険者の姿は少ないが商人や街の住人などで通りの賑わい中央は馬車や馬なども多く走っている。
2人は市場に向かって方向転換をする。
他愛のない話をしながら。
カルゥアの少し刺激的な格好も特に目立つほどではなかった。それでもすれ違う男たちの視線を集めずにはいられなかったが本人はまったく気にしてもいないようだった。逆にサマジの方がいたたまれなくなり
「カルゥアさん、目立つからこれを羽織りなさい。」
とお父さんのような口調で自分の羽織っていたジャケットを肩にかける。
キョトンとしたカルゥアは理由はわからなかったようだが少し嬉しそうに
「ありがとう」
とにこやかに微笑んだ。
サマジはドキリとして目をそらし天を見た。気恥ずかしくなったのだ。
「さて、どっから当たるね?」
照れてるばかりではいかんと思ったサマジは気を取り直しカルゥアに向き直り問いかける。
少し考えるように小首を傾げたあと、
「お野菜から、かな」
と言い市場へ歩みを進める。
サマジはその後につづくのだった。
徐々に市場の騒がしさが耳を打つようになる。




