新天地を目指して
新たな章の始まりです。
今後ともよろしくお願いします。また後書きにはキキョウの挿絵を作者自ら描きました。是非ともご覧下さい。
また作者の別作品
「おっさん船医ですが処刑されました。しかし生きていて美少女美女海賊団の船医やっています。ただ、触診をセクハラというのはやめて下さい。お願いします」https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n7090eo/
と「こちら冒険者ギルド、特殊調査官! 貴方に魔獣の情報をお届けします!」https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n0492fr/ 更新しました。
宜しければご覧下さい。
特に後者は作者が「小説家になろう」の冒険者ギルドについて考えて描いた作品なので是非とも見てもらいたいです!
では、新章始まります。
ヴァルドニアの動乱から1週間が過ぎた。
その間俺達はエドワードの提案したラルフォール公国を目指していた。
その最中、村に寄っていた。
そこで俺は泊めてもらった宿の人から今困っている事があると話を聞いた。
二体の"粉砕熊"と呼ばれる魔獣が村に現れるようになってきたらしい。
"粉砕熊"はその名の通り岩をも粉砕するほどの一撃を誇る熊だ。そして粉砕熊が好物なのは蜂蜜だ。よって巣が有る木をその手で粉砕し、蜂蜜を貪るのだ。
生息する一帯は"粉砕熊"によってなぎ倒された木々が乱立するらしい。
同時に"粉砕熊"はかなりの強力な魔獣としてその名を馳せている。一匹現れたら複数の村が廃村に追い込まれると言われるほどだ。
更にタチの悪いことに"粉砕熊"は確かに蜂蜜が好物なのだが肉食でもある。人間でも"粉砕熊"に勝てる人間は限られているのだから村民程度では相手にならない。
そしてそんな粉砕熊は村の家畜を襲い、さらに味を占めたらしい。冒険者に頼もうにも金が無く、このままでは村を捨てるしかないらしい。
だからこそ俺は村で"粉砕熊"が現れたと聞いた時に倒す事を決意したのだ。
<ガルゥ!!>
「そっちに六匹回り込んできたのです!」
木の上で周囲を見回しているアイリスちゃんと鼻で探知しているジャママから警告が飛ぶ。
厄介な事に"粉砕熊"は"不浄な鬣犬"を連れていた。どうにも共生関係というか、粉砕熊のおこぼれを貰っているらしく、ピンチになると湧いてくるのだ。
「ふん、所詮は地に縛られた獣よ。此方の前には立つ塞がることも出来ないわ【蠢く氷波】【氷槍】」
<ギャウンッ!!>
キキョウが地面を凍らし、身動きが取れなくなったところへ頭上から【氷槍】を穿った。
やっぱり魔法は便利だ。キキョウは瞬く間に"不浄な鬣犬"を掃討する。面制圧ならキキョウはこの中で飛び抜けて高い。
<グォォオォッ!!>
「おっと、余所見している場合じゃなかった!」
"粉砕熊"の一撃を躱す。
俺の元居た位置は"粉砕熊"の攻撃で陥没する。
やはりあの一撃は脅威だ。
だが倒すには俺は近づくしかない。
「とは言え中々に毛皮が厚いんだよな、これが」
当然だが毛皮と言うのは斬るのが難しい。粉砕熊はその毛皮を防具に出来るほどの柔軟性と強度、耐斬性を持っている。
更にはその下にある筋肉だ。生半可な一撃では筋肉で止められてしまう。月凛花であっても突破出来なかった。
これが【高斬撃】のような技能があればまた別なんだが。
「なら、新しい絶技を試してみるか」
脳裏に浮かぶはジャモコ。
あの時の彼の【回転斬り】は凄まじかった。実はあの時ちょっとだけ髪の毛が掠めてたりもする。だからこそ俺はその時の情景を思い出す。
柄の握り方はこう。後は態勢、剣の角度、動き。
「見切ったッ!!」
躱すと同時に跳躍し、首と胴体、それぞれへと滑るようにして筋肉と毛皮の隙間を突くようにして斬る。
同時に二本の剣を使った回転して斬る【回転斬り】を俺なりに改良した絶技、"流水落花"。
これにより粉砕熊はその場に倒れた。
そしてその様子をエドワードは"粉砕熊"を抑えつつ見ていた。
(あの技はジャモコ殿の得意とした【回転斬り】……いや、あれは両刃剣を両手で握って放つものであり、違っても両方に剣を握ってするものではない。それに彼は別々の箇所にほぼ同時に攻撃を加えた)
<グォォォンッ!!>
「こっちも決着をつけましょう。【盾撃】【大盾潰し】」
<グォッ!?>
盾に齧り付く"粉砕熊"をエドワードは【盾撃】で弾き、【大盾潰し】で倍以上はある体格差を諸共せず、地面に押し倒した。その後【突撃槍】で心臓を穿ち、"粉砕熊"は動かなくなった。
「凄いね。まさか熊ほどの相手でも押しのける事が出来るだなんて」
「元より【大盾潰し】は相手を押し潰す為の技能です。相手が魔獣であろうと潰す事には変わりませんから」
「成る程。さて、この辺りを荒らしていた魔獣はこいつらで間違いないな」
「間違い無いかと」
「アヤメさ〜ん! 受け止めてください!」
「おっと」
ジャママを伴って木の上からアイリスちゃんが降りてくる。
それを俺は受け止めた。
「えへへ、アヤメさんなら受け止めてくれると信じてました!」
「信じてくれるのは嬉しいけど、危ないよ。というかジャママ、頭齧らないでくれるかい? 髪の毛が痛むんだけど」
≪ガウガウ≫
アイリスちゃんが嬉しそうに俺の胸に頭を擦り付ける一方ジャママはパックリと俺の頭を噛んでいる。ジャママも前と比べて大きくなってきてるからその力は強い。最も流石に本気ではないようだがーーあ、まって痛い痛い! 俺の心を読んだのか!?
「あっ、何やってるのよ!」
キキョウもこちらの様子に気付いた。
「何そんな羨ましっ、……アヤメに迷惑かけてるのよ! 降りなさい!」
「へぇーん、いやです! この格好ならアヤメさんの温もりを感じるのです。わたしは出来てもぼっちは重くて無理ですね! なんたってそんな重そうな胸を……お尻も……ほんとに……大きい……。くっ」
「……何で自分で言って悔しそうにしているのよ」
「別に悔しがっていません! いーまーせーんー!」
いっーだ! とアイリスちゃんは白い歯を剥き出しに威嚇する。何というか、この二人が姉妹に見えてきた。
「とにかく降りなさいよ!」
「い、いやなのです!」
「ちょ、アイリスちゃん苦しっ。キキョウ、あまり揺らさないでくれっ。ちょっ、ジャママ!? 力を強めないでくれ!」
もはや破茶滅茶だ。
ま、まずいこのままだと収集が……。
その時、カァンッと槍を地面に叩きつける音がした。
全員が硬直する。何時もの無表情のエドワードはこちらを見ていた。
「お遊びもそこまでにして早く魔獣の始末をしましょう。臭いに誘われてまた魔獣が現れたらどうするのですか? そんな事も分からない訳ないでしょう? でしたら、そのような下らぬ争いはよしなさい」
「あ、す、すまない」
「ご、ごめんなさい……」
<ガゥ……>
「むぅ、此方は悪くないのに……」
エドワードに指摘され、俺たちは揃って頭を下げる。
何というか抗い難い何かがある。エドワードは一国の元騎士団長だからか、そういった覇気という奴がある。
その後、魔獣の処理をする俺達だが俺は自ら仕留めた"粉砕熊"の前で腕を組んで悩んでいた。
「う〜ん……」
「魔獣の死骸なんか見てどうしたんですか?」
「いやね。さっき俺が使った"空花乱墜"だけもちょっとイメージとは違ったんだよね」
「どういうことですか?」
「あぁ、本当ならこの魔獣の首と胴体を狙ったんだけど、首を斬り落とす事が出来ていないだろう? 逆に身体の方は大きく斬り裂かれている。これだけ斬れるなら逆ならまだしも、切り取り易いはずの首が斬れず、分厚い胴体の方が斬れた事に違和感がね…」
「確かに言われてみればそうですね…」
アイリスちゃんも一緒になって粉砕熊の死骸を覗き込む。
俺はうんうん頭を唸らすもわからない。
「ふむ。アヤメ殿、少々武器を見させて貰っても?」
「ん? あぁ、構わないよ」
剣を逆さにし、柄の方を差し出す。エドワードは俺の剣を受け取ると刀身をじっと眺める。
「……これはジャモコ殿の剣ですね」
「わかるのかい?」
「えぇ。式典の時に彼が装備しているのを見たので。……持って来てしまったのですか?」
「い、いやあの時君に対抗するのに必要な俺の目に敵う武器がそれしかなかったというか……。不味かったかな?」
「まぁ、構わないと思いますが。どの道負けたのならば武具を奪われる事に対して否応もないでしょう。それでアヤメ殿が少しばかり思ったようにいかないと言ったのはこの剣のせいですね」
「どういう意味だ?」
「此方のジャモコ殿の剣……銘は"刺斬剣イザイア"でしたか。こちらはどちらかと言うと突きの方を重視した剣なのです。その為、もう一方の剣と比べて横幅なども狭くなっております。勿論斬る性能もありますがやはり突きの方が優れています。胴体が切れた方は、そちらの。首を狙ったのはこちらの剣だったから魔獣の損傷に差異が出たのでしょう」
「なるほど」
つまり本来の用途とは別の使い方をしていたわけだ。
どうりでうまくいかないわけだ。
「やはり勝手が違うと結果も違うものだね。イメージだけじゃうまくいかないものだ」
「そこまで謙遜することはないでしょう。寧ろ、勝手の違う剣をここまで扱える貴方の腕に驚嘆します。普通なら両手で扱う剣を別々に装備して……。それにどうもアヤメ殿は『騎士』が剣を扱う上での基礎、土台といいますか。その部分が出来ている感じがします。一体どこで剣を習ったのですか?」
「えっ。あぁ〜昔退役した騎士の人にちょっとね……」
正確には勇者の修行として当時の太陽国ソレイユの騎士達と手合わせした事もあったが、聖剣が徐々に扱えなくなってきてからは俺は彼らに言わせれば邪道と言って良い戦法を取るようになった。
しかしそれでも『騎士』としての彼らに鍛えられた根幹としての部分が染み付いてしまっている。しかし、それを正直にエドワードに言うわけにはいかない。
どう誤魔化そうかと笑いながら考える。
するとキキョウが助け舟を出してくれた。
「ちょっと、話してないで早く血抜きをしてよね。じゃないと凍らせられないわ。皮や肉が傷んでも良いの? 貴方が言いだしたことでしょ?」
「……確かにそうでした。私も自ら貫いた魔獣の下処理をするとしましょう」
「今更だけど貴方解体とか出来るの?」
「騎士の下積み自体で行ったから最低限は出来ます。最も冒険者のように【解体術】の技能を有していないので手際では劣りますが」
「そう。でも解体はお願いするわ。此方は劣化しないよう凍らせておくから」
「つくづく魔法とは便利なものですね」
「ふふん、もっと褒めても良いのよ?」
そのまま二人は倒した魔獣の解体を始めた。
俺はホッと息を吐く。
「危なかった……キキョウには感謝だな」
「ぼっちもたまには役に立つのです。それでアヤメさん実際使い心地はどうなんですか?」
「悪くないよ。確かに彼に語った通り
そうと分かれば突きの方を重視するようにすれば良いだけだ。
「でも両方別々の用途の武器だなんて頭こんがらがりません? 同じ性能のを買った方が良いと思うのです」
「それもあるけど……実は俺ちょっとワクワクしているんだ」
「わくわく?」
強く意識はした事はなかった。だが用途が分かったのならそれに適した技術を磨けば
「突きと斬り、どちらもちゃんと扱えるようになればより戦術は広がる」
両手で剣を扱うようになり、俺は確かに技が増えた。
"柳緑花紅"も"飛花落葉"も両手で扱う技だが、これは個に対しての絶技だ。"流水落花"なら別々の相手に、広範囲へと攻撃も可能となる。
勿論剣そのものの威力は両手で持った方が上なので一長一短だ。技能の俺は自らの培った技と経験で戦うしかない。ならそのための手札が増えることは大歓迎だし、何より強くなっていくことを実感出来るのは素直に嬉しい。
もっともっと強くなって人々を救わないと。
「戦術を広げるのも良いと思いますけど、それよりもまずもう少しまともな装備を着ましょうよ。商業都市リッコで買った時から装備が変わってないのです」
「……確かにそうだ」
カッコつけたつもりだけどアイリスちゃんには通じなかったらしい。
……しまらないなぁ。




