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番外編4 熾烈な戦場《下》

残念ながらどちらの大賞も落ちてしまいました。誠に残念ですがこれも結果です。

大賞受賞者の方、おめでとうございます。

 赤い熱線が戦場を駆ける。

 これまでにない圧倒的なエネルギーによる破壊の光がユウ達に迫ってきた。


「ま、待て!? まだオレは……ぐあぁぁぁ!!!!」


 人間と魔物をも一緒に周囲をなぎ払う一撃。

 その砲撃にナデルも巻き込まれた。

 尚も続く収束焼却砲(ビーム)はその場から避難したユウを追って来る。


 ユウの忠告のお陰か、クリスティナが直ぐに【聖障結界】を張り、その余波から自身とメイを守った。


「仲間ごと撃ち払うだなんて!」

「メイさん! 此処は危険です! 今すぐ離れないと!」

「でもっ、ユウくん!」


 メイが叫ぶ。

 ユウも【加速(アクセル)】を使ってその場から離れるも収束焼却砲(ビーム)はそれでも追ってくる。


 余りにも桁違いの威力と射程であった。

 背後に迫る収束焼却砲(ビーム)を見ながらユウは考える。


(このまま行けば味方に当たる……! 一か八か、【聖光顕現】で)

「ユウにい!」


 空から声がして、直ぐ様上に跳躍する。

 ユウが居なくなった場所を、収束焼却砲(ビーム)が通過し、やがて収まった。


「助かったよ、ファウパーン。キュアノス」

「へへっ、空から見えてすぐに助けに行かなきゃって思ったんだ。オイラとキュアノスならどんな奴からも逃げ切れるぞ!」

<キュルルッ>


 鼻を掻いて誇らしげなファウパーン。キュアノスも嬉しそうに鳴き声をあげる。

 二人がユウを救った。


 その様子に少し和んだユウだが、すぐに気を引き締める。


「ユウにぃ、あれが話していた……」

「あぁ、『砦城』だ。僕も、見るのは初めてだ」


 過去にフォイルと一緒にこの戦場を訪れた時も奴は現れなかった。基本的に『砦城』は勇者がいない時、人間と魔族との小競り合いの時に現れては砲撃を加えてくる。


 それが今、魔王軍の攻勢に伴って姿を現した。

 遠目から感じる威圧感。巨大で重厚な岩の体。一度の砲撃で大地を抉り飛ばした収束焼却砲(ビーム)の威力。

 どれをとっても通常の魔族とは比較にならない程の脅威であった。


 ユウは気を引き締める。


「だけど、チャンスでもある。奴を倒せば、このトワイライト平原での脅威は著しく下がる」

「だけどユウにい、あいつデカさが半端ないよ! 今も『竜騎士』の人達が果敢に攻撃を加えてるけど、傷らしい傷も……うわっ!?」

<キュルッ!!>


 『砦城』が現れると共にそれを討ち取らんと投入された『竜騎士』を相手取る隙間を縫って、収束焼却砲(ビーム)がユウ達に向けて放たれる。それをキュアノスが躱す。

 周囲の『竜騎士』も果敢に攻撃しているが、全く堪えた様子がない。


「ダメだ、ユウにい! あの『竜騎士』達も頑張ってるけど、全く攻撃が効いてるそぶりがないよ。カチコチだ!」

「見た目通り、かなりの強度を誇る身体らしいね……」


 交戦する様子をじっと見つめる。

 砲台以外にも武装しているようで全身の至る所から迎撃の為の小型砲台による砲撃が開始されているが、収束焼却砲(ビーム)は沈黙している。


 やはり、連射は出来ないらしい。


(それにあの砲台を撃つ時、『砦城』は必ず体を固定する)


 余りの威力に自身すらも動かなくなる。

 その際は他の武装も攻撃が止まる。


 再び収束焼却砲(ビーム)が放たれた時ユウは確信した。


 そして、その砲撃に一人の『竜騎士』が巻き込まれた。


(っ!! ……だめだ、落ち着くんだ。今焦ったら『砦城』に勝てない。確実に、倒すんだ)


 頭に考えを巡らせ、勝利の為の道筋を建てる。


「……よし」

「ユウにい、何か思い付いたのか?」

「あぁ、僕に考えがある」

『おぉ、なんだ旦那。何か思い付いたのか?』


 オーウェンからの通信が入る。

 "二対の耳飾り(ピア・イヤリング)"を改良、増産した結果ユウ達は今全員がこの通信機を持っていた。

 通信にはメイとクリスティナも割って入った。


『ユウくん無事!?』

『ユウさん、このままでは前線が崩壊しますっ、何か手はありますか?』

『まっ、そういうこった。俺も流石にあれを砕くのは無理そうでな。対抗する手段があるのなら教えてくれや』

「うん、うまくいけばいけば『砦城』を倒す事が出来る。最低でも大きな損傷を与えられる。だけど、その為にはみんなの力が必要なんだ。……力を貸して欲しいんだ」


 作戦を語ると皆から力強い返事が返って来た。

 唯一メイだけが反対したが、これしかないと言うと通信機から了承の返事が返って来た。

 これで後はうまくいけば大丈夫だ。


「この作戦はファウパーンとキュアノスが一番重要なんだ。頼めるかな?」

「あぁ、行くぞキュアノス! オイラ達の力を見せてやるんだ!」

<キュルルッ!!!>


 力強い返事が返って来た。

 頼もしいよと言葉を掛け、ユウは強い意思を携えて、『砦城』を睨む。


「行くぞ、僕達の力でアイツを倒す! 奴を古びた銅像へと逆戻りさせるんだ!!」







「くそぉぉぉっっ……!」

<ギュイィィッッーー>

『ーーーーーー』


 周囲を飛び回っていた最後の『竜騎士』を、砲撃により消し炭とする。

 これにより、全ての『竜騎士』が撃ち落とされた。『砦城』は次は太陽国軍を消し飛ばそうと砲を向けた時、此方に向かってくる生体反応に気付いた。


『ーーーーーー』


 勇者。最優先目標。

 『砦城』は直ぐ様砲台をユウ達へと向ける。


 他の『竜騎士』達は既に全滅した。邪魔するものはない。


 放たれる収束焼却砲(ビーム)。死をもたらす熱線が迫る。


「キュアノス! 【回避】」

<キュルルゥゥッ!!>


 すんでのところでキュアノスが回転して回避する。


 『魔獣使い』は技能(スキル)によって魔獣の力を向上させる事の出来る職業(ジョブ)である。魔獣と絆を結んだ"使い主"は、己の技能(スキル)を"使い魔"に施すことで本来の魔獣の力以上の力を持つ事が出来る。


 キュアノスは他の『竜騎士』とは大きさが劣るが、その分飛行能力に優れていた。乱射される砲撃を悉く躱すファウパーンとキュアノス。


 ならばと 収束焼却砲(ビーム)を薄く広い、広範囲攻撃へと切り替えた。

 砲身が広がり、収束し出すエネルギー。


「【どうか私達に、慈愛の灯火を、神のご威光(フラッシュ)】」


 その瞬間、強烈な光が『砦城』の前に煌めいた。光に紛れユウ達の姿が見えなくなる。


「【深く包み込む霧よ、を隠したまえ、霧の吐息(ミストレス)


 更には濃霧が発生し、視界を妨害する。


 だが『砦城』は一切躊躇する事なく砲撃する。収束焼却砲(ビーム)は濃霧を切り裂き、天にまで届かん程に雲を貫いた。


<ギュゥゥウゥッッ!>

「キュアノス!!」


 辛くも直撃を避けるも尾に掠ったキュアノスが悲鳴をあげる。だが、その目は真っ直ぐと前を見据えている。

 思いを受け取ったファウパーンは声を張り上げる。


「あぁ、行こう! 絶対にユウにいを届けるんだ! 【速度上昇】」

<キュルルルルッ!!>


 更に加速する藍色飛竜(キュアノス)


 切り開かれた濃霧の隙間からユウ達を発見した『砦城』は更に迫るユウ達を腕から迎撃の為の雨あられの銃撃を開始する。


「【聖空斬】」


 それをユウが聖剣により全て弾き落とした。


 再度焼き払おうと砲台にこれまで以上のエネルギーを溜める。

 その時だった。


『ーーーーーー』


 急な衝撃に『砦城』はその巨大な体の体勢を崩した。視線を向けると足元に『砦城』からすれば小さな人間がいた。


「よぉ、随分楽しそうに空に向かって玉遊びしてたじゃねぇか」


 不敵に笑う大剣を構えた男ーーオーウェン。


「これだけデカブツなら外しやしねぇ。もう一回行くぞ、【筋力向上】、それからの【大巌砕き】」


 先程の霧はユウ達を隠す為ではなく、オーウェンの姿を隠す為のものであった。前線にいた彼は、注意がユウに向いてる隙に『砦城』へと馬を走らせ接近していたのだ。


 意識の外から強烈な一撃を受けた『砦城』、その岩の巨躯に罅が入り、膝をつく。

 それだけでユウへと向けた標準がズレ、虚しく収束焼却砲(ビーム)は空を切る。


 そして遂に、ファウパーン達は『砦城』の近くまで来られた。


「ユウにぃ!」

「うん! ありがとう皆!」


 キュアノスの背中からユウが飛び出す。


「『砦城』! この地で君に焼き払われてきた人達の無念、この僕が晴らす! 【聖光顕現】」


 聖剣が呼応し、白く光り輝く。

 『砦城』もまた、迫り来るユウを何とかしようと限界を超えたエネルギーを砲台に集中させる。


 先に動いたのはユウだった。

 彼の狙いは初めから、『砦城』につけられた砲台であった。


 聖剣から放たれた一撃は、『砦城』の砲台の中へと誘われ巨大な爆発が起きた。


 収束焼却砲(ビーム)はその名の通り、収束するエネルギーが膨大で精緻な砲台の中へと【聖光顕現】が入った事により、エネルギーは逆流し、連鎖的な爆発が起きる。


「うぐっ」

「おわぁぁあぁぁ!?」


 余りの爆発に空中にいたユウと足元にいたオーウェンが吹き飛ばされる。

 その二人をクリスティナが爆発の熱から守る為【結界】を張り、転げる二人をメイが【水粘液(アクア・ジェル)】で受け止めた。


「やりましたかっ……!?」

「いや、まだだっ!!」


 クリスティナの声をユウは否定する。

 上がる砂煙に炎を油断せずに睨む。


『ーーーーーーー』


 『砦城』は生きていた。

 ユウは吹き飛ばされた時に、『砦城』が砲台を切り離した(パージ)、されたのを並外れた動体視力で確かに見たのだ。


 しかし、それでも損傷を防ぎきれなかったのだろう。『砦城』は身体の至る所が欠け、罅割れ、欠損していた。満身創痍といっても良い。


 だが、それでも尚健在だ。


 睨み合う両者。


 やがて『砦城』は不気味で無機質な円形の瞳だけを粉塵の隙間から覗かせながら向こうへ消えて行った。

 それに伴うように各地の魔獣も退いていった。


「……退いた、か」

「ユウくん」

「うん。わかっているよ、メイちゃん。深追いは駄目だ。向こうには、ここ以上に魔族と魔物がいるだろう。それに罠もあるに違いない」

「そうじゃなくて、こらっ!」

「い、いひゃいよ! 何!?」


 メイがユウの頬をつねる。


「あんな砲台の前に身を晒すような真似をして! 下手したらファウくん達も含めて消し炭になっちゃう所だったんだよ!? わかってる!?」

「わかってる……けど、あの時はあれが最善だったんだ。時間を与えたら、『砦城』は僕じゃなく、太陽国軍の方に砲撃を加えるだろう。そしたら、魔物の侵攻を抑えきれない可能性があったんだ」

「そんなの私だってわかってる。わかってるけど…………やだよ……また……失うなんて……」

「? 何て……」

「っ、なんでもない! とにかく! 次はあんな危険な事しないで!!」


 メイはその後もユウを叱りつける。


「や、やばい。メイねえ激おこだよ。キュアノス、辛いだろうけどもう少し上に居よう。な?」

<キュ、キュルル……>


 頭上ではファウパーン達がメイに怯えていた。

 その様子を見ていたオーウェンが、年長者らしく宥めた。


 その後、いなくなった『砦城』について語る。


「しっかし、旦那の力も化け物だが、アイツももっと化け物だな。普通、あんな大爆発が起きて生きているか?」

「魔族はどれも異形です。並外れた生命力を持つ事も不思議ではありません」

「確かに魔物もタフだしな。あとよ、身近で戦った感想だが……奴ら、()()()()()()ぜ」

「それは……確かにわたしも感じました」


 魔王軍の強化を肌で感じ、これまで以上の激闘をこれから繰り広げる事になると感じる一同。

 そこへユウに助けられた騎士達がやって来た。


「勇者様! ご無事でなによりです! 貴方方のおかげで我々は此度の魔王軍の侵攻を防ぐ事が出来ました。此処に、貴方方への感謝を申し上げます」

「いいや、僕は『砦城』を完全には倒せなかった。それに……彼らを助けられなかった」


 距離が遠すぎたのもあるが、それ以上に『砦城』の対空能力が高かった。もし無策で飛び込めば、ファウパーンとキュアノスとはいえ確実に撃ち落とされただろう。


「……あの方々もまた、国を、民を守る為にその命を懸けて戦いました。勇者様の勝利に貢献できたのならば、彼らにとってこれ以上ない誇りでしょう。貴方様は此処にいる生きている兵士全員の恩人なのです。その事を忘れないで下さい」


 騎士の言葉は慰めでもあったが、それ以上にユウは倒せなかった事を悔いていた。


「『砦城』には我々も幾度も煮え湯を食わされてきました。あれだけの傷、流石の八戦将だとしても直ぐに戻るのは不可能でしょう。……勇者殿、此度の戦貴方方によって我々は勝利する事が出来ました。今此処に最大級の感謝を申し上げます。総員、抜刀!」

「「「はっ!」」」


 騎士達が剣をかがけて、礼を尽くす。

 己を讃える声を聞きながら、ユウは『砦城』の消えた方向を見つめる。


(『砦城』……次こそ必ず仕留める。死んでいった人達の為に)


 ユウは新たに決意を胸に抱いた。






 一月後。


 魔界の魔王城の一室にて、偵察に赴かせていたそれらの一人から報告を受けたマーキュリーは実験していた手を止めた。


「負けた、と?」

「はい、トワイライト平原で戦局を見ていましたが最終的にこのような結果になりました」

「例の……あぁ、私が指示した三人組はどうなりましたか?」

「全員敗死しました」

「そうですか。やはり一般的な魔族では最早勇者を止めるのは難しいということですね」

「一応それなりには戦えていたようですが……」

「ただの魔族で倒せるのならば、八戦将という存在が勇者に対する抑止力として必要ありませんよ。八戦将は魔王様を守る要であり、対抗馬としての存在。やはり、他の魔族では勇者を討ち取るのは不可能と考えてよろしいでしょう。まぁ、これ自体は前の勇者の時から薄々感じ取っていたのでさして驚きもありませんね。ですが、予想よりも魔物の被害が大きいのはやはり『真の勇者』の戦略のせいですね」


 てっきり前線で思い切り暴れるかと思ったら、ユウは後方に位置しつつ劣勢になった所を聖剣の遠距離からの攻撃でこちらの戦力を削ってきた。


 例え遠距離攻撃は力が落ちるとしても、元々魔物に対しては過剰とまで言える聖剣の力だ。その効果は絶大だった。

 予想よりこちらの被害が大きくなってしまった。


「だけど、本来の目的は達成しました」


 今回の作戦の本命。

 それは『真の勇者』側の戦力を測る事にあった。


 『真の勇者』も確かに強い。『迅雷』を倒した力は驚異といっても過言では無い。だから今度は直接目の前の配下を送り込み、情報を取らせた。

 『真の勇者』の情報も集めたが、それ以上にマーキュリーは、勇者の仲間の方の情報を集めた。


「さてさて、大分資料が集まりましたね。『真の勇者』とやら。大方の技能(スキル)についても把握出来て来ました。やはり『偽りの勇者』の時とあまり遜色はないようですね」

「これもマーキュリー様が張り巡らせた諜報活動の賜物です。今回の攻勢も勇者側の力を確認する。その為に起こしたのですから」

「『偽りの勇者』との違いは仲間との連携を重視する方向だということですか。組ませた魔族も、一時追い詰めかけましたが、その後向こうも同じく連携し、あっという間に此方は瓦解した。やはり、勇者パーティの方も侮り難いですね」

「その通りです。……そのせいでアレ(・・)も損傷を受けました」

「ふーむ、やはり前の勇者とは色々と異なりますね。向こうは誰もが独断専行気味で、殆ど連携など組みませんでしたから。まぁ、そのかわり一個人としてはそれぞれがかなり強かったのですが」

「今の勇者パーティの方は前と比べて個々では劣りますか?」

「劣ります。ですが、後衛と前衛をキチンと分け強敵相手には有機的な連携を組んでくる。後衛も前衛もいける己を中心とした連携、ある意味理想に近いですね。今まで気付きませんでしたが聖剣は汎用性が高いのです。勇者が指揮の立場にいるだけでこうも違うとは……、そして彼らのチームは応用性がかなり高い構成です」


 一個人による圧倒的な武力による戦闘。全体を見通し、あくまで連携を主体とした戦闘。

 どちらも一長一短だが、今の勇者の方が厄介であるとマーキュリーは判断する。


「……ですが、隙はありそうですね」

「マーキュリー様?」

「見なさい。勇者が攻撃を加えた箇所を。こちらとこちら、同じ危機に陥った所でも勇者は人の数が少ない所を先に援護している。本来であれば、こちら側を先に助けるべきです。でないと、向こう側に無視出来ない陣形に穴が開くところでしたから。つまり、人が死ぬ事を恐れている。人数が少ない所の方が先に死ぬ可能性が高いから、先に助けたということです」


 見受けられる甘さ。

 大の為に小を切り捨てる事が余り出来ていない。アレ(・・)を相手する時は動かなかったらしいが、それとてもはや助けることが出来ないとわかっていたからだろう。

 なら、己が動けば助けられる人が多数いる場所だったら?


「ならば答えは簡単。次は市街地で、市民のいる所(・・・・・・)で戦闘を行えば良い。それに『真の勇者』には通常の魔族で対抗出来なかった。ですが、彼らの仲間は別です」


 次に向かわせる八戦将の候補は決まった。

 あとは時期と場所と魔族の組み合わせをどうするかだ。


「それでアレ(・・)についてはどうなさいますか?」

「そうですね、後で確認に参りますよ。『真の勇者』の攻撃によって損傷したのなら、損傷箇所から攻撃の威力、傾向、射程を大凡割る事ができますから」

「勝手に弄ったらあの人(・・・)が怒りませんでしょうか?」

「問題ないでしょう。そもそもいないのでバレませんよ」


 笑みを浮かべるマーキュリー。


「まぁ、不貞腐れるのはわかっていますが。ですが、彼は人間界での実験(・・・・・・・)で、戻るのはだいぶ先ですよ」


 態とらしく手を叩く。


「さて、話は終わりです。貴方達も帰って来た魔族から人間側に変わった事はないか情報を聞き出しなさい。それと、死体に関してはいつも通り私の実験室に運んで起きなさい」

「はっ」


 それらが部屋から退室する。

 マーキュリーは早くも人間側が華々しく戦果を報じる新聞に目を向ける。


「『砦城』を撃退……ね。今は喜んでいると良いですよ。別にアレ(・・)が壊れても我々には痛くも痒くもないのですから。八戦将ですらないモノを」


 手に持つ杯を新聞にぶちまける。


「最後に勝つのは我々です」


 濡れた新聞に写る勇者達の顔が黒く滲んだ。

次回からまたファイルの話に戻ります。

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