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燃え盛る火の手

此度、HJネット大賞2019の一次選考を通過いたしました。応援してくれた読者の皆様、本当にありがとうございます!

 あれから2週間が経った。


 その間に色んなことがあった。


 先ずは放棄された山の砦で反乱軍の首脳陣と合流した。全員がピエールさんを歓迎していた。俺はその時、反乱軍に参加している人達を見たけど、誰も彼も武装しただけの一般人だった。


 兵士も居たけど数は多くない。これで本格的に反乱を起こしても、騎士団を突破することが出来ない。ピエールさんが俺に依頼を持ち込んだのには、やはり戦力的な面もあるのだろう。


 それともう一つ。

 道中幾つかの村を見たが何処も彼処も貧困に嘆いていた。

 それを見て俺は、ピエールさんの言うことがあながち間違いではないんじゃないかと思い始めていた。今はまだ、確信はしていないけど。



 そんな中、俺たちは食糧の買い出しをして欲しいと頼まれた。これから本格的に行動を起こすのに必要だという。


 そんな訳で、俺は今パラシータ達を含んだ三十人ばかしの反乱軍の人達と町に向かっていた。場所は《エルヴィス》という町らしい。


「パラシータ、君もこっちに来て良かったのか?」

「ピエール様は今、これからの針路について反乱軍の首脳連中と話し合っている。他の護衛が付いているから問題ない。それよりもこっちも重要度が高いからな。自分が回された。それに自分は《エルヴィス》出身だからあの町の事は詳しい」

「そういえば、村を見たがどこもかしこも余裕があるとは言えない。その《エルヴィス》という町は食糧に余裕があるほどに安定しているのかい?」

「そうだ。《エルヴィス》の町は今時珍しく治安が安定している所だ。そこで一度補給をして再度別の拠点の反乱軍へと合流する。本当ならば《レイク(あそこ)》で一度身を潜める予定だったが、騎士団の追撃で殆ど物資を持って来ることが出来なかった。元々反乱軍にもそれほど余裕がない。だから補給が必要だ」

「あの数の反乱軍を養えるだけの食糧もないのか……」

「そうだ。国境に近い《レイク》や《エルヴィス》のような町は稀な方だ」


 なら、他の町も今まで見てきた村のような状況である可能性が高いのか。それを王は騎士団の武力で押さえ込んでいる。民を大切にしないと、国なんて運営出来るはずがないのに。


「《エルヴィス》の町を治める奴は、国王に対して不満があると聞く。今までは反乱軍が話しても首を縦にしなかったが、ピエール様が合流した今、話せば必ず力になってくれるだろう」


 そう語るパラシータ。

 そして、もうすぐ《エルヴィス》に着くという。

 だが、遠目から見えた異変に俺は気付いた。


「……? 待て、あの町火があがってーー」


 《エルヴィス》の町からありえないはずの灰色の煙が上がっていた。




 その日は普通の一日となるはずだった。

 いつも通りに起きて、働いて、食事をして、寝る。

 家に帰れば家族が待っていて今日やった仕事を笑いながら語って食事を取る、そんなたわいの無い日常。


 だがそれは唐突に崩された。


「おやめください! それは今年の冬を越すための備蓄です! それがなければ民は冬を越せなくなる!!」

「やかましい! これは反乱軍に渡す為の物資であったんだろう。全く、とんだ反民を国は抱えた事だ。エドワードめ。やはり奴は甘い。こんな輩を見過ごすほどに」


 必死に抵抗するのはこの町を代表する貴族だった。

 現れたのはこの国の騎士だった。

 瞬く間にこの町の兵士を制圧すると、溜め込んでいた食糧と武器を民家に至るまで奪い始めた。


 ジャコモは練りつく貴族を蹴り飛ばす。

 周囲で悲鳴があがる。


「何故我々を……我々が貴方様たちに一体何をしたと言うのですか!」

「分かってないな。貴様ら平民は国家の所有物(・・・)。そんなヤツに反乱の疑いがあるというだけで罪なのだ」


 ジャコモは剣を抜く。


「な、何をなさるつもりですか?」

「知れたこと。国の騎士団に逆らったのだ。反逆罪で貴様を処分する。それに反乱軍との関わりがあるという情報もある。当然の報いであろう」

「そんな。どうか、どうか他の町民だけにはご慈悲を……!」

「関係ない。反乱とみなした者は全て消す。後に残るは愚かな民だけだ。放っておけば飢え死にする。下手に騒がれては厄介だからな」


 その言葉に貴族は目を見開く。

 ジャコモが剣を貴族に突き刺そうとした時、横合いから飛び出した男性が貴族を抱えてその場から退避した。


「あん?」

「あ、貴方は……」

「いけっ! 向こうに仲間がいる!」

「は、はい!」


 貴族は駆けて逃げ出していった。

 (アヤメ)はそれを見届けて目の前の鎧の男に剣を構える。


「貴様何者だ。邪魔をしてただですむとは思っていないだろうな?」

「俺が何者であるかなんてどうでも良い。そっちこそ、名乗りもしないのだからな」

「はんっ! さては貴様俺を知らないな? ヴァルドニア一の騎士であり、ヘタイロイ近衛騎士団団長ジャコモ様だ! 」


 『騎士』という名に俺はすぐさま身構えた。脳裏に浮かぶはエドワード。彼も同じ『騎士』であり、目の前の相手が国一番と言う以上油断は出来ない。

 更にはヘタイロイ近衛騎士団。ピエールの話に出たエドワード直下のユサール遊撃騎士団と並ぶこの国を守る為の盾だ。


 だけど……。


 俺は周りを見る。

 周囲に広がる火の手、悲鳴、瓦礫。

 こんな光景をつくるのが、この国の騎士だと。……ふざけるな。


「何故国を守るはずの騎士団が町人を襲っている? これは明らかな虐殺だ!」

「それはこの町が反乱軍と通じているとの通報があったからだ。やはりこの町は反乱軍と繋がっていたらしいな。全て根絶やしだな」


 ……実際には違う。ここに来たのは食糧を買うためだし、偶々だ。だけど状況的にそうとられても仕方ない。過去に関わりがあったのは確かだし、俺たちも叛意させようという気持ちがあったのは確かだろう。


 だけど、それはまだしていない。


 今それを弁明した所で意味はない。ならばやる事はひとつだ。


「そんな横暴を許す訳にはいかない。それに君達がやっている事はただの略奪だ。看過する訳にはいかない」

「貴様に許す、許されるの道理はない。構えろ! コイツを殺せ!」

「「「ハッ! 」」」


 離れていた他の騎士が俺を囲む。

 そのうちの1人が背中から襲いかかってきた。


「【斬撃】」

「くっ!」


 『騎士』の技能(スキル)によって強化された一撃を剣で受け止める。


  強く、重い一撃だ。

  だが、色々と甘い!


 確かに単純な技能(スキル)を使っての力なら目の前の騎士の方が上だろう。


 だが、それだけだ。

 技術(・・)なら俺の方が上だ!


 俺は瞬時に左手を柄から離すと同時に相手の騎士の懐に飛び込む。騎士はいきなり近付いてきた俺に面を食らっていた。

 剣での拮抗を保ちつつ、瞬時に左手を相手の上から両手の隙間に通して自らの右手を掴んだ。


 これで騎士は俺に拘束されたもの同然だ。ここから逃げようにもその為には剣を離さなければならない。騎士にとって剣は命。それは不可能だ。


 俺はそのまま騎士の右足の後ろに踏み込んで腰を捻り、上越しに地面へと投げつけた。


「ごはっ!?」


 例え身体を鎧で覆っていても中身は生の人間だ。当然衝撃は貫通して、相手に損傷を与える。


「何だと!?」

「馬鹿な!」

「怯むな! 我々は『騎士』である! たかだか『剣士』に負けるはずがーー」

「それはおごりが過ぎる!」


 上段から剣を振りかざす俺に気付き、防御しようとする。だが、剣を振りかざすのはフェイントだ。俺は剣の軌道を変え、騎士の出来た空間に向けて横薙ぎをする。目指すは相手の剣の(グリップ)。急な剣の動きについていけずに、騎士は簡単に剣を弾き飛ばされた。


 そのまま俺は一度剣を仕舞って、相手の腕を掴んで後ろへと捻りあげる。


「いつっ……!」

「こいつ!」

「ま、待てッ、俺を斬るな!」

「なっ、ぐあっ!」


 躊躇した騎士に、盾とした騎士を蹴りつけ二人まとめてぶつけさせる。鎧は重い。いきなりぶつかれば強い衝撃が走り、立てなくなる。


「マルク! ギール! がっ」


 仲間に呼びかけ、余所見した騎士の顔に膝蹴りを食らわせる。当たりどころが悪かったのか気絶する。

 これで四人。


「くそ! 何なんだこいつ! 我々がこんな一人相手に簡単に!」

「一人だからこそ、だ!」


 人が一人に対して相手出来るのは4〜5人が限界だ。それはそれ以上の人数で囲むと同士討ちの危険性が出てくるからだ。


 それこそ、エドワードの時みたいに盾を前面に押し出して、長槍で此方を突くか遠距離からの攻撃をすれば俺も簡単に相手に踏み込むことはできなかっただろう。


「落ちつけ! 予想よりもこいつは強い。だが、所詮は軽装な男だ。一撃与えればすぐさま死ぬ。ヘタイロス近衛騎士団の戦術を見せてやれ! 旋風刃の陣!」

「「「りょ、了解!」」」


 ジャコモの指示に従い、残った騎士達が俺から少し離れると包囲したまま周囲を回り始める。この陣形、一人に狙いを絞らせない為にか!


 だが、次の瞬間矢の雨が騎士達を襲い掛かってきた。


「ふん!」

「な!? 何だと!?」

「アヤメ、こっちは我々に任せておけ」

「このような横暴……許すものか!」

「一人で戦うなよ! 奴らは腐っても『騎士』だ! 手強いぞ!」

「おのれぇ! 下民風情が!」


 パシラータと彼に率いられた反乱軍の兵士達が騎士達と戦闘状態になる。その中にはキキョウも居た。なら、少なくとも大丈夫だ。


 その隙に俺は指示を出していたジャコモと対峙する。


「ちっ、どいつもこいつも逆らいやがって」

「当たり前だ。こんな非道な行いを黙って見過ごせる訳がない」

「国が行う事に悪などあるものか。これは国家を揺らがす反逆の芽を摘む正義だ。お前が誰だか知らんがここで俺に逆らうとは選択を誤ったな【二段刺突(ダブル・スピット)】」


 ジャコモは素早く二度突きを行う技能(スキル)を発動させる。

 喉と心臓を狙った剣筋は鋭い。だけど、その動きは酷く単調に見え、俺は難なく躱すことが出来た。


「見切っただと!? ちっ、だがこれで終わりだ、【高斬撃】」

「ぐっ!」


 上段から振りかぶる【高斬撃】を俺は剣で受け止める。生半可な鉄すら割いてしまう技能(スキル)の一撃は防げたけど比べ物にならないほど、重かった。


「はん! これは防げなかったようだがぁっ!?」


 俺は身体を捻って思いっきりジャコモの顎を脚で蹴り飛ばした。予想外の一撃だったのかゴロゴロと転がるジャコモに俺は追撃するも彼は寸での所で横薙ぎを払って来たので俺は動きを止めざるを得なかった。

 だが今のでわかったことがある。


「はぁはぁ……ぐっ、き、貴様っ。このジャコモ様の顔を蹴り飛ばすなど」

「いや……本当に君がヴァルドニアで一番の騎士なのか?」


 確かにジャコモは強い。【高斬撃】という【斬撃】よりも上の技能(スキル)を所持していることからそれは分かる。だが、とても国一番とは思えない。他の騎士達もエドワードが指揮したみたいな洗練された動きと比べてギクシャクしている。

 言うなれば練度不足、実践慣れしていない動きだった。


「これならエドワードの方が厄介だったかな」

「エドワード? エドワード・ジェラルド……! 貴様! 俺があんな腑抜けに劣ると言うのか! あんな何も決められず、()()()()()()奴に!」


 エドワードの名を出した途端にジャコモが激昂する。

 そこには並々ならぬ敵意があった。何か気に触る事があるのか? 


「【高斬撃】」


 ジャコモは怒りに身を任せ剣を振るった。先程よりも剣筋は荒い。しかし、鋭い一撃だ。


 とはいえどの攻撃もまともに当たれば今の俺の装備を貫ける程の威力だ。剣で受け止め続けるのも耐久面が心配だ。当たらないよう回避する。


「小賢しく躱しやがって! 逃げることしか能がないのか!」

「逃げるのも立派な戦術さ!」


 なおも剣を振るうジャコモから回避しながら懐からアイリスちゃん特製のあの煙玉を投げる。


「ぐ、ごほっ痛っ。あ、が。煙玉だと!? だがこんな姑息な手段で俺を倒せると思うなよ、【回転斬り】」


 ズバァッ! と空気を切り裂く一撃が繰り出される。ジャコモはこれで俺を仕留めたかと思っていたがそれはただの木の棒だ。本当の俺はジャコモの懐にいる! 


「なんだと!?」

「守る為でなく、奪う為の剣なんて軽い!」


 俺は剣の柄で思い切りジャコモの喉笛を打った。彼は慢心してから、頭や喉を守る為の頭鎧をつけていなかった。一度ならず二度も顎を打たれた彼はよろける。


 俺は更に彼の腕を掴み、右足をジャコモの足の後ろに駆け込み、そのまま腰を捻って巴投げの要領で叩きつけた。最初に騎士を倒した時とほぼ同じ手法だ。


 受け身を取れず、頭からぶつかったジャコモは脳震盪を起こし気絶する。


「かはっ……!」

「お前には剣で倒す価値もないよ」


 そのまま倒れたジャコモを俺は一瞥する。彼は気絶したらしく、動く事はなかった。


「ジャコモ団長!?」

「そんな!」

「今だ! 今の内に取り囲み制圧する!」


 動揺した騎士らに、一斉に反乱軍の兵士が攻勢に出る。


「ぐあっ!」

「き、貴様ら!」

「くそっ、退け! 退けぇ!!」


 騎士よりも数で此方(こちら)が勝っている。それでも『騎士』一人倒すのに通常は十人以上の『兵士』が必要なはずなのだが、練度不足と動揺しているからか本来の力を発揮できずに徐々に制圧されていく。俺もジャコモを奪還しようと襲ってきた6人ばかりの『騎士』を無力化しておいた。


 やがて《エルヴィス》を襲った騎士達は半壊状態になりながら、退却していった。


 俺は一息つく。とりあえず、虐殺は止まった。


「無事か?」

「あぁ、そっちも大丈夫だったみたいだね」


 戦闘を終えたパラシータがこっちに近寄ってくる。


「驚いた。まさかあのジャコモを倒すとは」

「エドワードと同等だと苦戦したかも知れないけど彼は自分の技に驕っていたからね。その隙をつけた。そっちは騎士らの方はどうだった?」

「負傷者が何名も。死人はいない。しかし、何人か取り逃がしましたな」

「そうか……」

「それなら心配ないかしら」


 見れば姿を消していたキキョウがズリズリと十人はいる騎士達を引きずって来た。全員足や腕、口が凍りついている。

 え、なんか風貌から生贄を運ぶ魔女にしか見えないんだけど。ほら、そこの兵士とかドン引きしてるよ。


「逃げようとしたのはこれで全部よ。馬の脚を凍らせたら簡単にコケて捕まえられたわ」

「そうなんだ。あの、一つ聞きたいんだけどキキョウって力強いのか?」

「ん? アヤメからは見えないと思うけどこの騎士達と地面の間に氷を作ってるから引きずりやすいだけだよ。それよりも! 何か言うことないかな?」

「あぁ、よくやってくれた。ありがとう」

「ふふーん、これくらい此方ならお茶の子さいさいよ。もっと褒めても良いのよ? 」


 誇らしげに胸を張るキキョウちゃんに褒めちぎる。彼女は機嫌良さそうにフードの上から少しわかるくらい耳が震えていた。


「ぼっち、アヤメさんと戯れるのもそこまでです」

<ガゥガゥ>

「アイリスちゃん」


 戦いが終わったのを見たのかアイリスちゃんも来た。


「なによ、此方(こなた)だって頑張ったんだからこのくらい」

「それよりも襲われていた人々の救出が先なのです! 褒められるのは後でも出来ます! そんな事もわからないのですか!」

「あ、あう……わ、わるかったわよ……」


 アイリスちゃんに一喝されたキキョウが勢いを失い、しょぼくれる。


 そうだ俺もこんな事をしている場合じゃなかった。

 襲われていた人々を助けなくては。








 騎士達を拘束し終えた反乱軍は被害にあった《エルヴィス》の町の救助に努めた。

 すぐに使いを出して、離れた所にいたピエールの反乱軍本隊も合流するように促し、その間に人々の救助する。

 

 でも数が多い。だから俺も手伝う。キキョウも火傷を負った人に氷で冷やしていく。ジャママもその持ち前の嗅覚で人知れず傷つき倒れた人を見つけたりした。


 中でも忙しく動き回っていたのはアイリスちゃんだった。彼女は自らの持つ『聖女』の力で、薬草で傷を治すのを装い多くの人を癒した。結果怪我人は多くいたが死傷者はいなかった。


「ふぅ……死人が出なかったのは幸いかな。早い段階でこの町に着いたからジャコモ達が本格的に虐殺を始める前に防げた」

「アヤメ殿」

「これは、ピエールさん」


 本来なら隠れ家にいるピエールさんも、この《エルヴィス》の惨状を聞き、この場に現れた。その事に町の人も騒めく。


「まさかヘタイロイ近衛騎士団までもがこのような蛮行を行うとは思ってもおりませんでした。彼らは本来であれば我が国を守る為の騎士なのに。今でも信じられません」

「だが泣いている人が沢山いる。彼らの日常が壊されてしまったから。それも本来なら国を守る騎士らの手で」

「そうですな……。恐らくこの事は瞬く間にヴァルドニアに激震となって広がるでしょう。……言い方は悪いですが、これにより他の領も決起する可能性が高まりました」


 後半の声は俺にだけ聞こえる小さな声だった。

 ピエールさんは先を見据えて今回の事を、盛大に喧伝するらしい。国を守る騎士団が、町を襲ったと。


 確かにピエールさんとしてはその方が勝率が上がって良い事だろう。しかしその言い方はやはり不謹慎に聞こえた。


「失礼。この場で話すことではありませんでしたな。アヤメ殿らが捕らえたヘタイロイ近衛騎士団ですが、今は拘束しています。武器の方も手に入りました。もし宜しければ後で確認くだされ」


 ピエールはすぐさま、町の中心人物達の方に向かった。これからどうするか話し合うらしい。


 俺は辺りを見回す。

 アイリスちゃんが傷を負った子どもを治しているのが見えた。


「アイリスちゃん」

「あっ……アヤメさん」

「あぁ、立ち上がらなくて良いよ」


 立ち上がろうとするアイリスちゃんを制して、水を渡す。


「反乱軍の医療の人も合流した。アイリスちゃんも、少し休んだ方が良い。ずっと働き詰めだっただろう」

「そう……ですか。そうですね……。ほんのすこし、だけ。やすませてもらいます……」

「……アイリスちゃん、本当に大丈夫か? 顔色が」

「大丈夫です……。怪我人は出たけれど、誰も死ななくて……本当に……よかっ…た……」

「アイリスちゃん? ……アイリスちゃん!? アイリス!!」


 アイリスちゃんはそのまま倒れてしまう。

 何度も呼びかけるもアイリスちゃんからの返答はなかった。









 倒れたアイリスと呼びかけるアヤメ。


「あの力……やはり……」


 アイリスが人々を治す際の様子をどろりと濁り澱んだ目で見ていたパラシータが呟いた。

おっさん船医と新しい筆者の作品『こちら冒険者ギルド、特殊調査官! 貴方に魔獣の情報をお届けします!』も更新しています。

よろしければ、ご覧ください。

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