湖の大食漢
その後、俺たちはこの町で宿を取る事にした。宿泊町として名高い《レイク》は、宿泊先に事欠かない。
その際に選んだ宿である話を聞いた。
この町の名産品である魚介類を取る湖に、最近とある巨大な魔魚が住み着いたらしい。そのせいで魚が一切取れなくなったという。
冒険者はどうかと聞いたらどうやらこの町には冒険者ギルドは存在せず、前に来た流れの冒険者も自身の手に余ると依頼を受けずに立ち去ったらしい。
なら国はどうしたのか。幾ら魔物の被害でないとは言え、町一つに影響を及ぼすほどの魔獣が現れたなら何かしら対処すると思うんだが。
その事を聞いたらどうにも歯切れの悪くなり詳しい事情を得られなかった。
どちらにせよ、国があてにならないなら町で何とかしようとなったらしいが、何故かわからないが今は湖に回す戦力がないという。
変な話だ。町には兵士がいるのを俺はこの目で見たんだが……。その事にキナ臭さを感じなかった訳じゃないけれど、実際に困っている人がいる。
なら俺が動くには十分だった。
「此処がルガールタ湖か。うん、広いな。それに凄いな。見る角度によって湖の色合いが変わるのは幻想的だ」
大雑把な地図で記された場所と一致する巨大な湖を見て俺はそう零す。
ヴァルドニアで三番目に大きいこのルガールタ湖は、澄んだ青色から緑色、黄色、エメラルド色、オレンジ色……とにかく様々な色合いが鮮やかに混じり合い、感嘆する程の美しい風景を映し出している。
「季節と天候によっても変わるらしいですね。恐らく湖に存在する"万色藻"もせいかもしれませんね。あれはほんの僅かな水温や餌によっても色合いを変えますから」
「へぇ。やっぱり、植物ってのは凄いな」
「そうですよ! 植物は偉大です。今度故郷を見せてあげます。木々から木々へ蔦の橋があって、常に"提燈の灯実"で照らされて凄く綺麗なんですよ!」
「あぁ、楽しみにしてるよ」
そんな会話をしながら、俺は人々に迷惑をかける魔魚がいるであろうルガールタ湖を睨みつける。
「さて、来たは良いがどうやって例の住み着いた魚を探そうか」
「ん? だってあの町ここの魚を名産品にしてるんでしょ? なら船があるんじゃないの?」
「船もなぁ。例の巨大魚に破壊されたらしいし、小舟程度じゃ簡単に転覆させられてしまうだろう。確か10メートルぐらいあるって言っていたな」
「10メートルはデカイわね。それじゃ、海に出るぐらいの船じゃなきゃ転覆されるのも無理はないわ」
「ふっふっふー、わたし良い案が浮かんじゃいました!」
「アイリスちゃん?」
「ちみっ娘?」
<カァウ?>
「良いですか、二人とも。魚なんですから釣り上げれば良いのです」
アイリスちゃんは背後の森に向かって歩き、その内の一つの木に手を触れる。
「【植物よ、わたしの願いを聞いて、分かって、手伝って下さい。ーー我は森の守り手、汝の同胞なり。永遠に結ばれし契りは、決して破られる事なく、我らに根付いている。ーーだから、お願いします】」
アイリスちゃんの詠うような詠唱に、森が騒めき出す。
やがて木々や植物が絡まり合って一つの巨大な竿が出来上がった。この魔法を俺は知っている。
「何度見ても凄いね。エルフの固有能力である【木霊との交信】前にラティオ君を守っていた時にも使っていたね」
「ふふん。詠唱と違って【木霊との交信】は常に詠わなきゃ意味がないですけど、その分唱えている最中は自由に動かせるので応用が利くのです。どうですか、ぼっ……あっ」
【木霊との交信】を使えないキキョウに気付いたのかアイリスちゃんがしまったという顔になる。なんだかんだいってアイリスちゃんもキキョウの事を配慮しようとしている。
しかしキキョウはそんな事をどこ吹く風と気にした顔をしていなかった。
「何、その顔。別に此方は気にしていないわ。別にそれが使えなくても此方は氷を扱えるもの。別に此方に負い目とか感じる必要はないわよ、ちみっ娘」
「むぐっ、……ちょっと悪い事言ったかなって思ったわたしが馬鹿でした」
「へぇ、貴方にも罪悪感とかあるのね。なら此方にアヤメを譲りなさい。そうしたら許してあげるわ!」
「いやです! 渡しません!」
「いやだから俺は物じゃないんだけど」
またも喧嘩する二人を宥めつつ、早速アイリスちゃんが作った竿に餌をつけることにした。
餌は途中で狩った鹿だ。因みにジャママが臭いで追いかけ、キキョウが仕留めた。元は昼飯として食べる予定だったけど丁度良かった。
どうもこの湖の主はかなりの大食漢で魚もだけど湖に水を飲みに来た生き物までも飲み込む姿が確認されているらしい。
どの道餌となるだけの魚は用意出来ないから陸の生き物でも食べるというのはありがたかった。
「それでこの鹿を先につければ良いんだね?」
「はい。今わたしが【木霊との交信】で絡めておきます。けど、これだけの大きさの鹿を丸呑み出来るとは、10メートルとは聞いていますけどそれ以上かも知れません。普通だったら魚が食べるとして虫ぐらいですよ」
「まぁ、もし仮に主食がミミズとかだったらそれはそれで困るんだけどね」
「本当ですよ。釣り針につけるのに一体何匹必要になるか分かったものじゃないのです」
「此方はあのうねうね苦手よ……触りたくもないわ」
そうして餌をつけて糸を垂らして数分。
未だに釣り糸に反応なし。
「……釣れないね」
「釣りは魚との勝負なのです。隙を見せたらあっという間に持っていかれますよ」
「何か詳しいわねちみっ娘」
「当然です。わたしも森では時たま魚を取って居ましたから」
「え、エルフって魚食べるのかい?」
「そうですよ? 他にも野菜とか木の実とかを食べます。魔獣の肉も、まぁ食べないことはないです。滅多に食べませんけど。基本的に全てを自然の恵みとして頂いています。その代わりわたし達もまた自然の一員として無駄な雑草を排除したり土地を豊かにしたりと還元しているのです」
「ふ〜ん、そうなんだ。此方はそんなの気にした事はないわ。だって弱いものが強いものに食われるのは当たり前じゃない」
「それもそうですけど……自然への感謝を忘れたらいつかしっぺ返しが来ますよ」
「はんっ! 向こうから追い出したくせになんで感謝しなくちゃならないのよ! いーだっ! 此方はぜぇったいに感謝なんてしないわ!」
頑なに拒むキキョウ。
彼女の過去を思えばそれも無理もない。だからなのか、アイリスちゃんもそれ以上追求しなかった。
俺は空気を変えようと話題を変える。
「そういえばジャママの毛、ちょっと伸びたね。そして僅かだけど大きくなった?」
「確かにそうですね。魔獣は種類によっては成長速度が速いと言います。そろそろジャママ用の櫛……ブラシですけど買った方が良いかもしれません。撫でてると結構毛が取れるんですよ」
<カゥ?>
「そんなの手で毟りとれば良いじゃない」
<ガゥッ!?>
「剥製にでもする気ですか、貴方は……」
なんで? とコテンと首をかしげるキキョウ。
とりあえず、話題を逸らすことには成功したようだ。
そんな雑談を交しているとピクピクと竿に反応があった。
「ん? 引いてないか?」
そう俺が言った瞬間、鹿がいた位置にとてつもない大きな水飛沫があがる。
お陰で視界が遮られ殆ど姿は見えなかったが余程デカイのはわかった。
釣り糸はピーンと凄まじく張っている。
「えっ? あ、本当です! 引いてますよ!」
「嘘っ、あんな大きな鹿をあんな瞬時に食べれるくらいに!? 話には聞いてたけど、どんだけデカイのよ!」
「どちらにせよチャンスだ。アイリスちゃん、【木霊との交信】で竿を引けるか?」
「えっとちょっと待ってください。一度竿に触れないと……」
アイリスちゃんが木で出来た釣竿に触れる。
だが次の瞬間俺は一気に地面ごと竿が引かれそうになったのを目で見た。
「しまった! アイリスちゃん手を離すんだ!!」
「えっ? わっ!?」
複雑に絡み合った蔦に腕を取られたアイリスちゃんが一緒に湖に持っていかれそうになる。
すぐさま短剣で切ることで、竿と一緒に湖に引きずり込まれるのを阻止できた。危なかったな……。
「それにしても、姿全く見えなかったなぁ。それどころかあの大きさの竿へし折ったよ」
「何という馬鹿力ね。すごいわ、素直に賞賛するわ」
「あ、危なかったです。それにしても大物でしたね。魚拓を取ったらさぞ立派だと思うのです」
<カァウ>
「しかし、これじゃあ地上に引き上げるっていうのが無理だね。竿が耐えきれない」
頭を悩ませる。
釣ったところを仕留めるって作戦だったけどこれは修正が必要だ。
「ここは此方の出番ね!」
そんな中、意気揚々とキキョウが躍り出た。その顔は自信にあふれていた。
「何か手があるのか?」
「ふふーん、甘いわアヤメ。此方があの町に現れた時に使った魔法をお忘れ?」
「魔法……まさか」
「そうよそのまさかよ! 【凍える氷の息吹】」
次の瞬間湖沼が一気に凍った。弱って言ってるから威力は弱くはしているんだと思うけど見渡す限りの湖沼の上部分が全て氷で覆われていた。
改めて感じる八戦将としてのキキョウの力。もしかして商業都市リッコでこれを放った時も手加減していたのだろうか? ……建物は凍ったけどあの魔法で死人や負傷者自体は出ていなかったからその可能性は極めて高い気がする。
どうだ、みたいなどや顔でこちらを見てくる。
「どう? これで湖の上も渡って魚を探すことできるでしょ!」
「いや、うん。そうなんだけど……」
「馬鹿ですか貴方。湖で蓋をしてしまったら中にいる魔魚を倒せないじゃないですか」
「…………え?」
パチクリと目を瞬かせるキキョウ。
そうなんだよね。これって湖沼を氷で蓋しただけだから結局中にいる魔魚に一切手を出せないんだよ。
「え、あ……。そ、そんなこと気付いていたし! ほら、氷の上から相手を探して見つけたらそこを溶かして倒せば良いじゃない!」
「だったら貴方の氷で船作れば良いだけの話です。或いは凍らせるのも途中までで良いのに態々湖全体を凍らせる必要があったのですか?」
「あ、あぅぅ。あやめぇ」
「まぁまぁ、アイリスちゃん。足場を作るという意味ではキキョウの作戦はかなり有効だから」
「アヤメさんは甘すぎです! しっかりと躾なきゃいずれ手を噛みますよこのぼっちは!」
「いや犬じゃないんだから」
どうにもアイリスちゃんはキキョウに厳しい。別に毛嫌いしている訳ではなさそうだが、何か原因だろうか。……やっぱり俺かなぁ。
「とにかく折角キキョウが凍らせてくれたから少し探索してみようかっ……おっと」
<カウ……ガァァウ?>
氷の上に乗る俺をしっかりと氷は割れる事なく支える。凄いな、流石だ。
ジャママもふんふんと臭いを嗅いで氷の上に乗って見ると余りの冷たさに驚いている。
「思ったよりも滑りやすそうだ。滑らないように注意しないと」
「本当ですか? あっ、本当だ……靴の裏にスパイクか何かがあればよかったんですが。そうすればジャママみたいに爪で脚を止めることができたのに」
<ガァゥガァゥ>
ジャママは四足歩行かつ足の爪で俺たちほど恐る恐る氷の上に乗っていない。鋭利な爪が引っかかって滑るのを防いでくれるのだ。
反対に俺たちはそんな機能を持った靴でないので、滑りやすい。気をつけなくては。
「ふふーん、此方はそんな無様な様なんてしないもの! 見てアヤメ! 此方のこの華麗な滑り! すごいでしょ!」
恐る恐る氷の上を歩く俺たちとは対照的に、可憐に滑るキキョウちゃんは華麗で、少しも動きにぎこちなさがない。正しく氷上を制するって感じだ。
「すごいね、流石だ」
「む、わたしだってあのくらい……きゃっ」
「大丈夫? アイリスちゃん」
「あ。はい。ごめんなさいアヤメさん」
「仕方ないよ。氷の上を歩くなんて事中々ないからね。立てるか? ほら」
「えっと、はい。あっ手……えへへ」
アイリスちゃんは嬉しそうに俺の手を取る。
実の所余り俺も余裕がないから支えるのも必死なんだけどね。足震えてないよな? もししてたらダサい。
ふと気付くとさっきまでの得意げな表情は何処へやら、キキョウが面白くなさそうにこちらを見ていた。
「む、むぅぅ〜! なんかすごく負けた気になるのだけど…!」
「ふふん。『氷霧』ともあろうお方が嫉妬なんて見苦しいですよ。貴方は一人で滑っているが良いのです! 大丈夫なんですから!」
「何よ! 調子に乗らないでよちみっ娘! 生まれたての子鹿みたいにプルプルと足を震わせて!」
「う、うるさいですよ! むふふっ、負け犬らしく吠えてるが良いです!」
<ガゥッ!? >
「あ、ジャママじゃないですよ!?」
負け犬という言葉にジャママが反応する。いや比喩だから。というか、君は狼だろうに。
「二人とも喧嘩はその辺に……」
<! ガァウ!!!>
何か忠告するようにジャママが吠えた。
瞬間俺は足元が急に暗くなり、悪寒が走った。直ぐにその場から退避する。
次の瞬間、俺の居た位置の氷が割れ、湖から何か巨大なものが飛び出た。
「アヤメさん!?」
「アヤメ!?」
「大丈夫だ! ……さっき見たのはこいつか! この湖の生物を食い荒らした魔魚って奴は!」
さっきは殆ど姿が見えなかったがこうして体を現してくれたからよくわかる。
銀色の鱗に覆われた巨大な身体。
更には頭にはツノらしき物もある。これであの氷を容易く砕いたのだろう。よく見れば螺旋状になっていて穿ち砕くのに特化した形になっていた。
その姿は例えるなら一本の矢のようだった。しかも鏃の部分は鋭い。
「あれは大角カジキ! その硬い角であらゆる魚や蟹を突き砕いて捕食する大型の魔魚です! 普通は海にいるのに、こんな湖の環境にも適応できるなんて!」
「確かあの宿の話では、この湖は海にも繋がっていると言っていたね。逆流して上がってきたのか!」
驚く間も無く大角カジキはそのツノで氷を砕いて湖の中に戻る。その余波で俺達の足元まで罅が入って退避を余儀なくされた。
「わたたっ、くっ!」
滑る足場を剣を刺して動きを止めるとそこに大角カジキがつっこんでくる。
それを辛くも躱すも、やはり氷に足を取られそうになる。
地面と違う氷面は砂や砂利のような摩擦熱を発する事なく、相手も自慢のツノで容易く砕きながらこちらに向かってくる。
しかし氷を消したら足場が無くなる。
「アヤメ! こうなったら湖丸ごと全て凍らせて」
「馬鹿ですか貴方は!? そんなことしたら湖の生物皆死んで依頼を受けた意味がなくなるでしょう! 本当にぽんこつなんですから!」
「ぽ、ぽんこつじゃないもん!」
若干泣き声でキキョウが反論する。
だが凍らせること自体は悪くない。問題はあの巨体を凍らせるほどの魔法を水中にいる中で使えば湖まで凍ってしまうことだ。
「なら水中から追い出せば良い」
単純明快。そうすれば良い。
思い出せ、グラディウスの動きを。
彼は性格は兎も角『剣士』としての動きは一流だった。ならば彼は自分の先を行く。それを学ぶことの何が悪い。
俺は彼の剣の腕を尊敬していた。
どれを真似れば良い?
【突貫】を模倣した"緋花"か? ダメだ、あの角相手ではこちらの剣が折れる。
【皇一閃】を真似た"月凛花"か? いや、横合いならともかくこの足場では横から攻撃するのは難しい。
その他色々な技を思い浮かべるも、どれもこれも決定打にはならない。
そんな中、俺は一つの技能を思い出した。
「これなら……!」
だがその為には足場が余りにも不安定だ。
「キキョウ。今すぐ俺の足を凍らせてくれ!」
「えっ!? で、でも」
「良いから! 氷の上じゃ、足に力が入りづらいから固定させて欲しいんだ!」
「わ、わかったわ。【瞬間冷凍】」
俺の足がパキパキと凍りつく。冷たい!
だがこれで滑ることはなくなった。
大角カジキが迫る。
これに失敗すれば俺は押し潰されるか、その角で貫かれるだろう。そうしたら死は避けられない。
「すぅぅ……遡竜咆ノ構エ!!」
俺は左手で右手首を掴み、剣を水平に構えてそう叫んだ。
グラディウスの技能、【遡竜咆ノ構エ】。
これは直接グラディウスから聞いた話だが、グラディウスは竜の中でも地竜に属する竜の土のブレスをこの技で、完全に逸らしたらしい。
実際に俺も魔族との戦いでこの構えを見たことがあった。彼は明らかにサイズ差がある巨人クラスの魔族の攻撃をこれで完全に逸らし、その首を掻っ切った。
名前を叫ぶも俺はその技能を使える訳じゃない。だけど模倣することは出来る。
大角カジキはそのツノでぶつかってくる。俺はそれを剣で受け止めた。
重い。
硬い。
強い。
筋肉が軋みをあげる。骨が悲鳴をあげる。10メートルに近い体格から繰り出される突きは城の門すら粉砕出来るだろう。
だからこそ! まともに受けずに斜めに逸らす。
俺の背後の氷が衝撃のあまりヒビが入る。
この攻撃を逸らす要は右手の手首だ。だからこそ、左手は柄ではなく右手を補強するために抑えている。
大角カジキの角の威力が更に増す。
「うち、あがれぇぇぇぇ!!」
だが俺はそれに屈することなく、そのままの力を利用して大角カジキを空中へとかちあげた。
空中へと体を投げ出された大角カジキ。
「キキョウ!!」
「わかってる! 【氷の牢獄】」
空に打ち上げた大角カジキを【瞬間冷凍】以上の大きさの氷で多方向から覆う【氷の牢獄】によって一気に凍らせる。
これにより冷凍された大角カジキが湖の氷を割り、そのまま氷像となってプカプカと浮かび上がった。
「ふぅ、討伐完了だ」
「アヤメさん! やりましたね!」
「あぁ、アイリスちゃ……ちょっと待って今抱きつかれたら足元の氷が……あっ」
感極まったアイリスちゃんが俺の胸に飛び込んで来る。
途端に足元に罅が入る。
氷が割れて俺とアイリスちゃんはそのまま湖に落ちた。
「何してるのよ。折角濡れないように凍らせた意味がないじゃない」
「う、うぅぅ……ぼっちに指摘されるなんて……へくちっ」
「は、ははは……氷のせいか冷たさに拍車がかかってたね……へくしゅ」
お互いにくしゃみをしながら俺たちは魔法袋から取り出したタオルで水気を取る。そのまま枯れ木を集めて火を焚き、暖をとる。
【遡竜咆ノ構エ】が成功してよかった。
いや、【遡竜咆ノ構エ】という名は変か。俺は技能が使えないから全く同質のものではないはずだ。
ならあの大角カジキの矢の鏃のような姿を見立てて技名をつけるなら……
「名付けるなら"桃孤棘矢"って所かな」
「何がですか?」
「いや、こっちの話だよ」
「? そうですか……しかしこれどうしましょう?」
ドンと湖の側に横たわる様はまるで冷凍カジキマグロようだ。その身体はとてつもなく大きい。
「普通に考えたらあの町の人と協議してだろうけど……」
「これ食べられますかね?」
「どうだろうか」
「泥抜きしてないから絶対に臭いと此方は思うわ」
<ガウッ>
依頼完了と共に俺はこれをどうするのか頭を悩ませるのだった。
>10メートルの大角カジキ
デカさも驚く事ですが、それ以上にそれを受け流したアヤメの技量が凄いですね。
あと、新しく出た【遡竜咆ノ構エ】は上位技能になります。これを模倣とは言え、出来るアヤメはこれまで積んできた研鑽もあります。




